Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.156-157.
今回のp.157で第5章「超ナイスなクラスメートたち」はお終いです.それでなのでしょう,節題は「最後のお話」,つまりゴシニとサンペが共同執筆した『プチ・ニコラ』の最後のお話の説明となっています.
最後のお話は1964年11月29日付『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』紙に掲載されたお話でした*.
*本書(『大全』),p.157には12月29日付と記されていますが,これまでもよく利用しているInstitut René Goscinnyのサイトの『プチ・ニコラ』紹介ページには,上掲紙の掲載年月日の一覧があり↓,そこではこのお話の初出は1964年11月29日とされています.これは今調べたところ,ちょうど日曜日に当たるので,正確な情報ではないかと思います.すると,12月というのは『大全』の著者の誤りでしょう,たぶん.
『大全』,p.156には,このお話の元原稿(tapuscrit)の1ページ目の写真が掲載されています.相変わらず,一字の修正もない美しいタイプ原稿ですが,題名にあたる「ニコラ」の下に,「バスだ,ロケットだ,飛行機だ!」(« Des autobus, des fusées et des avions »)と手書きで副題が挿入されています.おそらくゴシニの直筆でしょう.『シュッド・・・』掲載時には↓のように,いつも通り「ニコラ」という題名だけですから,この副題は,ゴシニとサンペの間でこのお話をそのように呼んでいたのか,あるいは,後に単行本に収録する際の題名にしようと考えたのか,どちらかはわかりません.
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.157.
さて,この最後のお話,いわば二人の絶筆ともいえましょうか,今は「ジョフロワの旅行」(« Le voyage de Geffroy »)という題で,『未刊行集 第1集』,通称『白ニコラ』に収録されています.日本語訳は<かえってきたプチ・ニコラ>シリーズ第4巻『プチ・ニコラ はじめてのおるすばん』(小野萬吉訳,偕成社)で読むことができます.本ブログでは「『プチ・ニコラ』(150)」で紹介したお話です.
このお話は上述のように,最初は「ニコラ」の一つとして『シュッド・・・』紙に,ついで,ゴシニらが創刊した『ピロット』誌に掲載されました.この『ピロット』誌については,本書(『大全』)の次章以降に詳しい説明がありますので,そこで紹介します.唯,どうやら『ピロット』誌に掲載された際にも,題名はやはり「ニコラ」だけで,各話の題名は,どうやら単行本収録に際して必要から付けられたようだということを確認しておきたいと思います.すると以下のような推理が成り立ちます.
ゴシニとサンペは生前の1960年〜1964年の間に,2誌掲載分から抜粋して,5冊の単行本を作りました.撰から漏れたお話が2004年以降に順次『未刊行集』に収録されます.すると,『未刊行集 第1集』に収録されたこの「ジョフロワの旅行」というお話の題名は,編集者がつけたものではないでしょうか.ゴシニが考えていた実際の題名は,「バスだ,ロケットだ,飛行機だ!」だった可能性が高いと考えられるのです.少なくとも作者が認定した題名は後者だったのです.さぁ,どうなのでしょうかね?
→後日譚
「さぁ,どうなのでしょうかな?」と書いてしばらくしてから,また新事実が発覚しました.『プチ・ニコラ』が『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』紙と『ピロット』の両方に掲載されていた時期があることには触れましたが,どうやら,おそらくは(?)『ピロット』の「1960年8月18日」号以降,「題名」が付されるようになっていたようです(『大全』, p.166).ですから,上↑の「ジョフロワの旅行」のお話も,当時の『ピロット』誌を見れば,問題は解決するはず.でも,日本にいたら,そう簡単にはゆかないでしょうねぇ・・・.
*
蛇足ながら,最後のお話なのに,上の↑掲載時には,一番下に,「マンガの続きは次号で!」という宣伝が入っています.
バカみたいなんですが,これ最初,悩んでしまいました.直訳すると,「われわれの次の号に,われわれのマンガの続き」です.それでまず,パッと見て「われわれ」をサンペとゴシニかと勘違いしてしまいました.だって上で確認してもらえばわかりますが,「ニコラ」の題名を活かす赤い線の延長に書かれている予告ですから,そう思うじゃないですか?!でも,二人はマンガはとうの昔に連載をやめているし,サンペはマンガ嫌いだし・・・と頭を悩ませていて,ハッと,そうか,「われわれの次の号」は,『シュッド・・・』紙のことだから,「われわれ」も編集部を指すと考えると,「われわれのマンガ」は,「ニコラ」以外に掲載されているマンガは続きがある,(暗黙の了解として)「ニコラ」は終わりですが,という意味かと思い当たったわけです.わかってみれば当たり前.探しものは最後に見つけた場所にある(マーフィーの法則)的な.ま,そんなもんですな.
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