top of page
検索

『「プチ・ニコラ」大全』(50)

執筆者の写真: Yasushi NoroYasushi Noro

更新日:2024年12月8日

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.176-177.


「ボビ,模型展示会へ」(« Bobby », Jours de France, 29 octobre 1960)


 前回は,マルセル・ダソーという大企業の創設者のお声がかりで,ゴシニがダソー版『プチ・ニコラ』の制作をしたというお話でした.でも第1話はお目に叶わず,せっかく書いたのにボツ.結局3話しか続かず打ち切りとなりました.このページ(p. 176)には,そのうちの1話の冒頭が掲載されています.こんな感じです.




 一応読んでは見たのですが・・・.日曜日の昼食後,ボビはパパに模型の展示会へ連れていってもらいます.でもほんとうに行きたかったのはパパのほうで,ボビはそれほど行きたかったわけではないようなのです.って,こんな話です.でも,このページしか掲載されていないので何とも言えないのですが(多分,展示会場の描写が続くはず),う〜ん・・・ここだけでは,『プチ・ニ』ほどにはハマらなさそうです.

 幾つか,『プチ・ニ』を思わせる記述はあるんです.例えば,ボビとパパの会話.


パパ「ボビ,学校で一生懸命勉強したご褒美で,模型の展示会へ連れていってやろう!」

ボビ「でも,昨日はパパ,今月は合格点を取れなかったって,僕のこと叱ったよね.それで僕泣いちゃったでしょ.」

それを聞いたパパは気まずそうに,頭をかきかき僕に言ったんだ.

パパ「そうだったそうだった.でも,おまえ,来月はもっと勉強する気だよな?」

それで僕は,「もちろんさ!」って言ったんだ.その通りだよ.僕はいつだって,もっと勉強するつもりなんだ.でもちょっと何かあって,合格点が取れなくって,家で大騒ぎになって,妹のゼゼットが僕をバカにするんだ.あいつは,まったくむかつくよ.(p. 176)


 という感じで,ちょっとした言葉のやり取りから,展示会に魅かれているのはパパのほうで,どうやらボビを出汁にして行きたいらしいこと,その言い訳が何とも哀れなこと,パパが忘れっぽいことなどなどがパッと把握できるので,この辺の巧さはさすがゴシニと言いたいところですが,それでも何か少し重いかも.


パパ「よし,いいだろう.パパのパパもよく言っていたんだ.『努力にはご褒美が必要で,決心したら励まさなきゃいかん』てな.」(同上)


 調子のいいパパ,パパに騙されたふりをしながら読者には本心を明かすボビ(→ニコラ?),なんて『プチ・ニ』と同じ設定で,ボビをたきつけるゼゼットがはいっているのが新機軸,なんでしょうが.う〜ん・・・.


 僕とパパはでかけたんだ.髪にベッタリ,ポマードをつけてね.僕はね,僕はパパとのお出かけが大好きだ.パパは僕にしっかり勉強するんだぞって言うのがすっごく嬉しいみたいだから,僕,近くで映画見る方がいいなって言いそびれちゃったよ.今ね,カウボーイの出てるすっごい映画をやってるんだ.拳銃とかたくさん出てきてね,バン,バン,バン!なんてね.(同上)


 この後,展示場の見聞に入るなら,「番外編」(hors-série(1), (3), (4)とパターンは同じで,それなりに斜に構えた観察で楽しめるのでしょうがねぇ.いつか『ジュール・ド・フランス』誌を探して,きっと全文を読んでやる!という野心は湧いてこないんですよ,どうも.


 次のページ(p.177)には『ジュール・ド・フランス』の編集長からの支払いとボツを知らせる手紙と,ダソー氏自らの「『プチ・ニコラ』のようなもの」の執筆依頼の手紙が掲載されています.

 これで本書第6章が終わりで,次回からは第7章「『プチ・ニコラ』,フランス文学の古典となる」に入ります.

 
 
 

コメント


© 2018 par lui-même

contact : yas_edo[a]hotmail.com

bottom of page