« Deux hommes(Goscinny et Sempé) au Salon des arts ménagers », Sud-Ouest, 13 mars 1960.
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.152より.
「ロースター」(Rôtissoires)
Notre attention fut aussitôt attirée par des rôtissoires chroméres, dans lesquelles tournaient majestueusement des poulets en carton, dorés à point. Il y avait des rôtissoires de toutes les tailles, pouvant rôtir un poulet en carton, deux poulets en carton, jusqu'à six poulets en carton pour hôtels et restaurants.
「扇風機」(Ventilateurs)
Un souffle d'air puissant, souligné par un vrombissement assourdissant, décoiffa Sempé et fit frissonner mes cheveux que j'ai élégamment crépus.
« Ce ventilateur à grande vitesse, hurla un démonstrateur, vous permettra, par les nuits les plus chaudes, de dormir à une température convenable, et le vent frais vous fera penser à la brise marine !
— Ou au départ du DC 7 pour New York, à Orly », fit remarquer Sempé. Ce trait d'esprit se perdit dans le bruit, aggravé par les protestations d'un monsieur dont le chapeau tyrolien venait d'être arraché par le typhon domestique à la portée de toutes les bourses.
「つや出しブラシ」(Brosses à reluire)
Un miaulement délicat nous fit découvrir la brosse à reluire électrique. Tournant à toute vitesse sur les vilaines chaussures sales d'un visiteur complaisant, la brosse eut tôt fait de les transformer en vilaines chaussures cirées. Dans le même stand, des batteuses électriques tournaient allégrement dans du blanc d'œuf qui montait en neige par gros paquets.
« Dis donc, vieux. Implorai-je, si en allat voir quelque chose qui ne tourne pas ? Je commence à avoir mal au cœur. »
二人は依然,家電市にいます.
ミキサーの次は,ロースターのスタンドです.二人の関心は,クロムメッキを施したロースターに惹かれました.なぜなら,機械の中で,「こんがり焼けた,紙製の鳥の丸焼きが厳かに回転していた」からです.二人はお腹が減っていたのでしょうか.「紙製の鳥」(poulet en carton)ですから,我が国のうなぎ効果みたいに,匂いに惹きつけられたのではないでしょうが,やはり「こんがり焼け」た色をした鳥が「厳かに」ゆっくりと回転していると,美味しそうに見えるのでしょうねぇ.それにしても,さまざまな大きさのロースターがあったらしく,「紙製の鳥1羽」を焼く用,「紙製の鳥2羽」用,果てはレストランやホテルで用いるプロ仕様の「紙製の鳥6羽」まで入れられるものもあったそうです.普通にいろいろな大きさのがあるなぁと感心しているだけのようにも見えるのですが,しつこいくらい「紙製の」をつけているところに毒を感じます.
次の扇風機には関心を抱いたというより,関心を抱かされた感じです.なぜなら,「耳をつんざくようなゴォーという音がして,強風」が吹いてきたため,サンペの髪がぐしゃぐしゃになり,ゴシニの「エレガントに整えた天然パーマ」がゆらゆら揺れたからです.
訪問客のそんな不満など素知らぬ顔で,販売員さんはこの扇風機が一台あれば,熱帯夜でもすやすや快適に眠れますよ,まるで海風のよう!と捲し立てています.そこでサンペは一言.海風の代わりに「オルリ空港発ニューヨーク行きのダグラスDC-7機のよう!」.しかし折角の機転を効かせたイヤミでしたが,「お安い家庭用扇風機にチロリアン帽子をかっさわれたおじさん」の抗議の声にかき消されてしまいました.ちなみに,DC-7はアメリカのダグラス・エアクラフト社が開発し,1953年から運用が開始された旅客機だそうです.きっと当時は強風・轟音のイメージを喚起したのでしょうね.
末尾でゴシニは,「高速回転の扇風機」じゃなくても,「お安い」値段の(« à la portée de toutes les bourses »)家庭用扇風機のほうが一枚上と言いたいのでしょう.強風の扇風機と家庭用扇風機,海風と轟音のジェット機,機転の効いたシャレと大声の抗議,二つのものを対比させつつ,サラリとリズミカルに書いているところがゴシニ流のおしゃれでしょう.
本日の最後は,つや出しブラシ.これって家電なんでしょうかね?それに,私はbrosse à...とくればダーン,つまりdentsで,歯ブラシという単語しか知りませんでした.それでどんなものかと読んでみると,いきなり「微妙なミャーオの音がして」との書き出しで,やっぱり何かと思いました.ミャーオ(miaulement)は通常は猫の鳴き声の意味で使われる擬態語です.miaulerという動詞もあります.『le dico現代フランス語辞典』を引くと,名詞の方は「猫の鳴き声,猫の鳴き声に似た音」,動詞は「(猫が)ニャーオと鳴く,猫の鳴き声に似た音を出す」,とやっぱり猫(が好き)〔今時,こんなギャグは通じないでしょうね〕.それはともかく,冒頭の「ミャーオ」から,「微かな音がして,私たちは電動のつや出しブラシに気がついた.」,とここまで読んで,ようやく,ミャーオとか,ニャーじゃいけなかったのか,とこちらも気が付きました.きっとブラシが回転している音なんですね.実際,猫の鳴き声かと騙されました.それなら,「ウィーーーーン」でしょうかね.
ニコニコ愛想の良いお客さんの履いた,型崩れの汚い靴の周りをブラシが高速回転.あっという間に,型崩れの靴墨付きの靴に変身した.(p.152)
同じスタンドでは,「電動攪拌機」も「快活に」回転して,卵の白身をかき回していました.この「電動攪拌機」なんですが,原文では「叩く,殴る」を意味するbattreの名詞・女性形で,batteuseが使われています.機械だから女性形にするのは自然なので,最初は読み飛ばしてしまいましたが,先ほどの『le dico』を引くと,「ソース・マヨネーズなどを作る)攪拌機,ミキサー」はbatteurと男性形.親切に,batteur à œufs「卵の泡立て器」なんて例も出ています.ここでは「卵の白身」をかき回しているので,batteurの方で間違いなさそうですが,ゴシニは女性形で書いているので,そちらの語も探してみると,ありました.batteuse「脱穀機,圧延機」.もうすっかり,家電から遠く離れてしまいます.念の為と思ってみたら,『ロワイヤル』も『プログレッシブ』も,『le dico』と同じで女性形は「脱穀機」.たった20〜30年なのに,言葉というのは変化するものですね.蛇足ながら,調子に乗って白水社の『模範佛和大辞典』を引いてみたら,男性形では「打つ人(麦あるいは金属の)」,女性形では「穀粒を打ち落とす機械,金属打ち伸ばし器械」.初版が大正十年だから,「電動」がなくて当たり前の時期の辞書ですから,そりゃそうですよね.でも,同じ項目の中に,「機械」と「器械」とあるので,当時は区別していたのかしらんと,別のことが気になりました.
さてさて,扇風機に,つや出しブラシ,攪拌機と,回ってばかりで目が回りそうだなと思ったら,ゴシニも同意見だったようです.
「おいおい,サンペ〜・・・」,と私は乞うように言った.「何か,回らないものを見に行かないか?心臓に負担が・・・」(id.)
ですから,次は回らないものとなるはず.
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