« Deux hommes(Goscinny et Sempé) au Salon des arts ménagers », Sud-Ouest, 13 mars 1960.
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.152より.
「まったく,冗談じゃない!」(Non, mais sans blague !)
Nous sortimes donc du Salon. Pendant quelques instants, nous restâmes silencieux, et puis je me frappai le front :
« La cafetière ! Nous avons oublié la cafetière !
— Quelle cafetière ? ma demanda Sempé.
— La cafetière pour ta femme ! C'est pour ça que nous sommes venus au Salon des Arts ménagers ! »
Sempé eut un petit geste négligent de la main.
« Oh ! c'est fini cette histoire. A la maison, nous ne buvons jamais de café ; Christine en prépare seulement quand tu viens. Alors, nous avons décidé qu'il serait plus simple que tu ne viennes plus. Salut ! »
Eh bien ! puisque c'est comme ça, j'enverrai cet article au journal en demandant au directeur de ne pas le faire illustrer, de le juger sur sa valeur intrinsèque. Sempé verra alors que mes textes peuvent aisément se passer de ses gribouillis ! Non, mais sans blague !
『大全』の中で偶然見つけた,『プチ・ニコラ』番外編第4話の紹介もいよいよオーラス.サンペの家で奥さんの入れた(不味い?)コーヒーに端を発した家電市訪問のルポルタージュも今回で終わりです.
私は個人的には,どんな細部でも,とにかく最後には説明があったり,辻褄が合うように作られている映画や小説作品に惹かれる傾向があるのですが,今回はどんな終わりとなるのでしょうか.
われわれは,こうして家電市から出てきた.そこでほんのひと時,沈黙があって,ついで私がピシッと額を叩いた.
「コーヒーメーカー!コーヒーメーカーを見忘れたじゃないか!」
「コーヒーメーカーって?」,とサンペが聞き返した.
「コーヒーメーカーだよ,君の奥さんのために買うやつさ.それを見に,わざわざ家電市に来たんじゃないか!」
サンペが,あ〜あれねといった具合に手を振り,気のない動作をしてみせた.
「あれね,ありゃもういいんだ.家ではさ,誰もコーヒーを飲まないんだよ.クリスチーヌは,君が来た時だけ,コーヒーを入れてたんだ.だからさ,君がもう家に来なけりゃ済むんじゃないかってことになったんだ.じゃあな!」
何だとー!そんななら,編集者にこのルポを送って,イラストなしにしろって言ってやる!文章だけで評価しろってな.やつのへたっぴなお絵かき何てなくても,文章だけで平気だって,サンペに教えてやるんだ.まったく,冗談じゃない!(p.152)
ゴシニの文章はちゃんと最初に戻りました.最初とは,もちろん,ケンカの発火点となったコーヒーメーカーです.でも,発端を読み返してみてください↓(『プチ・ニコラ』hors-série(4)-2〜 『「プチ・ニコラ」大全』(25))
奥さんの入れたコーヒーを「飲めたもんじゃない!」って言ったのはサンペで,ゴシニはヒートアップする二人のケンカを宥めようとしただけ.しかも途中で追い出されて,鼻先で扉を閉められて,それで帰ったら帰ったですぐに呼び出されて,家電市では唯一関心を持ったテレビさえ見せてもらえず,振り回された挙句に,出禁をくらう.踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと.ゴシニの怒りも十分に理解できます.
それでもやはりゴシニ.そんな怒りも脱力感も見せずに,やはり文章で勝負とばかりに,「へたっぴなお絵かき」(gribouillis)なんて毒を吐きながら,最後の5行で憂さ晴らし.しかも,イラストなしにしてやる!なんて意気込んでいましたが,そこはやはり紳士.というより,気弱で優しいゴシニです.本当にこの怒りと決意が実行されたかどうかは,本話を目にしている読者にはよくお分かりのはず.
それはともかく,『プチ・ニ』では,いつも偉そうにしている大人,威張ったり自慢したりするパパが失敗して面目を失うのがパターンなんですが,本話を通して暴君ぶりを発揮したサンペはお咎めなし.でも,家電を見ても話は横ズレしまくっていましたし,家電の話をほとんどしないルポというのも,やっぱりどこか捻った『プチ・ニ』っぽいところです.
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