« Nicolas vous présente Pilote »(1964)(suite).
まだまだ紹介が続きます.
「いつでもすっごい冒険があって,半ズボンを履いた子もたっくさん出てくる」『ジャック・ルギャル』(Jacques Le Gall)もあります.ニコラによる?挿画によると,これ↓.
ルガル君はボーイスカウト.次から次へと,降りかかってくる難題を解決する物語だそうです.原作はまたまたシャルリエ.絵はミタック(MiTacq(1927-1994),ベルギーのマンガ家).1959年の『ピロット』創刊号から1966年まで断続的に連載された後で,媒体を『スピルー』(Journal de Spirou)に移し,1980年まで続いたそうです.
それにしても↑の黒い部分は冒険した場所を表す地図なんでしょうか.半ズボンを履いているのはわかりますが,鳥の手や足みたいで超適当.髪の毛とかも.名前が入っていなければ,絶対にどのマンガか同定できません.本書への収録なし.
『ジャック・ルガル』に登場する少年のように,冒険をするんだ,と息巻いたのはリュフュス.またもや(78)に出てきた,英雄的行為の例を出します.それを聞いたジョフロワがツッコんでやはりケンカ.今度は誰も止めに入りません.
続いては『トラキャサン』(Tracassin).
僕はね,トラキャサンの冒険が大好きだ.メクサンとジョアキムはセラファンとアンジュリュールの真似をして遊んだんだ.(p.20)
『トラキャサン』の作者はジャン・シャキール(Jean Chakir(1934-).1994年に引退してから,「他人について語るための自伝」を執筆中とのこと ).1962年から1970年まで連載されていました.シリーズの題名としては,「セラファン対アンジュリュール」とされる場合もあるようです.
読んだことはないのですが,トラキャサンという男性が,アンジュルールという名の悪魔に悩まされる.そこに守護天使であるセラファンが助けに入って色々ゴタゴタが生じる.というようなコメディだそうです.『ジャック・ルガル』同様,今は半ば「忘れられたBD」の一つになっています.
ところでメクサンとジョアキムによる『トラキャサン』ごっこでは,二人ともセラファン,つまり守護天使役をやりたがってケンカになり,それを担任の先生が,「金輪際,悪魔(デモン)のような振る舞いをしてはいけません!」と止めに入るそうです.セラファンをやりたがる二人が,側から見れば「悪魔」のように見えるという,ニコラ流の皮肉を込めた表現でしょう.
本日3つ目は『トニ・ラフラム』(Tony Laflamme).1963年から1971年まで連載されたマンガです.1973年以降は媒体を移して継続されたようです.作者はマルシアル(Martial(1925-2013).
『トニ・ラフラム』はすっごくいいよ.ウードにはお兄さんがいて,兵役中なんだ.ウードは「お兄ちゃんはトニ・ラフラムみたいに,将官の言いなりになんてならないけどな」なんて言うけど,でも,ウードのお兄さんは炊事場での勤務だから,将官なんて滅多に会わないんじゃないかなぁ.(p.20)
相変わらず,冷徹な観察眼の持ち主です.言い換えると,気の利いたツッコミをする.
さらに『バック・ギャロ』(Buck Gallo)にも触れられています.「スポーツがたっくさん出てくるお話」だそうです.
題名だけ出たら,後はいつも通りニコラたちの話となります.
僕はでんぐり返しが超得意だし,クロテールは将来,ツール・ド・フランスに出るんだって言って自転車の訓練をしている.メクサンは100メートル走が凄くて,ジョアキムはむしろ長距離走者だ.早くはないけど,遠くまで走れる.リュフュスは自分で水泳が得意だと言うけど,仰向けになって浮いてるだけでチャンピオンになれるとは思えないな.ウードは殴るのならうまい.それからみんなでサッカーチームを作ってるんだ(特にアルセストはゴールをいっぱいするのが得意だ).(p.20)
漫画の題名は話のきっかけに過ぎない,それで話がどんどんズレて行くと言うのは『プチ・ニ』のパターンです.
一つだけ,最後の「アルセストはゴールをいっぱいするのが得意だ」と言う表現ですが,原文はAlceste qui remplit bien les butsで,文字通りには「ゴール,目的を上手に満たす」となります.サッカーの話ですから,太っちょのアルセストが「ゴールポストいっぱいに広がる」,つまりキーパー(gardian de but)をして体全体でゴールを守るという意味かなとか想像するのですが,いまいちはっきりしません.「ゴールを満たす」,「目的を達成する」とそのまま訳せば,シュートを打ちまくって得点を稼ぐように思えてしまうのですが,アルセストがそんなに機敏に動いて活躍するなんて想像できない・・・.
最後にサラッとクリスチアン・ゴダール作『ノルベールとカリ』(Norbert et Kari).なんでも四方が浜辺に囲まれた孤島で暮らしている二人のお話のようです.作者のゴダール(1932-)は 何でも,『タンタン』誌(雑誌)に発表した『マルタン・ミラン』のシリーズで有名だそうです.(知らないことばっかり).
ニコラが『ピロット』を紹介するという設定で,『ピロット』の創設者の一人であるゴシニが文を書いているのですから,どの作品もすごい!面白い!と褒めるに決まっています.凄くなければ,掲載する理由もないもん,と考えるのが普通ですし.ですから,どれが本当によくできているのか,面白いのか,今も楽しめるのか,語りつぐ価値があるのか,それは列挙された作品の中から,読者が選んで読んでみるしかありません.紹介はまだまだ続きます(続く)
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