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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』hors-série(1)-2(再)〜『「プチ・ニコラ」大全』(42)

更新日:11月8日

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.154-155.


« Goscinny et Sempé assistaient au mariage », Sud-Ouest dimanche, 8 mai 1960.


「華燭の典」その二


Une foule bruyante

Le jour du mariage, à 10 h. 30 du matin, un coup de sonnette retentit.

« C'est Sempé », dis-je.

On reconnaît aisément les coups de sonnette de Sempé. Sa technique est la suivante : il appuie son doigt sur le bouton de la sonnette et il ne le retire que quand on lui ouvre la porte.

« On m'ouvre plus vite comme ça », m'a-t-il expliqué un jour.

Je me précipitai donc vers la porte que j'ouvris et je me reculai, sidéré ; le palier était encombré par une foule bruyante de Sempé. Il y en avait de toutes les tailles et de tous les sexes. il y avait là Sempé, Mme Sempé et Nicolas, leur fils.

« Salut ! cria Sempé, nous ne sommes pas en retard ? »

« Figurez-vous, me dit Mme Sempé, que Jean-Jacques s'est trompé et il a sonné chez votre voisin de palier. Nous avons dû attendre cinq minutes à la porte, parce qu'il prenait son bain ! »

« Oui, s'esclaffa Sempé, c'est fou la quantité de gens que j'ai tirés de leur bain dans ma carrière ! »

J'eus des sueurs froides. Les relations que j'entretiens avec mon voisin ne sont pas tout à fait cordiales depuis le matin où il m'a surpris en train de m'emparer d'un journal qui était posé sur son paillasson. Un malentendu d'ailleurs, qu'il se serait trop long de vous expliquer ici.

« Cesse de sonner et entrez », dis-je.

Sempé retira son doigt du bouton de la sonnette et, s'adressant à Nicolas, son fils :

« Qu'est-ce qu'on dit au tonton René ?

--- Je veux voir la télé », répondit Nicolas en me filant entre les jambes, effaçant, par la même occasion, le sourire que mes lèvres pâles et tremblantes essayaient d'esquisser.

Les Sempé envahirent mon coquet petit appartement.


 いよいよルポかと思いきや,まずは相棒が到着しなければ始まりません.サンペがゴシニのアパルトマンにやって来るのですが,まずは呼び鈴の鳴らし方.音であっ,サンペが来たぞってわかるなんて,どんだけ仲が良いんだ?!と思いましたが,どうやらかなり特徴的な鳴らし方をするらしい.「呼び鈴のボタンにタッチして,そのまま指を押し付ける.そして中から誰かが開けてくれるまで指を離さない.」ですから,誰か対応するまで,ずっと鳴りっぱなし.えらく迷惑な客です.サンペ曰く,「こうすると,早く開けてくれるんだ.」そりゃそうでしょ.うるさくてかないませんから.現にゴシニも「ドアの方へと急いで行って開け」るのです.サンペの戦略勝ち.ところが,ドアを開けたゴシニは「唖然として,退いて」しまいました.まるで殺し屋に出くわしたみたいです.それもそのはず,「騒々しいサンペ御一行が廊下の踊り場にひしめいていた」のです.よほどガヤガヤしているんでしょうね,サンペ一家は.bruyant「騒々しい」に,encombré「混雑した,いっぱいの」の組み合わせですから.それにencombrerという単語は「場所をふさぐ,混雑せる,いっぱいにする,人の迷惑になる」という動詞の受け身(あるいは過去分詞形の形容詞的用法).音も場所もうるさい感じが倍加されています.これだけでもだいぶ賑やかなのに,ゴシニはゴタゴタ感をだそうと,「大小さまざま,男女こもごも」なんて付け加えています.サンペと一緒に奥さんと息子のニコラちゃんがいたからです.確かに,でっかいサンペ,ちいさいサンペ,男のサンペ,女のサンペ,華やかな様子です.つまり,耳に騒々しく,目には大小老若男女不揃いの姿が踊り場にひしめいているのです.さらに,サンペは指を離していないので,呼び鈴の音がジリジリ鳴り響いています.もう,カオス以外の何物でもありません.私だったら,ドッと疲れているところでしょう.で,もううんざり.まだ仕事は始まってもいないのに.

 「騒々しい御一行」は,ゴシニが口を開くまもなく,話し始めます.「やぁ,遅れなかったよな?」「ちょっと,ジャン-ジャックったら,お宅を間違えちゃってね,お隣さんの呼び鈴を鳴らしちゃったのよ.ドアのところで5分も待たされちゃった.お風呂に入ってたんですって.」「そうなんだよ,俺がこれまで風呂から引っ張り出した連中の数ったら,そりゃ,すごいもんだぜ.」とサンペ夫妻は畳み掛けるように話します.それも悪びれることなく,シレッと.それにしてもすごい内容です.恐るべし,サンペ.お風呂に入っていたお隣さんが,ジリジリ・・・とずっと鳴らし続けているから,仕方ないので体を拭いて,服を引っ掛けてでてみれば,あっごめんなさい,家を間違えちゃって,って謝られてても・・・.憤懣やる方ないでしょうねぇ.況や,どうやらこの迷惑を被ったお隣さんとゴシニの間には,なにやら新聞の誤配達をめぐって一悶着あったようですし.「ここで読者に説明するのはちょっと長くなるのでやめときましょう」なんて書いていますが,読者が二人の関係を想像して,状況を理解し,にんまりできるくらいには書いているのです.見事な仄めかしだとおもいます.

 ようやく呼び鈴から指を離させて,入るようゴシニが促すと,サンペは息子に向かって,「ルネおじさんに,なんていうんだい?」と言います.このqu'est-ce qu'on dit...でonは二人称を指し,人が子どもに向かって教育的配慮を示す場面での典型的な表現でもあるのです.つまり,「なんていうんだい?」→「こういう時には,礼儀として言わなければならないと教えているだろう.ちゃんと言いなさい」という意味なんです.これを聞くと,おっ,サンペ,傍若無人なようで,ちゃんと躾をしているんだなと思わせます.そんな表現なのです.

 ところが!豈はからんや.ニコラの口にしたのは「僕,テレビが見たいんだ!」でした.「見せてください」ならqu'est-ce qu'on dit...が予想させる範囲内ですが,「見たいんだ!」と丁寧さのカケラもなく欲望丸出し.普通ムッとしますよね.しかも返事も待たず,「足の間をすりぬけて」入ってしまうんですから,空いた口も塞がりません.それでゴシニはというと・・・「私の唇は青ざめ小刻みに震え,無理やり笑って見せようとしたけれど笑いは消し去られていた」のです.ゴシニ,顔怖い,はず.

 「サンペ一家が私の小さくオシャレなアパルトマンに押しいってきた.」「押し入る」envahirという単語は,例えば戦場で敵地に「攻め込む,侵略する」「〜に群れを成して押しかける」という恐ろしい意味の語です.ゴシニの平和な空間が敵襲を受けたような.すると,これから敵に荒らされるのでは?と思わず想像させてしまうような語なのです.さてどうなることでしょうか.(つづく)



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