« Les cow-boys » Sempé-Goscinny, Le Petit Nicolas, Editions Denoël, 1960, < folio >, pp.14-21.
第1巻第2話は「カウボーイズ」.ニコラたちがカウボーイごっこをするお話です.原題はles cow-boysで,カウボーイは複数形.ニコラがいつものメンバーとカウボーイの格好をして遊ぶのですが,僕がシェリフだ,白馬は僕のだ,お前は盗賊だ・・・と,それぞれがてんでバラバラに主張をするのでまとまらない.そんな風にゴタゴタしている様子が,題名の複数形から伺えるようです.
挿絵は4枚.まずは椅子に腰掛けた男の子.パパがお金持ちで何でも買ってくれるジョフロワでしょうか.
「ジョフロワは変装が大好きで,とってもお金持ちのパパがいて欲しいものは何でも買ってくれる.ジョフロワはカウボーイそのまんまの格好をしてきたんだ.羊の皮でできたズボンに革のチョッキ,格子柄のシャツにでっかいカウボーイハットをかぶり,薬莢つきのリボルバー数丁をひっさげ,すっごいギザギザのついた拍車のブーツを履いていた.」かなり本格的です.
それとも,「謝肉祭[マルディ・グラ]にもらった黒いマスクと,ゴム矢のピストル,赤いハンカチ(ママンのお古スカーフ)を首に巻いた」ニコラでしょうか.絵だけ見ると,何だか,二人を足して2で割ったような格好のような気がしますが.いずれにせよ,役割分担に不満げな様子でいます.
ページをめくると,口を塞がれ木に縛り付けられている大人が左端に,遊びを終えて去ってゆく子供たちが右端に描かれています.
これも前話同様,お話の中で語られそうでありながら,実際にはない場面です.
まずこのお話のオチは,子供たちの騒ぎ声に耐えられなくなったパパが出てきて,遊び方の指南をしてやろうと仲間に入るのですが,結局木に縛られたまま一人置き去りにされてしまうというもので,ニコラはこうコメントしています.
「僕たちが[部屋の中での遊びから]出てきて,夜だったから,ブレデュールさんもずいぶん前に帰っちゃっていたんだけど,パパは相変わらず木に縛られたままで,大声出して膨れっ面してたんだ.一人でもこんな風に楽しめるなんて,すっごいよね.」
ですから,パパは「大声を出して膨れっ面してた」のですから,口は覆われていませんね.でも,右端の子供たちの顔をよく見ると,全然悪気のない様子で,ママンに呼ばれたからおやつを食べに行こうという感じです.この楽しそうな様子と,口をきけないパパの様子が対照的で思わず笑ってしまいます.それに,門の外には人がたくさん往来していて,パパが助けを求めようにもできず,ひたすら見せ物になっているようです.門の外の笑い声と次第に恥ずか
しさで怒りがこみ上げてくるパパの様子がやはり対照的で,それも笑いのポイントでしょう.
そういえばニコラの家は郊外の一軒家のはずなので,そんなに人通りがあるのも,門の外側に大都会パリのような街並みが見えるのも不自然なのですが,ここでは人通りが多ければ多いほど,パパの恥ずかしさと怒りがいやますわけで,文章を絵で描写するというよりは,その効果が絵に描かれていると言えるかもしれません.
3枚目,4枚目はカウボーイごっこの様子.椅子の背後にいると,椅子の大きさと比べて,いかにも人物が小さく見えます.もちろん子供だからなのですが,カウボーイを二人描いても一目で子供だと理解させるのは難しい.でもこの絵を見れば一瞬で遊んでいることが分かるのです.頭隠して尻隠さず,の通り,椅子の後ろでは隠れていることにならないというのも子供の遊びっぽく見える工夫でしょうか.
「バン!」「う,撃たれた・・・」.ポーズだけでなく,帽子まで後ろに飛んでいるのがリアルです.
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