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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(81)

« L'insigne », t.V, pp.108-114.

 チッキショー,バッチーなぁ・・・.と「注目すべき」ダジャレから始めましょう.題名のinsigneは男性名詞なら「記章,バッチ」を意味する単語ですが,形容詞では「注目すべき,輝かしい,とんでもない」などの意味で用いられます.ここでは定冠詞(l')がついていますから,もちろん名詞の用法です.

 ある日,ウードが仲間の印としてバッチを作ろうと思いつきます.バッチをつけて仲間意識を高めようなんて,なかなか素敵なアイデアです.そういえば街を歩けば,制服で学校がわかりますし,ブランドのロゴがついている人がいれば,なんとなくお金持ち風とか,流行にさといとか,はたまたボロボロの服着ていれば,パンクがお好きでいらっしゃるとか,なんとなく仲間意識が出るものです.それでウードの提案は満場一致で採用されます.男性名詞と女性名詞の間違いを指摘されて,最初から仲間外れにされてしまったアニャンを除いて.それでどんなバッチにしようか,みんなで意見を出し合うのですが,それがてんでバラバラだったり,脱線したりするのがいつものパターンで,今回もその通りです.ジョフロワの提案で名前も「仕返し団」.ま,いいんじゃないでしょうか.1枚目のイラストにその図案が掲載されています.


 休み時間に手前の子どもたちはビー玉で遊び,その奥の子どもたちは何やら議論しています.左奥には楽しそうに大きな口を開けて話している一段がいて,その一人がバッチの図案について話しているようですから,これがウードですね.ウードの右側には眼鏡をかけた子がいますが,これがアニャンに見えるのは気のせいでしょう.だって,図案の話になる前に,追い払われてしまいましたから.でも,丸い図案の一番外側にメンバー全員の名前が書いてありますが,そこにはちゃんとアニャンの名前が入っています.告口をするヤツを意味する「ゴキブリ野郎」と罵られても,メンバーから排除しないところがやはり良いところかと.

 その他,円形に記された名前のど真ん中,一番上は「ウード」です.発案者でバッチを作ってきたんだから,当然ウードがリーダーで良さそうなものですが,そんな主張は通らず,お話の終わりでは結局,これが元で全員バッチを破り捨ててしまいます.これが2枚目ですが,後のお楽しみとしておきましょう.

 図案にはそれぞれがこだわりがあるようで,リュフュスは握手する手,ジョフロワは二本の刀剣,アルセストは何故かローリエの葉を入れるよう提案します.やはり料理の味付けにはローリエが欠かせないからでしょうか.ショウリよりはリョウリな感じ?

 授業中にウードがせっせと内職をして完成させた図案は円形で,色は青,白,黄色,外周にEGMARJNCと記されていました.もちろん,Eudes, Geoffroy, Maixent, Alceste, Rufus, Joachim, Nicolas, Clotaireの頭文字です.アレっ?アニャンはやっぱり仲間外れでしょうか.またもやイラストと文に齟齬が.

 これを見てまずはリュフュスが2つの「染み」を発見.どうやら一つ目はリュフュスの提案した握手する手で,もう一つはただの染みとのこと.ジョフロワにはEGMARJNCの意味がわからず,メクサンが色について尋ねると,三色旗(フランスの国旗)にしたかったのだけれど,赤がなかったので黄色にしたとの返事.それ変じ・や.あんまり突っ込まれたもんでウードがキレて,みんなでなだめて,結局ウードが家で作ってくることに.なかなか面倒な人たちです.でも,一つのことをみんなでやるって,誰かが率先して,苦労して,みんなで意見を出し合って.そんなものですよね.

 それで次の日,みんなの意見を全て取り込んだバッチが出来上がってきます.「なんか茶色いもの」があるのは,アルセストの要望のローリエで,緑がなかったから茶色にしたんだそうです.笑っていいのか,それとも苦労を偲んで笑いを抑えるべきところでしょうか.各人,「針,ピン」(épingle)を持ち寄っていますから,それで「上着のボタン穴に」バッチをつけます.

 やれやれこれで一件落着と思いきや,ウードのバッチだけが大きいという指摘が.ということは,とりあえず,ウードは家で8人分の絵を描いて色を塗ってバッチを作ってきたんです.少しくらい大きくたっていいでしょうが.でも誰もそれを見逃さず,いつものリーダー争いに突入.それならもう返せと言うウードを挑発するように,ほらよっとばかりにジョアキムがバッチをとって破って,地面に投げ捨て,足蹴にして唾を吐きかける.凄い冒涜ぶり.



 それもイラストではかなり得意げな様子です.後ろのみんなもニコニコ納得して,後に続きます.ウード,可哀想すぎる.怒り心頭に達したウードはみんなと仲間割れして,もう口も聞くもんかと.それで怒って帰ってしまうんですが,その時ウードの胸には「コーヒーカップのお皿のように大きな,自分だけのバッチ」がついていたとのことです.ニコラの観察力ったら,何も見逃しません.それにしても,そんなに大きかったのね.そういえば,一人不愉快そうにジョアキムを睨むウードの胸にはバッチが留められていますが,そんなに大きくはなさそうなんですがね.

 でも,まぁ,これで悲しく仲間が分裂,と思いきや,次の日からはやっぱり仲間なんですね.なぜかって言うと,仲間の印がついているからです.今や,「青,白,赤で,周りにEGMARJNCと書いてあって,握手する手が真ん中にあって,その下に茶色いローリエがあるバッチをつけていないのが仲間」(p.114)なんですから.印がないのも,立派な印です.そんな仲間がいたらいいなぁと憧憬の念を新たにしました.


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