« Le code secret », t.IV, pp.111-116.
フランス語でcodeというと「法典,法律」や「規範,掟」の他に,記号体系を表す「コード」(電気の,ではありません),「信号,暗号」の意味があります.「暗号」というと,すでにそれを知っている人たちの間で交わされる秘密の信号という意味になるでしょうから,「秘密の」(secret)という修飾語はいらないような気がします.「秘密の暗号」ではしつこいような.
それはともかく,今回は若い監視役(生徒監)であるムシャビエールさんが来てから,どんどん休み時間が短くなって困ったニコラたちが,授業中にも友だちと話ができるようにと,ジョフロワの発明した秘密の信号を使おうとするお話です.ま,授業の有効利用といったところでしょうか.
授業中は私語厳禁.それでメッセージを書いた紙を回そうとするとそれも見つかってしまう.授業中に意思疎通しようとするなら,先生と全面対決となります.それでジョフロワがモールス信号ならぬ,秘密の信号を発明します.鼻の上に指をやると「a」の文字,左目の上なら「b」の文字,右目なら「c」で・・・最後に「z」は睨むように目を寄せる.アルファベット26文字それぞれに,動作を割り当てていったわけです.すごい発明です!
イラストは4枚ありますが,抜粋を除けば実質3枚で,その1枚目は「z」の動作を表しています.
なんか,みんな目を見開いていて,すっごく不自然.メガネかけてるんじゃないですよね?
2枚目は右目の上に手を置いているから「c」でしょうか.
みんな,練習に余念がありません.クロテールとアニャンだけは仲間はずれ.クロテール曰く,「アルファベット自体,訳のわからない記号(code secret)」だから,休み時間に喋るからいいやとのこと.アニャンにはみんなとのおしゃべりよりは先生のお話の方が有難いらしい.ま,そうでしょう.
「相手とケンカしているときに,仲間内であれこれ話ができたら,相手にはわかんないし,それで僕らは勝てるからね.すっごく役に立つさ.」なるほどね.それにしても,ケンカ中に作戦会議の余裕なんてあるのかしらん?!
それはともかく,いよいよ実践(実戦?)の時がきました.授業中,先生が黒板に宿題を書き始めると,ニコラたちは一斉にジョフロワの方を振り向きます.でも未だ覚えたての信号ですから,どうやらうまく理解できないようです.それに,宿題も書き写さなきゃいけないし.それなのに,ジョフロワのメッセージはやたら長い.ニコラたちも必死に目で追い,解読しようとします.ジョフロワももちろん必死.「みんながジョフロワを見ていたから,ジョフロワはすっごくたくさん体を動かし始めた.やつはおかしかったよ.だって,耳に指を突っ込んだり,頭を何度も叩いてたんだ.」(p.115)
手に汗握る展開です.不幸にも,ジョフロワは教室の一番後ろの席に座っていたので,みんなはずっと後ろを見続けています.「それからジョフロワは頭を掻いて「i」,舌を出して「t」,目を大きく見開いたところで動きを止めた.それで僕らは一斉に前を向き直ると,先生はもう黒板に書くのはやめて,じっとジョフロワを見ていたんだ.」(p.115)あぁ,もうだめだ・・・.
「そうよ,ジョフロワ,私はあなたのお友だちと一緒に,おどけたあなたを見ていました.結構長かったようね.それじゃ,罰として立っていなさい.休み時間も抜きにします.それから明日までに次の文を100回書いてきなさい『僕は・・・』」(p.116)
教室中に「?」が飛び交ってます.みんながジョフロワの方を,つまり後ろを向き,必死に理解しようとしています.ただ一人,先生だけは「!」で理解した様子です.しかし理解したといっても,ジョフロワの信号はあくまで「秘密」ですから,内容を理解したわけではありません.つまり誰にも何も伝わっていないのです.
それで怒ったのは先生ばかりではありません.ジョフロワも「もうおまえらとなんか話すもんか!」と捨て台詞を残して帰ってしまいます.でも,次の日にはまた仲間になっているのがニコラたちの良いところ.
それで次の日,ジョフロワがあの時のメッセージの説明をしたんだ.やつに言わせると,こういっていたんだってさ.「みんなしてそんなふうに俺の方を見るな!先生に見つかっちゃうじゃないか!」(p.116)
秘密の信号は誰にも知られてはならないものですが,それでも誰かには知られないと,別の意味で理解される,つまり誤解されてしまうというわけです.
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