« La pluie », t.IV, pp.65-73.
「雨」の日の出来事,「雨」のせいで困ったこと,そんなお話です.
今回は4枚のイラストが挿入されていてとても贅沢.しかも,一枚一枚がかなり凝っています.きっとサンぺは子どもたちをゴタゴタ描くのがすごく好きなのでしょう.
僕ね,雨は結構好きなんだ.土砂降りならね.だってそれだけ降っていたら,学校はお休みだから,家に居て電気の電車で遊ぶんだ.でも今日はあまり降っていないから,学校へ行かなきゃならなかったよ.(p.65)
クラスメート大好きのニコラでも,学校へ行くのは嫌なんですね.お勉強するところだからですかね?それで今回,自習時間中にもただ一人歴史の復習をしているアニャンに対して,二度も「頭が変なんだ」と繰り返しているのでしょうか.
さて学校が嫌いな理由はさておき,ニコラが雨が好きな理由はたくさん書かれています.「顔を上に向けて口をあんぐり開けば」雨が口に入ってきて楽しいし(1986年以前で良かった),「水たまりを歩いて,何度もバチャバチャ,友だちに水を跳ね飛ばし」(良い性格!),「雨樋の下を通る」と,「シャツの首元から水が入ってきてすっごく冷たい」.この時レインコートの首元にボタンをかけておいたらだめ(どんな遊びだ?!).それでも休み時間に校庭に出れないのは残念なようです.
どうやら凝りに凝った3枚目のイラストは,そんな愉快な登校の様子を描写しているみたいです.
結構な土砂降りに見えますが,これでも登校するということは,学校へ行かなくても済むほどの土砂降りって相当なんでしょう.それにしても何故,誰も傘をささないのか.
教室に入り,授業が始まり,教室の窓から落ちてくる雨を眺めるのも一興だそうです.一粒一粒が地面に着くのに競争しているように見えるらしい.こんな豊かな想像力で自然現象を眺められたら,きっと私たちは退屈しないでしょうね.
そんな楽しい空想の最中,休み時間を告げる鐘が鳴ります.ウードがボール球鬼ごっこ(la balle au chasseur)を提案します.今回調べましたが,これはムリダール(Moulidars)という人が1888年に編集した『あそび大全』(Moulidars, Grand Encyclopédie méthodique, universelle, illustrée, des jeux et des divertissements de l'esprit et du corps)に採録した,昔からあるれっきとした遊戯でした(Wikipédia, lu le 5 mai 2021).狩人がボールを当てると,当てられた人は獲物から猟犬となり,力を合わせて獲物を狙う.最後の一人が狩られるとそれでおしまい.かなりハードな,枠線のないドッチボールといったところでしょうか.
リュフュスが窓ガラスを壊しちゃうだろと反論しますが,ジョアキムが,それじゃあ窓を開けようと提案して万事解決.それじゃあやめておこうとならないのが,彼ららしいところです.それで窓を開けたら,風が強くて雨が吹き込んできました.その結果がこれ↓.
窓際の4席がびしょ濡れで座れなくなってしまいます.「担任の先生は両腕を上げて,まったくしょうがない子達ね,濡れていないいすになんとか詰め込んでお座りなさい,と言ったんだ.」(p.68) なるほど,フランスでは怒った時には「両腕を上げ」るんですね.それで通常は2人から3人のところ,推定4席分x3人=12人が前から5列の席に分散して座ることになります.1席5名で総計20名.これは無理がありますが,ともかくも,ごちゃごちゃしていて壮観です.最前列の向かって一番左にアルセストの姿が確認できます.文句を言っているようにも見えますが,口を開いているのは何か頬張っているのでしょう.
ニコラはリュフュス,クロテール,ウードと座ったとありますが,4人席は見当たりません.ま,細かいことは気にしないでおきましょう.ところがアニャンは一人で座っていたために,先生は仕切り直し.「ちょっとでも騒いだら,厳しく罰します!」(p.69)というわけで,ニコラは今度はジョフロワ,メクサン,クロテール,アルセストと5人席.アルセストの席はパンクズがたくさん散らばっていて「ちょっと嫌だった」ようです.
休み時間はまだまだ続きます.今度はジョフロワが黒板に「鼻のない,おかしなおじさんの絵」と,「メクサンは大バカ」と書いてからかいます.これが2枚目.
シルクハットをかぶってユーモラスなおじさんの絵です.みんなをにこやかにしています.独り,耳を塞いで歴史の復習をしているアニャン以外は.
もちろんここでいつものケンカ.
ここで担任の先生乱入.怒っています.アニャンがジョフロワが描いたと告げ口して,ジョフロワになじられ,泣き出します.騒々しい休み時間です.それで全員着席.ニコラはリュフュス,メクサン,ジョアキムと4人席.ここで校長先生が教室に入ってきます.空いている席を見咎め,元の席に戻るよう指示をすると,濡れていても仕方ありません.全員が元々の席に戻ろうとしたところで担任の先生が事情を説明し,やはりまた前のすし詰め席に戻ります.ニコラはアルセスト,リュフュス,クロテール,ジョアキム,ウードと6人席.なんか,仲の良い通しでくっついたり離れたりしてます.
黒板を見咎めた校長先生は,雨が上がっていたのに,悪ふざけの罰として教室から出ることを禁止します.「君らは教室に残っていなさい.担任の先生に監視してもらいます!」だそうです.
校長先生がようやく教室から出て行ったので,ニコラはジョフロワとメクサンの3人席に座り直しました.ニコラたちにしてみれば,担任の先生が校長先生に説明してくれたおかげで,濡れた席も使わずみんなで座ることができたということで,「先生はすっごく良いよね」と大絶賛.でも校長先生の決定を受けて,先生の顔は・・・
先生は,僕らが今日は校庭に出ちゃいけないと言われた時,僕らの誰よりも困った顔をしてたんだよ.(p.73)
これで休み時間も返上です.学校の先生は決して,決して楽ではありません.
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