« Marie-Edwige », t.IV, pp.41-48.
「マリ-エドヴィージュ」,ニコラ家のお隣さんであるクルトプラック家の一人娘,お嬢さん.ニコラがいつか結婚するつもりの女の子.みんなの憧れの的(となる重要人物).
ニコラたちはいつも教室で男同士でつるんで遊んでいます.アルセスト,ジョフロワ,リュフュス,クロテール,ウード,それに時には,先生のお気に入りでクラスで一番のアニャン.これがいつものメンバーなんですが,それでもニコラにしてみれば,どうやら教室を離れれば,もう一人大切なcopain(「友だち」)がいるようです.
おやつの時間に家に学校のお友だちを呼んでいいわよってママンが言っていたから,それで僕はマリ-エドヴィージュも招待したんだ.(p.41)
わざわざお隣の娘さんを呼んだのがわかります.だってママンは「学校のお友だちを」と言っていたのに,ニコラは「マリ-エドヴィージュも」招待したんですから.
いつもの友だちたちは変に思ったようです.異変にまず気が付いたのはアルセストです.アルセストは家に着くとすぐに,何が出てくるか確認しに食堂へ行きます.それで椅子の数と切り分けたケーキの個数が合わないのを不思議に思います.もう一切れ余分にもらえるか,余った一切れを分けて食べられるかと思ったかもしれません.鼻がききます.
「でも,女じゃないかよ.」とジョフロワが言ったんだ.
「えぇと・・・そうだよ,まぁ.」と僕が答えた.
「女となんか遊べねーぜ.」と言ったのはクロテール.「その娘がきても話もしねーし,一緒に遊んだりなんてしねーよ.まったく,冗談じゃないぜ.」
「家にいるんだから,僕が招待客を決めるんだ.それが嫌なら,引っ叩いてやるぞ.」(p.41)
最初は言い淀んでいましたが,友だちを敵にまわしてもよいという毅然とした態度.恋ですね,恋.
実際マリ-エドヴィーじゅが到着すると,緊張してか,あるいは彼女の愛らしさに打たれてか,誰も一言も話しません.でもそんな不自然な状態には素知らぬふりで,マリ−エドヴィージュは愛らしさを振りまきまくり.一人ずつ,虜にしてゆきます.
「まぁ!あなたは食べるのがすごく早いのね.あなたほど早く食べる人にお会いしたことないわ.すごいのねぇ.」(p.42)
これでアルセスト陥落.「真っ赤になってニタニタ顔したんだよ.」これを見たジョフロワ,ウード,リュフュス,クロテールが早食い競争を始めます.これを見てママンはびっくり.
続いてサッカーで張り合おうとしますが,マリ-エドヴィージュの一言で,でんぐり返しに変更されます.
「でんぐり返しなら得意なのはニコラよね.」(p.42)
競争心を煽るはマドンナ(紅一点)の大切な仕事です.我も我もとみんながでんぐり返しを始めました.ここでようやく本話の2枚のイラストの1枚目.ちなみに6枚ありますが,全て3枚目と4枚目からの抜粋です.
みんな,ゴロンゴロン転がってます.実際に見ていたらさぞかし,見応えがあったでしょう.これは5人がでんぐり返しをしている様子.
みんなが張り合っている間,やはり女の子を役割を心得ています.
マリ-エドヴィージュは拍手してたんだ.(p.42)
でもその間,もう一人でんぐり返しをしていなかった人がいました.アルセストです.
アルセストは片方の手で,お三時の後に食べようと家から持ってきていたブリオッシュを食べながら,もう片手でシャンタルちゃんを握っていた.マリ-エドヴィージュのお人形さんだよ.それで驚いちゃったよ,アルセストが人形にブリオッシュをちぎってあげようとしていたんだ.いつもならね,絶対誰にも,友だちにだって食べ物なんて渡さないのにさ.(pp.44-45)
あの,「太っちょでいつも何か口にしている」アルセストが・・・.もうすっかり人が変わってしまいました.恋は偉大だ.
次は逆立ちです.クロテールが逆立ちを見せると,マリ-エドヴィージュちゃんは思わず,
「まぁ!すごいわ!」(p.45)
なかなかの策士です.男(の子)心を上手くくすぐります.我も我もと逆立ちを始めました.
右上にマリ-エドヴィージュとアルセスト.その前には何とかしていいところを見せようと逆立ちに励む8人の男たち.なんで8人もいるの?とか,人形はマリ-エドヴィージュが持っているじゃないかとか,そんな細かい食い違いは放っておいて,この逆さまの世界を楽しみましょう.必死に目をひんむき歯を食いしばり,時には鼻を打ち時にひっくり返って転んでしまっても,好きな女の子にいいとこ見せるためなら.いじましい姿です.
さらに木登り競争が始まりますが,ここでマリ−エドヴィージュちゃんはピアノのレッスンがあるからと帰ってしまいます.それでみんな,やる気も競争心も失せて解散することになりました.
それでもニコラだけは,ちゃんとマリ-エドヴィージュの心配をしています.優しいなぁ,というか,恋ですね,恋.
とってもいい一日だったよ.すっごく楽しかったんだ.でも,マリ-エドヴィージュが楽しんだかどうかはわからないな.
ほんとなんだ.僕らがマリ-エドヴィージュに冷たかったんじゃないかな.だって誰もあんまり話しかけなかったし,まるでマリ-エドヴィージュがいないみたいにさ,僕らだけが遊んじゃったからね.(p.47)
それで最後の6枚目のイラストでは9人!が逆立ちをしている図なのですが,すでに指摘した通り,これは4枚目から男の子だけを取り出して配置し直した図です.誰か一人二役?していますが.これは間違い探し?的に見比べてみてください.
ちなみに,1枚目,2枚目5枚目はすべて3枚目から切り取ったマリ−エドヴィージュとアルセストの絵ですが,1話に3回も使い回しされると,何やら二人の仲が疑われてきます.否,むしろ,アルセストのご初恋の方かもしれません.
Comments