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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(57)

« On a parlé dans la radio », t.IV, pp.33-40.

「僕ら,ラジオで話したんだ」という題名で,僕らが話す代わりに音楽が流れたというオチの話です.つまり,僕らはラジオで話さなかったのですが,題名に偽りありかというと,フランス語のonには「不特定のon」という用法もあり,「誰かがラジオで話したんだ」と受け取れば,確かに誰か話をしたでしょうから,あながち誤りともいえません.僕ら以外の誰かですが,誰なのでしょうか.よくよく考えれば音楽だって人の声だって,空気中を伝わって音が聞こえる現象です.

 題名をめぐる疑問についてはこれくらいにして,ニコラのクラスがラジオのインタヴューに選ばれて,司会者と録音技師が学校に来るというお話.やれやれ,よりによって.『プチ・ニコラ』の読者なら,これが如何に危険な選択か察知できますよね.案の定,みんなで言い合いになり・・・.オチの音楽が流れる話に行き着くまでには,それぞれのキャラが反映されたいつもの展開となります.イラストは5枚ありますが,3枚目は1枚目からの,4枚目は5枚目からの抜粋ですので,実質3枚です.掲載順序は,残念ながら話の展開とずれてしまっています.ここではお話に沿って,イラストを見てゆきましょう.

 まずは,大方の予想通り,「先生のお気に入りでクラスで一番」のアニャンがインタヴューを受けます.イラストは2枚目.


ラジオ局から聞き手の「キキさん」と録音技師の「ピエロさん」が学校にきます.校長先生の紹介があり,担任の先生が録音中はしゃべらないようにと注意を与えているところです.最初にインタヴューを受けたアニャンは顔面蒼白で固まってしまい,何を聞かれても答えられない.思わず泣き出してしまいます.周りはやんやと冷やかしていたようです.指を刺して笑っている子もいますし.困っているのはしかしアニャンだけではなく,キキさんも何やら情けない顔をしています.ピエロさんに至っては,足を組んで机に寄りかかり,キッと口をつぐんで不満顔.仕事が捗りませんな.ピエロさん他,大人たちの厳しい顔つきが右奥,子どもたちの楽しそうな様子が左手前,間にはキキさんと大粒の涙を飛ばして?泣いているアニャンの姿が配置されていて,とても整然とした構図の良い絵です.


 キキさんは額を拭いピエロさんの方を見て,それから僕らに言ったんだ.

—君らの中で,マイクの前で話すなんてへっちゃらという人がいるかい?

それで僕らみんなで叫んだんだ.

—はーい,ぼくが!いや,俺が!僕なら!(p.36)


 さて,キキさんはなぜ額を拭ったのでしょうか.イラストを眺めると,多分汗じゃないだろうなぁというのは何となく想像できますが.


 次に選ばれたのはアルセストでした.これが最後に挿入されたイラストです.


 「デブでいつも何か食べている」アルセストはクロワッサンを食べながら登壇しました.最初の質問の名前だけはかろうじて答えられましたが,校長先生の逆鱗に触れて敢えなく懲罰コーナーへ.


 「それでアルセストは大きくため息をつき,先生の机の上にクロワッサンを置いて,懲罰コーナーに行ったんだ.そこでアルセストは立ちながら,ズボンのポケットからブリオッシュを取り出して食べ始めた.その間キキさんは袖でマイクを拭いていたんだ.」(p.36)


 さて,キキさんは何を袖で拭いたのでしょうか.これもきっと汗じゃないですよね.イラストを見ると.キキさんの呆れ顔,ピエロさんの驚いた顔,校長先生の怒り顔.悪気のないアルセスト.食べているのはクロワッサンには見えませんが,ま,サンぺのイラストでその手の細部はいいのでしょう.

 校長先生と担任の先生は恥ずかしいやら,居心地が悪いやらで必死に謝っていますが,キキさんとピエロさんはまだまだ余裕をかましています.


校長先生が言った.

—許してやってください.ほんの子どもだし,少し集中力に欠けたところがあって・・・.

—なぁ〜に,われわれは慣れてますよ.キキさんが笑いながら返したんだ.この前なんて,スト中の港湾労働者にインタヴューしたんですよ.なぁ,ピエロ?

—ありゃ,面白かったな.とピエロさんが答えた.

それからキキさんがウードの名を呼んだんだ.(p.37)


 それで3人目はウード.これでいつもの言い争いの口火が切られます.


 もう,インタヴューの内容などそっちのけ.校長先生はツッコミを入れたジョフロワに退場を命じています.メクサンたちはウードとケンカをし,キキさんはキュッと口を閉めて,何か怒っているみたい.ピエロさんはうまく録音できずに怒鳴り始めている感じ.いつものカオス状態です.これを収集したのはキキさんとピエロさん.さすがにプロです.


—鼻に一発喰らいたいのか.とウードがいうと,校長先生はウードに木曜日の居残りを命じた.その時,キキさんが「さて,録音は終了」と言うと,ピエロさんは道具を全部スーツケースにしまって,二人で出ていっちゃたんだ.(p.38)


 それでその晩8時にニコラ家では人を呼んでラジオの前で待っていたんですが,聞こえてきたのは音楽ばかり.これもいつものように,息子自慢をしたかったパパは肩透かしを食らってしまいます.とことんコケにされるのがパパです.


キキさんとピエロさん,ごめんなさい.すっごくがっかりしただろうなぁ.(p.39)


 と,やはりKYで状況を理解していない,いつものニコラで締めくくりとなります.










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