« Les crayons de couleur », t.IV, pp.21-26.
そういえばフランス語を学習し始めた頃,crayonは「クレヨン」ではなく「鉛筆」を指すと習いました.「クレヨン」はフランス語でcrayon de cire.つまり,「蝋でできた鉛筆」です.思えば,クレヨン(発音)はクレヨン(蝋でできた鉛筆)ではないという言葉に,何か不思議なものを感じたような気がします.「これはパイプではない」,のような.音が同じでも,想い浮かべる物が異なるとか,違う内容の物を指し示しているとか,ま,そんなような.でも,こんな体験はこのお話とは関係ありません.単なる音からの連想です.
このお話では冒頭の装飾文字((23)からの抜粋)を除いて大小4枚のイラストがついていますが,2枚の子どものケンカは(20)から,最後の1枚は唯一の大判である1枚目からの抜粋ですから,実質1枚のみです.
メメ(ニコラの母方のおばあちゃん)からニコラにプレゼントが届きます.メメに感謝する前に,「イカしてるな」と,ニコラ.でも,プレゼントをくれたメメにではなく,「郵便配達さん」への感想でした.
プレゼントが届くと,包みを開ける前から,パパはすでに悪いことを想像してしまいます.よほど義母と相性がよくないんでしょう.パパは何かにつけて,やんわりと,しかしママンには伝わるように,メメの悪口を言うのです.間接的に.
「カフェ・オ・レを飲みながら,パパが言ったんだ.『いやはやいやはや・・・悪い予感しかしないな』(«Aïe,aïe,aïe, des catastrophes en perspectives !»).これを聞いたママンの気に障り,ママンは大声で怒鳴り始めた.『私のママンが(もちろん僕のおばあちゃん)何かするたびに,あなたと言う人はぶつぶつぶつぶつと・・・』.それでパパが『カフェ・オ・レくらい静かに飲ませてくれよ』と言い返し,次にママンが・・・(p.21)
と言うわけで,いつもの通り,メメをめぐってパパとママンのケンカが始まりました.
でも,ニコラはそんなケンカなどどこ吹く風.プレゼントを貰って大喜びで「色鉛筆の箱を手に,食事をする部屋を走り回り飛び上がって小踊りして」しまいます.すると,「鉛筆がぜんぶ,バラバラに散らばってしまいました.」(« tous les crayons sont tombés »)パパとママンはそんなことには気がつきもせず,ママンは色鉛筆で「どんな悪いことがあるって言うのよ」と食い下がり,怒鳴り合いを継続.でも,この一文はすっごく大事です.なぜなら,お話のオチに関わりますから.
ママンの許可をえたニコラは色鉛筆を学校に持っていって,クラスメートに見せびらかします.まずはアルセストが色鉛筆の箱を手に取りジョアキムに渡し,ジョアキムからメクサンへ,次にウード,リュフュス,ジョフロワの手に箱が移動します.ここで先生に見つかり,ニコラの手元に戻された箱には鉛筆が何本も欠けていました.それで↑のイラスト.クラス中から鉛筆が返却されてくるわけですが,もうその数ったら.ざっと数えただけで,31名=31本が手に手に色鉛筆を持ち,険しい顔をしたニコラの方に差し出しています.ニコラの手にある箱の中には1本しか入っていませんから,どうやら33色入りの色鉛筆だったようです.それにしても,サンぺは本当にゴタゴタした子どもたちの絵が好きですね.同調して鉛筆を取らなかったのは,「先生のお気に入り」のアニャンと,質問を受けて前に出ていたクロテールだけ.ところで,33色入り?31+1で32では? と,ここで,黄色の色鉛筆がないと言うことで大騒ぎ.いつものケンカとなり,ブイオンさんが仲裁に入り,罰として書き取りを命じられ・・・.いつものパターンです.ケンカと言うことで,(20)や(23)から絵を拝借してきたのでしょう.
それでニコラが昼食に帰ってくると,その時には箱は潰れて,鉛筆は折れて,やはり黄色がないと言うことでニコラは泣き出してしまいます.そこへパパが帰ってきます.それでドヤ顔で言うには,
「ほらね,言った通りだろ.色鉛筆で大騒ぎだったわけさ.」
「そんな大げさな.」とママンが返した.
その時,大きな音が聞こえたんだ.それはパパだったよ.黄色の鉛筆に足を滑らせてひっくり返っちゃったんだ.鉛筆は食事する部屋のドアの前に落ちてたんだ.」(p.26)
ママンに対して自慢げにドヤ顔なんてするから,パパはそのしっぺ返しをくうのです.それにやっぱり,パパの「悪い予感」はここでも的中したというわけです.「悪い予感」はdes catastrophes en perspectiveの訳でしたが,catastrophes「大惨事」が複数形なのは,学校での出来事ばかりじゃないからなんですね.
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