«Clotaire a des lunettes ! », Sempé-Goscinny, Le petit Nicolas et les copains(t.IV), Éditions Gallimard, 1994(Éditions Denoël, 1963), pp.5-12.
このお話から第4巻目に入ります.この巻についても相変わらず,各話の初出や発表順などは分かりません.以下のサイトある,1962年の『Pilote』162号に掲載された« Les lunettes de Clotaire »ではないかと想像できますが,題名も異なりますし,ちゃんと現物(『ピロット』誌で確認したわけではありませんから,やっぱりはっきりしません.
https://bdoubliees.com/journalpilote/series4/nicolas.htm
ちなみにWikipédiaは未だ完結していないようです(« Liste des histoires du Petit Nicolas », 2021年4月10日参照).
ま,仕方ありません.
それで第4巻の表題紙にはこの巻の題名(『プチ・ニコラと仲間たち』)に相応しく,大きな水墨画のような木と子どもたちが描かれています.
大きな木の下の小さな男の子たちとさらに小さなビー玉.それにみんな覗き込んでいて熱中している様子がよく分かります.
さらにこの巻では各お話の最初の一文字に「アルファベの装飾文字」が用いられています.こんなもの↓です.
お話がQuand...で始まるので,Qの飾り文字のようになっているのですが,これはやや眉唾の装飾文字で,これまでに出てきた子どもたちのイラストに,Qの字を重ねているだけのものです.
さてお話に入りましょう.このお話には(装飾文字を除く)イラストが6枚ついていますが,3枚目と5枚目のメガネをつけて得意げに歩くクロテールの図は同じものですから,計5枚となります.
「クロテールが学校にきて,今朝,僕らはみんな超びっくりしたんだ.なんてったって,メガネしてたんだからね.」(p.5)
それで題名にも「クロテールがメガネしてるぞ!」と「!」ビックリマークがついていたのですね.こりゃ大事件です.ニコラの説明によると,「クロテールはいいやつで,クラスでビリで,だからメガネをかけるよう言われたみたいなんだ.」(p.5)「だから」???
というわけで,ニコラの説明は相変わらず省略されています.どうやらクロテールの説明によるとこういうことのようです.すなわち,お医者さんが僕がビリなのは授業中よくものが見えていないからだ.それでメガネ屋さんに行って機械で見られて,訳のわからない文字を読まされて,メガネをもらった.「さぁ,だからこれでもう僕はビリじゃなくなるんだ.」だそうです.
そこにニコラが(心の中で)ツッコんで曰く,「クロテールが授業中見えてないのは,しょっちゅう寝てるからなんだ.だから多分,メガネがジャマになって,寝れなくなるんじゃないかな.」(p.5)正論です.クロテール,いえ,クロテールのご両親様,まずはメガネじゃなくて,授業中寝ないことです,大切なのは.
メガネをかけたクロテールが颯爽と歩いてきます.色のついたハンティングをかぶり,メガネをかけ,カバン片手に,広い門から一人で堂々と,そしてゆっくりと入って来ました.学校のみんなは口々に「あっ!クロテールがメガネかけてる!」(9人),「羨ましいぞ!」(1名),「かっこいいな,やつのメガネ」(1名)と叫び,指差しています.ま,アルセストだけは左端で,何かもぐもぐ食べているので言葉を出せませんが.クロテール,授業で立たされる以外で,初めて注目の的に!こりゃ,大事件ですな.
2枚目は授業風景.というより,ニコラのツッコミを考えると,これは寝る直前かもしれません.だってメガネ外して頭にかけてますから.これなら寝るのに邪魔にならないでしょう.真面目にノートとっているようにも見えるので,こんなコメントは意地悪でしょうが.
初めてメガネをかけたクロテールは,これでよく見えるようになる!ではなくて,これでクラスで一番になることしか頭にありません.だってこれまでクラスで一番だったアニャンがメガネをしているんですから,メガネをすれば一番にと考えたっておかしくないでしょう?う〜ん・・・論理的には合っているのに何かおかしい,どこかおかしい.でも自信満々なクローテール.
4枚目はものを食べて汚い手でアルセストにメガネを触られたくないクロテールの図.
それでアルセストとひと揉めしますが,すぐに仲直りができるのは仲間どおしの良いところ.最後には地理の授業中に,アルセストにも貸してあげるんです.優しいなぁ.でもアルセストがメガネをつけると,よく物が見えなくて,目を凝らして見ようとすると,運悪くその時先生が目の前に.
「アルセスト!悪ふざけはおよしなさい!」と先生が怒鳴ったんだ.「変な寄り目はやめなさい.そんな風にしてると,ほんとにそうなっちゃうんだから.いいから,教室の外に出てなさい.」(p.12)
友情美談で終わらないのが『プチ・ニコラ』です.さらに,アルセストがメガネをつけたまま出て行ってしまったものですから,クロテールはやっぱりメガネなし.多分,ゆっくりと寝れたでしょうね.
「それでね,もちろん,メガネがないから,やっぱりうまくいかなかった.クロテールはゼロ点をとっちゃったんだよ.」(p.12)
最後の5枚目はメガネを取り合って遊んでいる様子です.メガネをかけているのはアルセストではなさそうですが,普通に目がいい人がメガネかけてもぼやけるだけですよね.つまり,このシーンが最後のアルセストが叱られる場面の伏線になっているようです.アルセストはつけてはみたものの,よく見えないので一所懸命目を凝らしてみると,目の前には先生がいて,先生には「悪ふざけ」に見えてしまったんですね.メガネって本当に,よくものを見るための道具なんでしょうか?
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