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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(52)

更新日:2021年6月9日

« Souvenir de vacances », t.III, pp.150-157.

「夏休みの想い出」.実際に掲載された時期が気になりますけど,それはともかく第3巻を締め括るお話しとしてはうってつけの題です.

 この巻のほとんどが,ニコラにとって初めてパパとママンを離れて過ごす臨海学校での出来事についてのお話しでした.いよいよ最終日ということで,「キャンプ・ブルー」(Camp Bleu)では班ごとに出し物をやります.ニコラたちの班は,現代日本ではほぼ禁止されてしまった人間ピラミッドでした.「勇気だ,勇気を出せ!」の掛け声の下,「ヤマネコの眼」班は立派にやり遂げました.唯,一番上の子が旗を振ったのは良いのですが,↓って重力の法則に反していませんか〜???


 2枚目と3枚目はこのお話しに付されたイラストとしてはやや不自然な気がします.



 このお話では泳ぐ場面は出てこないし,この女の子はお話の後半で登場するニコラの(心の)恋人「マリ−エドヴィージュ」ではないし.う〜ん,謎.

 臨海学校が終わり,ニコラたちが到着すると,駅のホームは迎えに来たパパ・ママンで大混雑.おまけに引率してきてくれた班長さんたちのホイッスルやら,駅員さんの発進の合図やら,ホイッスルを吹くなという注意のホイッスルやらで,大混乱.そんな中,ニコラは涙腺がゆるんだパパとママンと無事再会して家に戻ります.それでまた,新聞読んでくつろいでいるパパの邪魔をするな,一人で遊べ,そんなのひどい!などなど,ニコラ家の日常生活が再び始まります.とにかく一人で遊べないニコラはママンの提案を受けて,隣人であるクルトパイユさんの娘マリ−エドヴィージュと遊ぶことになりました.久しぶりに会った二人はお互いのヴァカンスの話をするのですが・・・.

 ニコラの話としては,


その一,ニコラは「ヤマネコの眼」の班長だった

 →班長って大人じゃないの?というマリ−エドヴィージュのツッコミで一部修正.でも班長さんたちに命令をしていたのはニコラだったことにする.

その二,ニコラは溺れた人を2人も救った.

 →ウソばっかりというマリ−エドヴィージュのツッコミで一部修正.結果,3人に増える.ちなみに人は自分の体重の半分の重さしか支えられないと言われてますよ,一般に.


その三,ニコラは釣り大会で優勝.こ〜んなおっきな魚を釣り上げたと身振り付き.

 →マリ−エドヴィージュはハナから信じず.

その四,ニコラは灯台まで往復.他のメンバーは怖気づいた.

 →そんな嵐の海を子どもに泳がせたりしません.常識的に.


その五,森で迷子になったみんなをニコラが救った.森は野生動物でいっぱい.逃げまとうみんなを救った英雄ニコラ.

 →ヤマネコだか狼だか知りませんが,子ども4人分くらいの大きさに見えますが.マリ−エドヴィージュは口に手を当てて笑っている様子.感心しているようには見えませんな.


 それで最後に,マリ−エドヴィージュのお話.マリ−エドヴィージュは両親と一緒に海辺でヴァカンスを過ごしたそうです.そこで「ジャノ」という,バック転のうまい「友だち」(un petit copain)ができて・・・とそこまで言いかけたところで,昼の食事となります.二人は別れ,ニコラは家に戻り,タンスの戸に足蹴り.


「まったく,もうっ!マリ−エドヴィージュったらデタラメばっかり並べちゃって.そもそも,あいつのヴァカンスなんて,どうでもいいんだ.それにジャノとかいうの,そいつはバカで卑怯もんじゃないか.」(p.156)


 な〜んだ,嫉妬していたんですね.マリ−エドヴィージュが「小さな男の子」(petit copain)と言ったのを,「彼氏」(petit copain)と理解したわけです.それじゃ,タンスを蹴っても仕方ないですね.「デタラメばっかり並べた」自分は棚にあげておくとしても.ニコラは将来,やっぱりニコラのパパのようになるんですね.


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