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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(48)

« La sieste », t.III, pp.118-125.

 なぜ子どもはお昼寝が嫌いなんでしょうね.私のような大人は仕事の合間にお昼寝できないから,お昼寝の夢をみたりするのに.というわけで,今回は「お昼寝」のお話.もちろん,じっとしていられないニコラたちのことですから,お昼寝しないというお話です.

 いつもの前置きは,今回はニコラがパパとママンに宛てた手紙からの抜粋になっていますが,これがもう,悶絶ものの傑作.ニコラは何とかお昼寝しないですむよう,パパとママンに手紙を書いて欲しいとお願いしています.以前に学校の先生に算数の宿題ができなかった理由を書いてもらったのを想い出しているようなのです.曰く,


「僕が学校の先生に持っていった手紙のようにね.パパと僕が二人で算数の問題を解けなかった時のやつさ.」(p.118)


 これが何が面白いかって,宿題ができなかった言い訳を手紙に認めて,1)算数の問題をパパに手伝ってもらったのがバレバレ,2)パパは小学校の算数の問題が解けなかった,3)パパは先生にニコラが宿題をしなかった理由を説明させると,自分が手伝ったこと,かつ解けなかったと思われて恥ずかしいので,テキトーな理由をつけて手紙を書いて持たせた,この3点がたった一文からパッと分かってしまうからなんです.すごい文才です.


 冒頭から脱線してしまいましたが,今回は「お昼寝」.7枚のイラストが散りばめられていますが,1,2枚目は5枚目からの抜粋,3枚目は4枚目からの抜粋ですので,実際には4枚となります.最後の7枚目は小さいイラストで,通常このような場合には1〜3枚目のように大判からの切り抜きが多いのでまずは探してしまいましたが,文章にぴたりと合わせた配置のオリジナルのイラストでした.それは後ほど.

 ニコラ同様,臨海学校へきた子どもたちには「お昼寝」がこの上なく退屈なようです.みんな寝付けないようすがありありと伺えます.


 ただ転がっているだけ.足を組んで,手を頭の後ろに回して,ベッドのヘッドボード・フットボードもまるで牢屋の鉄格子のよう.もちろん全員が不満顔.それでも,寝つくまでの間に班長さんがしてくれるお話はみんな大好きなようで,次のイラストではいつもの楽しそうな顔に戻っていますね.ま,お話を楽しんでいるのは三分の一くらいで,あとはもう寝てしまったか,ベッドの上でふざけているのですがね.いずれにせよ顔は晴れやか.


 ちなみに班長さんが今日してくれた話は昔々のイスラム教国の王様(カリフ)と王様に仕える邪悪な召使い(ヴィジール)の物語でした.フランスの読者ならニヤリとするところ.著者のゴシニーが原作(ジャン・タヴァリ絵)で大ヒットしたマンガ『イズノグード』(Iznogoud)ネタですから.

 それで問題を起こすのはベルタン君.トイレだか何だか,ちょっと外へ出たら卵を見つけて帰ってきたものだから,みんな興味深々,目が冴えてしまいます.班長さんから言われて元の場所に戻しに外出.今度は木から降りれなくなって泣くわ喚くわ.それで隣の小屋まで起こしてしまうわ班長さんと隣の班長さんがケンカを始めるわ.もちろん昼寝時間は台無しです.でも困っているのは,なかなか寝ない子どもたちをようやく寝かしつけた班長さんたちだけ.木の上のベルタンをネタに他の班から揶揄われたニコラは下でケンカを始めます.何と降りれなかったはずのベルタンまで,ケンカを見物するために急いで降りてくる始末.それで班長さん全員が「すっごく怒ったみたいだった」のは当たり前です.

 結局みんなほとんど昼寝をせずに集合の時間となりました.レストゥーフ班長さんはもちろん「嬉しそう」でした.ようやく寝かせずにすみますからね.ニコラの解釈では,「班長さんもやっぱりお昼寝が好きじゃないんだと思うな.」(p.125)だそうです.そりゃ,そうでしょうとも.

 でも一人だけ起きてこなかった昼寝好きがいました.もちろん,ベルタンです.好きというより・・・


「それからさらに大騒ぎになったのは,ベルタンがベットで寝てしまったからなんだ.全然起きようともしないんだよ.」(p.125)


 お疲れね.お昼寝,しても騒ぎ,しなくても大騒ぎ.






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