« La gym », t.III, pp.38-47.
挿絵は計7枚.序文の絵は本巻の表紙を飾っている彩色された絵かも?と思いきや,少し違うかも.題字を飾る体操の先生は3枚目,5枚目の大判の先生と,こちらも少し違うかも.4枚目と6枚目は3枚目からの抜粋で,7枚目の飛び込みはオリジナル.というわけで,本話に付されているのは,1, 2, 3, 5, 7の計5枚です.
まずは1枚目.どうしても構図が同じカラーの表紙と比較してしまいます.私は本話に挿入された白黒の絵の方が好きです.表情がないし,海の水が透明で浅いのがよくわかり,それなのに恐る恐る飛び込もうとしているのが子どもっぽくて可愛らしいから.黒いパンツもグー.
2枚目はもしかしたら,話の最後に登場する2人目の体操の先生かも?初日の先生は,ニコラたちに手を焼いて1日で退散.2人目登場で繰り返しを仄かして話は終わりますが,さて1日もつでしょうか.すでに目を向いてるし.
さて,本話の中心人物たる初日の先生.体操の先生ですから筋肉ムキムキです.それでニコラたちにも新学期には筋肉ムキムキになれるよと約束してコーチを始めます.真面目な先生ですね.序文を読んだ読者は,ニコラたちに先生をつけたのは,1日のたった1時間でも,親が子どもたちから解放されたいだけなのねと,承知しているのですが,そんな親の黒い思惑など,お構いなしに子どもたちを引き受けてくれたのです.良い先生です.でも,あのニコラたちです.学校でも素直に先生方の言うことを聞こうとして全てぶち壊してしまうニコラたちなのです.体操の先生が『プチ・ニコラ』でも事前に読んで,それに気づいていたなら・・・.
3枚目でいよいよ指導が始まりました.まずは腕の上げ下げです.一緒に上げ下げしているのは手前の数人だけ,どこか歩いて行ってしまう子,先生の後ろの監視台に座って見学している子,逆立ちしている子に,仮面ライダーばりに手を左右に振る子.奥の一団は腕を上げすらしておらず,貝殻を見て暫し歓談中.ニコラの新しい友だちであるファブリスが貝殻自慢をするのはもっと後で,先生が徒競走をしようとした時のことなので,2場面が混ざって描かれていますが,それはいつものサンぺの得意技.
5枚目はその徒競走の場面で,文章では実際にヨーイどんで走り始めたのはおバカなマメールだけと書かれていますから,絵もその通り.先生はイライラして頭を叩いて怒っています.
なんでも,ニコラによると,こんなに怒った人を見たのは2回目だそうです.
「それで先生はホイッスルを地面に叩きつけて,何度も何度も足で踏み付けにした.最近こんなふうに真っ赤になって怒ったのを見たのは学校だったよ.クラスで一番で先生のお気に入りのアニャンが算数のテストで一番じゃなくて二番だとわかったときのことさ.」(p.43)
体操の先生はともかく,アニャンは誰かに負けるのが許せないんですね.一番になった人には心から同情します.
最後にファブリスと「プラージュ・ホテルのちび」の小競り合いが,全員入り乱れてのケンカとなって,もう収拾がつきません.そこで先生,最後の手段にでます.
「さぁ,次のゲームだ.みんな,海の方を向くんだ.合図をしたら一斉に海に飛び込むぞ!せいのっ!スタート!」(p.47)
こうして厄介払いした先生はニコラたちが上がってくる前に逃げてしまいます.うまい!
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