« La plage, c'est chouette », t.II, pp.13-20.
前のお話(35)の最後に5枚目なのか,それともこのお話(36)の1枚目なのか,どちらでしょうと書きました.大きなスーツケースを肩に乗せて歩くパパ.大股のせいか,どことなく怒っているようにも見えます.荷物が大きくて怒っているのなら,それならこの絵は荷物を少なくしたいと主張していた前のお話とつながるし,スーツケースの中に塩を入れてしまったために,列車の中で味のしないゆで卵を食べるハメになったから怒っていると考えると,(35)と(36)の間でちょうどいい.はたまた,「バン-レ-メールにつ着いて,ホテル・ボー・リヴァージュに到着しました.すぐそこには海岸が!まさにヴァカンスが始まろうとしています・・・」(p.12)という説明文を読むと,(36)の「浜辺は最高!」という題名のお話の冒頭に相応しいかも.第1巻にはどのお話にもこんな説明文はなかったので,あぁ,本当に悩ましい・・・.
1枚目は鼻をつまんで海に飛び込む少年.たぶんニコラ.お話の中でニコラが海に入るシーンはないのですが,海へドボン!さぁヴァカンスが始まります.
ニコラは早速,浜辺でたくさんの友達を作ります.ブレーズ,フリュクチュウー,マメールにイレネにファブリスにコム,それにイヴ.半分はやっぱり変な名前.みんなヴァカンスにきている,とは限らず,地元の子も混じっているようです.パパも待ちに待ったヴァカンスですから休む気まんまんで,まずは騒々しい子どもたちを遠ざけようとします.
それからパパはあちこち体じゅうにオイルを塗り始めた.それでニコニコしながら,「会社に残っている連中,どうしてるかなぁ.ふふふ!」(« quand je pense aux copains qui sont restés au bureau !»)と言ってたんだ.(p.13)
と言うわけで,太陽の下,浜辺でのんびりヴァカンスをすごす自分と,その間も会社の暗い建物の中で,あくせく働いている同僚たちを比べてニンマリしているわけです.こんな想像するから,あとでしっぺ返しを食らうんです.それは後のお楽しみ.
パパが「遠くへ行って遊んでおいで」というが早いか,イレネのボールが頭に当たり,怒ったパパはボールを海に蹴飛ばしてしまいます.ボールは遠くまで飛び,ニコラは思わず「ナイッスシュー!」.パパを尊敬してますからね.
2枚目はボールが命中して怒る寸前のにこやかなパパの図.
オイルを塗り終わっていたパパにボールが・・・と書いてありましたが,絵では塗っている途中のような.でも,そんな小さな違いはどうでもよくて,サングラスに,開かれた本,それに寝そべるように大きく広げられてバスタオルがヴァカンス気分をうまく表しています.
しかし何事も裏目にでてしまうのがニコラのパパの常.ここでも大きくて強そうなイレネちゃんのお父さんがでてきて,ボールを拾いにゆくハメになります.遠く遠くまで.なんといってもニコラを感心させた黄金の足ですから.「ナイッスシュー!」
ボールを拾いに行ったパパを,ニコラはちゃんと観察しています.「パパは疲れたみたいに見えたよ」.
それでパパは自分が静かに休めるようにと,子どもたちに穴掘り遊びを提案します.あ〜今度は墓「穴」を掘るわけですね.
4枚目の絵はパパが穴を掘っている絵です.
シャベルを後ろに振り上げて砂を飛ばしていますから,穴掘りのはずですが,そんなことは書かれていません.察するに,子どもたちに穴掘りの手本を示しているのでしょう.パパの表情がどうにも険しいのは,早くやってしまって,それから静かに寝そべろうと言う魂胆かもしれません.子どもたちは嬉しそうに見ています.砂浜で穴を掘るなんて,ワクワクしますからね.危ないんですが,ほんとうは.
提案だけして,あとは静かにできると,パパはオイルを買いに行きます.そんなパパを横目に,ママンは「どうしてあなたは,少しも落ち着いていられないの」なんて,不吉な(?)予言じみたことを口にします.そうなんです,パパが落ち着くことはないのです.いえ,正確に言うと,落ち着けることはないのです.パパが帰ってくるなり,浜辺の監視員のおじさんに穴掘りをそそのかしたことを責めら,子どもたちの掘った穴を埋めることに・・・.あぁ,静かな浜辺のヴァカンスなんて夢の夢です.
穴掘りを楽しんだ子どもたちですが,穴埋めには興味が持てずみんな走って逃げてしまいます.それでニコラとパパの二人で穴埋めを始めます.5枚目は穴を埋めているパパの図ですが,実はこれはもう少し後の話です.穴を埋め終わった時に,ニコラがシャベルがない,埋めてしまったかもと泣き出したために,パパはまたぞろ穴を掘ることに.そこへさっきの監視員のおじさんが戻ってきて,パパはまたもや穴を埋めることに.しかもおじさんの監視つき.これが5枚目.これでパパは浜辺ののんびりした時間も台無し,ホテルでの昼食も食べ損ね,疲れてホテルで寝込むことになります.
午後にはお医者さんが部屋に呼ばれ,パパは日焼けのせいで2日間の安静を言い渡されます.
お医者さんが言ってたよ.「こんなになるまで,体にオイルも塗らずに,日光浴をするなんて考えなしもいいところですよ.」(p.18)
6枚目が2日間寝たきりのパパの図.
広々とした居心地の良さそうな豪華なホテルの一室で,パパは日焼けで悶え苦しんでいるでしょう.窓の外には青い海と白い浜辺が見えているはずですが,パパはもちろん立ち上がれません.食事も部屋でサンドウィッチか何かかも.
最後にパパは一言.
「会社に残っている連中,どうしてるかなぁ・・・」.でも今度は,ニコリともせずにそんなことを言っていたんだ.(p.18)
「会社に残っている連中,どうしてるかなぁ」(« quand je pense aux copains qui sont restés au bureau !»)はすでに上で見た(p.13)のセリフと一言一句変わりません.変わったのはパパの状態と表情だけです.同じセリフでも状況が変わり,そして何より笑いながら言うのと,笑いもせずに言うのとでは,意味が全然変わってしまうものなんですね.あぁやっぱりパパは可哀想.
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