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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(35)

更新日:2020年12月21日

« C'est papa qui décide », t.III, pp.5-12.


 あぁ・・・先週は時間がなくて書けなかったのですが,2週間前に書いた(35)の記事を確認して,(36)を書こうとしたら,(35)が消えてしまっていた.残っていたのは,(36)という新しい記事のタイトルのみ.あぁ虚しい,切ない,悲しすぎる.でもネット上で作業していたらそんなことあるよなぁ.とほほ.でもって心機一転.もう一度(35)を書いて,1週間に一度のペースを守るためにも(36)もやってしまおう!でも切なすぎる・・・


  (35)からはフランスで出版されている文庫版の第3巻に入ります.この文庫版にも既刊の書のどこにも,『プチ・ニコラ』のお話が最初に発表された年月日や,雑誌の掲載順などの情報が記されていないのはとにかく悩ましい.いつか,初出の雑誌をしらみつぶしに調べないといけないだろうなぁ.とりあえず,それはそれとして置いておくとして,「プチ・ニコラの夏休み」という題名がついている第2巻は,いわゆるヴァカンス(休暇,休み)のお話から始まります.ヴァカンスというと,一番長い夏休みの代名詞になっていますが,この単語は元々,空いていることという意味です.フランスは9月に学校が始まり,大体6週間授業+2週間の休みのリズムを繰り返しますから,それぞれ2週間の休みは全て「〜のヴァカンス」と呼ばれます.第2巻の終わりが修了式でしたから,第3巻は(繰り返しますが,実際の掲載順は分からないのですが),「大ヴァカンス」(les grandes vacances),すなわち夏休みのお話で幕を開けます.

 もう一つ悩ましいことに,第3巻では,お話本文の前にだいたい10行ほどの説明文がついています.これは雑誌掲載時にもついていたのでしょうか.それとも,単行本化にあたり追加されたのでしょうか.ま,それもともかくとして,このお話の説明文の上下にあるたくさんのケンカの絵は,またもや(25)からの抜粋です.

 そういうわけでこのお話(35)に付された新しい絵は合計4枚,あるいは5枚となります.後ほど説明しますが,5枚目はこのお話の締めくくりに相応しいようにも見えるのですが,先程指摘したように,お話各話の冒頭に説明文がつけられているので,5枚目は次の(36)に付属していると考えた方が良いのかもしれません.

 さて本話の題名は「決めるのはパパ」.どうやらニコラの家ではヴァカンスをどこで過ごすかで,毎年パパとママンが言い争いをするようなのです.毎年といっても,ニコラが覚えている3年間のことなんですが.その度にニコラは泣き出し,ママンは泣いて実家に帰らせていただきますとなるのですが,ところが今年は,早々に行き先を決めたパパが「俺が決める!」と宣言をするとママンはすんなり受け入れました.えっ?そうなの???「パパはひどく驚いた時にするように,目を大きく見開いて」思わず,「本当?いいんだな」と疑いの様子.ともあれ,1枚目は今年こそはと宣言してそれが受け入れられて満面笑みを浮かべたパパの図.





 行き先が決まったら早速パパとニコラは「魚とり競争」の話で盛り上がります.これが2枚目.何でも,パパは若い時には自由遊泳の国際大会でチャンピオンになったことがあるとか.あ〜,ニコラの前でいいかっこしたがる,またいつものやつでしょうね.




 するとすかさず,「地中海はもうずいぶんと魚がいなくなってしまったんですってね,漁師が多すぎて」と,ママンが盛り下げます.「大西洋にはたくさんいるわ」だそうです.むむ? 隣のページにも水中で魚を獲っている絵がありますが,これは2枚目からの抜粋なのでパスしましょう.

 次にはもっていく荷物のことでまたもやパパとママンが衝突.次第にパパの機嫌が悪くなってきました.ニコラも魚がいないところには行きたくないと泣き始めます.そんなニコラをママンは,でも窓から海が見えるからと宥めるのですが,ここでパパが借りる予定の別荘からは海が見えないことが発覚します.これはママンからの攻撃第2打.

 それで砂利浜かと聞いたママンに,パパは大声で,砂浜に決まってるだろ!と叫び返します.白くてサラサラした砂の砂浜を自慢したかったパパですが,またもやそれが裏目にでます.砂浜ならニコラが石を投げる水切りができないからいいわねと,ママン.これが第3打.水切りができないなんてとニコラが一層強く泣き始めました.

3枚目のニコラの言葉が入るはずの吹き出しに何かごちゃごちゃ書いてあって何をいっているのか分からないなと思っていたら,これが実は砂利浜の砂利だったんですね.ニコラが水切りをするための.



 サラサラの白砂で日光にあたりながらのんびりして,横ではニコラが楽しそうにお城を作って・・・なんてパパの妄想が全展開されています.ママンもニコニコしながらそれを聞いていますが,その横ではニコラがムニャムニャ.小石の話をしているようです.

 パパの劣勢をみて,ママンはいよいよ最後の攻撃を仕掛けます.


 「僕は水切りがしたいんだよ!」と,僕は叫んだんだ.

 「来年すればいいじゃない.パパがブルターニュのバン-レ-メール[大西洋岸]に連れて行ってくれたらね.」と,ママンは僕に言った.

 「どこだって?」パパはあんぐりと口を開けて聞き直したんだ.(p.10)

 これで勝負あり.ブルターニュの方に行きたがるニコラを宥めながら,ママンはニコラに,「でもね,ちゃんと言うこと聞かなきゃダメよ.だってパパが決めるんだから.」(p.11)


 パパは顔に手をあて,大きくため息をついて,「いいよもう,わかったわかった.それでどこのホテルなんだ?」(p.11)


 それでママンはすかさずホテルの名を出しますが,実はもう予約済み.勝負あったどころか,何から何までママンは最初からお見通し.見事な戦略でした.おまけに,さっきから話を聞きながら編んでいたセーターはパパ用で,それもブルターニュの夜は少し冷えるからと言われてしまっては,パパは文字通りぐうの音もでなかったでしょうね.

 それでも,決めたのはパパ・・・

4枚目はまだうまく泳げないと言っていたニコラが泳いでいる姿ですから,もう気分はすっかり海と夏休み!



 最後の絵は,このお話の最後の絵なのか,それとも次のお話の1枚目なのか.とりあえず,文章はこんな風に始まっています.


 ニコラのパパが決めたので,あとはもう,家を片づけ,家具を布で覆い,じゅうたんをあげて,カーテンをはずし,荷造りするだけでした.おっと,電車の中で食べるゆで卵とバナナを持って行くのを忘れないようにしなきゃ.(p.12)


 いよいよ出発です.旅行はおおむね無事だったようです.ゆで卵につける塩をスーツケースに入れたまま,荷物車に入れてしまったことを除けば.



 肩に乗せると顔が隠れてしまうような大きなスーツケースです.運ぶのはたぶんパパの役割でしょう.あれだけ荷物は少なくするってパパが主張していたのに.これですね,これ.ゆで卵用のお塩が入っていたスーツケースというのは・・・




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