« Le musée de peintures », t.II, pp.87-93.
「絵画の美術館」.muséeには「美術館」,「博物館」などの意味がありますから,「絵画の」(de peintures)と特化しなくても良さそうなのですが,今回はこれがタイトルです.
題字の上の1枚目は相変わらず,他のお話(「休み時間に僕ら,ケンカする」)からの抜粋(pp.44-45)ですから,ここでは置いておくとして,2枚目は早速美術館の絵となります.
実は学校を出て,道の向かい側に止めてある送迎バスにたどり着くまでに,いつものように一悶着あり,このお話の半分は美術館に入る前の描写なのですが,それも置いておきましょう.アルセストがお菓子を取りに教室に戻り,危うくおいて行かれそうになったり,交通整理をしているおまわりさん(2020年現在では,そんな風景はもうみられません!)がヤケを起こして「白い警棒」を投げ出してしまったりと,いつものゴタゴタぶりが面白おかしく書かれています.そうそう,送迎バスはcarで英語の「車」なのですが,フランス語で「車」はvoitureですから,carは[長距離]バスを表す単語となります.念のため.
美術館にたどり着いて絵画鑑賞が始まった様子が2枚目↑なのですが,絵を描いたこの絵の主題はずばり「お滑り」(« glissades »).よく見ると,長椅子の手前でスケートのように「滑る」子たち,右奥で手すりを「滑り」降りる子,そしてケンカをして長椅子から「滑り」落ちる子たちと,至るところで滑りまくっています.滑らないのは遊びとギャグに無関心な担任の先生と熱心に先生の話に耳を傾けるアニャンだけ.ギリシャ風石像も,そんな風に楽しそうに遊ぶ子供たちを横目にみています.ところで,この石像が左手に持っている棒は上下真っ二つに折れています.なんだか不思議な棒です.石像の足元には二人の子どもが何か壊れたような切片を手にやや深刻な顔月をしています.石像と子どもたち,共通のキーワードは「破壊」?
さて今回の主役はナント言ってもアルセスト.手を繋いでいたニコラの手を振り切っておやつを取りに戻るわ,乗り遅れそうになるわ,まぁ,いろいろやってくれますが,不思議なことに美術館の中では一人静かに鑑賞していました.これが3枚目.
その理由はもちろん,しっかり絵に描かれています.アルセストがみていたのは「たくさんのお魚と,山盛りのビフテキと,いっぱいのフルーツ」(p.92).絵と文はちょっと違うようですが,そんなの大したことではありません.あまりに絵に心を奪われたアルセストは帰りがけに,「たくさんのお魚と,山盛りのビフテキと,いっぱいのフルーツが描かれたこの小さな絵がすっごく気に入ったから脇に抱え」(p.93),ガードマンのおじさんのところに来て価格を尋ねます.文章には「小さな絵」とありますが,そうなのでしょうか?サンぺの絵↑をみてください.というわけで,これを取り外し,脇に抱えて,買い取ろうとするなんて,ものすごい執念です.もちろん,絵に対する執念,ではなくて・・・.
それにしても文章末尾を読むと,どうして先生は絵画が嫌いなのに,絵画鑑賞になんて連れてきたのでしょうね?!?
「そのとき,僕にはわかったよ,なんで先生がクラスで美術館に来てその日一日あまり楽しそうでなかったかってことがね.結局,先生は絵が嫌いなんだよ.」(p.93)
そうかなぁ?ニコラ,本当に理解してる?
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