« On fait un journal », t.II, pp.27-34.
« journal »という単語には,jour「日」という語が入っていますから,日々の記録を記すものということで,個人の記録なら「日記」(journal intime),もっと広く世の中で起きていることなら「新聞」という意味になります.というわけで,メクサンがもらった印刷機を使って,ニコラたちが「新聞をつく」ろう!というお話ですが,ニコラたちがみんなで力を合わせてという時には,最初はともかく,紆余曲折を経て,終着点は・・・となりがちです.そんな予想をしながら読み進めてみましょう.
今回も題名の上に1枚目の絵があります.このケンカの場面からしてすでに穏やかではないですね.
お話を全部読んだ読者はお分かりでしょうが,お話の最後で全員が入り混じって殴り合いになりますから(『プチ・ニコラ』につきものの<カオス>!),この1枚目で争っているのが誰と誰かはにわかに決めがたいのですが,最初に取っ組み合いを始めたのが,高得点をとった自作の作文の掲載を提案したジョアシャンと,そんなもの載せるわけないだろと全否定したリュフスでしたから,この二人としておきましょうか.
ニコラたちは,新聞の題名から議論を始めます.まずは形から,みたいな?
『スッゲーいい』(le Terrible),『勝利』(le Triomphant),『スンバラしい』(le Magnifique),『恐れ知らず』(le Sans-Peur),『ザ・メクサン』(Le Meixent)など,個性的というかなんというか,いろいろな候補が出てきます.『甘美』(La Délicieuse)はもちろん,アルセストの提案です.
2枚目の絵の吹き出しには提案が出ていますが,文と全く重ならないので,実際には文章に書かれているよりも,もっともっと喧々諤々,意見が交わされたんでしょう.
そのうち話題は,題名から写真へ,写真から挿絵へ,掲載文へとどんどん横滑りしてゆきます.この間,アニャンが相変わらずの,アニャンらしい意見を出して,みんなの爆笑(失笑)をかい,泣き出してしまいます.しまいにはとらぬ狸の何とか・・・で,売り方から,売り上げまで話が展開し,それに合わせて小競り合いもポツポツと.そんなバラバラな意見と,チグハグな話の展開を表しているかのようなのが,3枚目の絵.
実際にはメクサンの印刷機に使う活字なのですが,バラバラな活字が意味をなさず,ふわふわと浮かんでいる感じです.活字がちゃんと組まれれば,意味のある文章になるはずなんですが.そんな風になぜ活字が浮遊しているのかと思えば,実際には,ほら,こんなことだったのです.
ふわふわ,浮遊感を出していた活字は,実はケンカが始まり,投げられていたんですね.左端では取っ組み合い,その少し右には,メガネが外れて殴られたアニャンの顔,右端のアルセストだけは平然とエクレア(らしきもの?)を食べて静観しています.
「メクサンは真っ赤になってウードに飛びかかったんだ.僕が活字を拾おうとしたら,メクサンが僕の手を踏んだ.それからウードが僕にちょっと場所を開けてくれたから,僕はメクサンに平手打ちを食らわせた.それからル・ブイヨンさんが来て,僕らを引き離した.」(p.34)
騒然とした,緊張感漲る場面です.
それで結局新聞は作らずじまい.でも最後のニコラの「どうせ,新聞に書けるようなことなんてなかったろうしね.」というのには同意しかねます.
(5枚目(p.36)は2枚目から吹き出し部分を消したものです).
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