« La véillée d'adieu »(la deuxième suite).
臨海学校の最終日.キャンプ・ファイアを囲んで,「お別れの夕べの集い」があります.各班,何か出し物をしなければいけません.ニコラの班「ヤマネコの眼」は班長の提案で,「人間ピラミッド」をすることになりました.そこでまずは浜辺で練習です.
ニコラはいつもの学校の仲間たちを離れ,現地でできた新しい友だちと一緒にいるのですが,にもかかわらず,いつもと同じ問題が浮上し,なかなか意見がまとまらない.「誰がピラミッドを登って旗を振るか.」この手の<権力争い>は『プチ・ニ』につきものです.
ベルタンは「俺が上に登るぜ」,と言った.クレパンはすかさず,「な〜んで,お前なんだよ?」とツッコんだ.「それはな」,とベルタン.「俺じゃないというなら,俺様がお前に張り手をくらわすからだよ.」「やれるもんなら,やってみろ.」,とカリクスト.それで3人がケンカしている間に,ガルベールは,自分が旗を振れないなら,お前らとなんてピラミッドをやらないからな,と言うと,アタナーズは「せいせいすらぁ」と返し,ポーランは,あの,いつも泣いて,パパとママンのところに帰りたいと言うやつだよ,いきなり泣き出し,旗を振らせて貰えないなら,パパとママンのところに帰ると言い始めた.
あぁ,どこかでみたような風景です.もうめちゃくちゃで収拾がつかない.結局旗振りは決まらず,練習もできずにキャンプ場へ帰る時間になりました.
夕食後ラトーさん((47)以降),ジュヌーさん(49)(51),ランベールさんが「目を真っ赤にして,咳き込みながら」火を起こしてくれました.いよいよ本番です.ここでイラスト3/3.
料理係のランベールさんの目に涙が流れているのがリアルです.みんな泣いてますがね.
まず最初は「鷲」班.パンツ一丁,鳥の羽をつけ,斧を手にやってきました.1862年にアメリカ合衆国軍とダコタス族が戦った「ダコタ戦争」での踊りを披露します.(これ,今だったら,差別を読みとられるところかも).これがイラスト2/3です.
そうか,今思いつきました.鉛筆の線が残り,下絵のように見えるのは,水彩で彩色されているからですね.残念ながら日本語版『0巻』は白黒で印刷されているので,それがわかりません.(222)-2も訂正しなくては.
「毛皮猟師」班は歌.みんなが大絶賛の拍手なんて送るもんだから,調子に乗って同じ歌を2回も歌ったそうです.「勇者」班は歴史場面の活人画.つまり,歴史上有名な場面をやってみせるというものです.まずは「アルコレ橋のナポレオン」.フランスの新古典主義の画家であるアントワーヌ−ジャン・グロが1796年に描いたので有名な場面です.次は「シャルル7世の戴冠式」.かの有名なジャンヌ・ダルクが勝利して,ランスで戴冠させた,あれです(1429年).「球戯場の誓い」(1789年,フランス革命の直前に第3身分が集まったやつです).最後は「騎士バイヤールの死」.騎士バイヤール(1476-1524)こと,ピエール・テライユは「恐れ知らず,非の打ち所がなき騎士」(le chevalier sans peur et sans reproche)として有名な人です.ここでちょっとしたミス.地面には死体が2体転がっていたそうです.実はもう一つ,「バスチーユ襲撃」があったそうですが(言わずと知れた,フランス革命の始まりの出来事です.それで今は7月14日(le Quatorze Juillet)は国民の休日),ラトーさんが早々と終了を告げて,これは省略.残念でした.次に「開拓者」班が「アパッチ族の戦いの踊り」を披露しましたが,これ,格好の描写からいって,鷲班と区別がつきません.「ウワオウワオ」の掛け声も同じだし.
そして最後に「ヤマネコの眼」班.
いよいよ,僕ら,「ヤマネコの眼」班の番が.キャンプで1番の僕らは,ピラミッドを汲みに出て行った.そのとき,またもや浜辺でのゴタゴタが始まった.でもね,旗争いなんてあるはずもなかった.だって,旗を持ってくるのを忘れてたんだ.たぶん,浜辺に置いてきちゃったんだと思うよ.班長が僕らの腕をつかんで,落ち着くんだ!だって.そうすれば誰かが背中をよじ登れるからね.でもそうは簡単にいかない.誰も下になりたがらなかったから.そこへ一人よじ登ったのがいた.ベルタンだ.やつはガルベールの肩に足を乗せていたものだから,ガルベールは叫んだ.「おーい,みんな,早く決めようぜ.このバカ野郎を乗せているのはうんざりだ.」それを聞いたベルタンはガルベールの頭をばちんと叩いた.それで面白くなり始めたところで,ラトーさんが立ち上がって言った.「さ,もう遅い.明日は早くに出発しなくちゃね.みんな,キャンプ・ブルーの楽しい想い出を持って帰ってね.じゃあ皆さん,またお目にかかりましょう.」
上手いっ!ラトーさん,タイミング良く,打ち切りました.というわけで,もう一度イラスト1/3をみておきましょう.
一応,ピラミッド型にはなっているみたい.でも,どうみても,芥川龍之介の『蜘蛛の糸』状態.混乱を極めてるって感じ.
それで今朝,バスで駅へ向かう途中,みんなでキャンプ・ファイヤと,それから超楽しかったヴァカンスを想ったんだ.これを読んだきみらのヴァカンスも,僕らのと同じくらい楽しかったらいいね.
バスではみんなで「石ころの唄」を合唱したんだけど,ポーランだけは,泣きじゃくって,キャンプにいたいようってわめいていたよ.
やっぱり,楽しそうだな.そんな子ども時代の想い出があったらいいなぁ.
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