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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(211)-6

« Mes vacances de Pâques »(la suite).


前回までのエピソード

1)復活祭の説明

2)メメの家で過ごす計画に関する,パパとママンの対立

3)車で立ち寄るレストランの話

4)パパが大事にしている,レストランのガイド・ブックの話

5)いざ出発!をお隣のブレデュールさんに知らせに行く場面

6)車中でのパパとママンの対立

7)渋滞を避けようとしたパパの失敗

8)ようやくレストランに到着

9)メメの家に到着

10)復活祭の卵探しについて

11)メメの家で,パパがこき使われること

12)ニコラがお腹を壊し,パパが怪我をすること

13)メメとパパの静かな対立


今回取り上げるエピソード

14)パパが昼寝さえさせてもらえないこと

15)パパが予定を繰り上げて,1日早く帰宅することにする

16)メメの僻み


次回以降のエピソード

17)帰ろうとしたら,車が故障していたこと

18)車の修理ができず,電車で帰ることにした

19)パパは来週末,メメの家に車を車を取りにいかなくてはならない

14)パパが昼寝さえさせてもらえないこと


 ニコラがチョコレートの食べ過ぎでお腹を壊し,仕方ないので昼食後もお昼寝をすることに,という羨ましいような状況にあるのに対し,パパは食後も働きづくめ.今度は立て付けが悪くなった柵の修理です.(p.361)

 次の段落も全く同じ構造です.ニコラがあ〜よく寝た,お腹も治ったと起きてきて,残りのチョコレートの卵を平らげている間,パパは芝刈りをしていました.「パパは何か,低い声でぶつぶつ呟いていたんだけど,なんて言っているのかはよく聞こえなかったよ.」(p.362)これがイラスト7/8です.


 確かに何言っているのか,わかりません.ニコラは「よく聞こえなかったよ」と言っているだけあって,ちゃんと耳を澄ませて,聞こうとしています.

 そしてメメ.メメはニコラが起きてきたのを見てすぐに,お三時に「プレゼント」(surprise)があると言って,台所で鶏肉のクリーム煮を食べさせます.お腹を壊しているからと,ママンからお昼に禁止令が出たやつ・・・.メメも懲りないなぁ.最大限甘やかしてます.イラスト8/8.ニコラ,大喜び.



15)パパが予定を繰り上げて,1日早く帰宅することにする


 食後に庭に出ると,パパがメメに芝刈り終了を知らせます.「これで全部ですか?」と聞くパパに,メメは珍しく,


「まぁ,ちょっとはお休みしてくださいな.婿殿ときたら,始終動き回って.ヴァカンスを満喫しなきゃだめですよ.いらした時より疲れているみたいね.残りの仕事は明日終わらせてくださいな.」(p.362)


 パパ,ショーック・・・.というより,もう限界みたいです.


「そうそう,そのことなんですが,明日はわれわれ,もういないんですよ.今晩,お暇することにしたんです.明後日の朝には会社にいなきゃならんのです.帰りの渋滞は避けたいもんで.」(p.363)


 パパ,反撃に出ました.すると・・・ 


16)メメの僻み


メメはぜんぜん喜ばなかったよ.「こんなに遠くまで旅行したのに,滞在がこれっぽっちなんておかしいじゃないの.ニコラを愛でる時間もほとんどなかったし,もう行っちゃうなんて聞きたくないわっ!」(p.363)


 必死に食い止めようとするメメ.ちょっと可哀想かなというくらい,猛烈に反対しているのですが,メメが必死であれば必死であるほど,パパは心の中で,一矢報いたとほくそ笑んでいますよね.しめしめ,やってやったぞ!と.だから,返事もそっけない.


「残念です!お義母様.でもお暇しなきゃ.」パパは真顔だったよ.(id.)


 「真顔だったよ」は原文では「笑っていなかったよ」(il ne rigolait pas).顔はそうだったのでしょうがね.でも,ニコラはいつものように,表面の観察しかしませんから.

 ママンも介入して,メメを説得しようとします.「おそらく今晩出たほうが賢明ね」と.「おそらく」と言っているところに,パパへの遠慮がこめられています.それを見逃さないのが,ニコラの観察力.


そしたらね,メメが,「はい,はい.そりゃそうよね.誰もこんな哀れな老人のそばになんていたがらないわよ.ここへくるのも,さぞ,大変なお仕事でしたでしょうよ.どうせ私なんて,誰からも愛されてないんですからね.でももう老い先短い老人にもうちょっと優しくしてくれたって,バチは当たんないでしょうがね.」(id.)


 メメがぶつぶつ言えばいうほど,きっとパパは喜んでいるのです.ちょっと意地悪いけど.だから,メメの言葉を聞いて,憐れみを催すどころか,パパはと言えば,


「まあまあ,われわれの方がみんな先に死にますから.」(id.)


 だって.原文はもう少しどぎつくて,「お義母さんはわれわれ全員を埋葬することになるでしょう.」(« vous nous enterrerez tous. »)先の「老い先短い」に,皮肉で返したのです.

 パパの1日と,メメとの確執を想えば,やや残酷でどぎつい表現のように見えても,間違いなく皮肉とか,嫌味と受け取れます.だから面白いのですが.ところが,いつもの通り,見たまま,読んだまま,文字のまましか理解できないKYニコラは,死にまつわる「埋葬」という言葉に反応して,怯えてしまいます.


このパパの言葉にすっごく怖くなって,僕は泣き出しちゃったんだ.そしたら,みんなで慰めてくれたよ.(id.)


 よかったです.ニコラの涙で,ギスギスした場の雰囲気が変わったようです(和んだまでは言えませんが).何とか,今晩出発ということで丸く治りました.

 それでメメはすぐに,早めの夕食の準備を始め,パパは(おそらく上機嫌で?),出発前に寝室のよろい戸の修理に取り掛かりました.未だ働くのか?!とも思いますが,きっとメメを説得したし,これで解放されると,良い気分なのでしょう.

 さて次回は,いよいよ出発!問題がなければ,ですが.(続く)

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