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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(211)-5

« Mes vacances de Pâques »(la suite).

 

前回までのエピソード


1)復活祭の説明

2)メメの家で過ごす計画に関する,パパとママンの対立

3)車で立ち寄るレストランの話

4)パパが大事にしている,レストランのガイド・ブックの話

5)いざ出発!をお隣のブレデュールさんに知らせに行く場面

6)車中でのパパとママンの対立

7)渋滞を避けようとしたパパの失敗

8)ようやくレストランに到着

9)メメの家に到着

10)復活祭の卵探しについて


今回取り上げるエピソード


11)メメの家で,パパがこき使われること

12)ニコラがお腹を壊し,パパが怪我をすること

13)メメとパパの静かな対立


次回以降のエピソード


14)パパが昼寝さえさせてもらえないこと

15)パパが予定を繰り上げて,1日早く帰宅することにする

16)メメの僻み

17)帰ろうとしたら,車が故障していたこと

18)車の修理ができず,電車で帰ることにした

19)パパは来週末,メメの家に車を車を取りにいかなくてはならない


 また続き?!とブツブツつぶやいてばかりもいられません.前進あるのみ.

 前回,メメの家に着いたばかりのニコラは「鶏小屋」(poulailler)に興味津々.一目散にかけてゆきます.そこでメメから復活祭の卵探しについて話を聞いていました.今回もその鶏小屋での話の続きからなのですが,何と鶏小屋では「白ウサギ」を発見し,興奮しています.これは伝統的に大きな家畜小屋のことを鶏小屋と呼んで,そこでウサギも一緒に飼っているのでしょうか.それとも,別にウサギ小屋があったのでしょうか.一応,ウサギは「カゴ」(cages)に入っていたとあるのですが,その辺定かではありません.

 それはともかく,このくだりは大したオチもなさそうで,飛ばそうかと思いましたが,一つ,ちょっとこれはどうかというブラックなジョークが入っていたので,11)の前に書いておきます.

 ニコラはウサギを欲しがりますが,メメは都会ではウサギは幸せに暮らせないと諭し,ニコラもそれを聞いて素直に諦めます.「ウサギさんが不幸になるなんて嫌だからね.」(p.354)なのですが!これで終わらないのが,『プチ・ニ』.やはり一捻りあります.ニコラがこう口にしたその直後,夕食を食べる場面となります.そのメニューは・・・.


それから僕ら,晩御飯を食べたんだ.すっごくおいしかったよ.野菜のスープでしょ,ウサギさんでしょ,それからデザートはクリームだったよ.(id.)


 それってまさか・・・.都会で不幸になるかもしれなかったウサギさん?!?

 しかしそんな疑問はスルー.謎は謎のままです.


11)メメの家で,パパがこき使われること


 朝早くに出て,渋滞に巻き込まれ,レストランでもまともな食事ができなかったニコラたちは当然クタクタのはず.ニコラも旅行の興奮で起きていたかったようですが,「すっごく疲れていた」ので,すぐに寝たそうです.ところがその間,パパはメメに頼まれて(さっそくか!),電気のヒューズを直しに地下に降りて行きます.これがやっと1枚目.イラスト1/8です.


 疲れていると言うのに,早速用事を頼まれて,もう,不機嫌でしかない.ヒューズを直しにゆくのですから,当然地下には灯りがついていない.それでマッチを手に,暗い中階段を降りて行きます.ポケットに片手を突っ込んでいるところもやっぱり不満の表現.足を踏み外したりしなければ良いのですが.でも今回はそんな不吉な予想を裏切ってくれました.パパにこれ以上の不幸がなければいいなと願いつつ読み進めるのですが.

 翌日ニコラは「ニワトリさんとウシさんと犬の歌声」(p.355)で目を覚まします.何と清々しく,優雅な田舎生活!もちろん,「すっごく早い時間」でした.ニコラは後親切にも,「パパとママンを起こしに」行きました.可哀想なパパは「目も開けずに」,


「ニコラ,お願いだから,そっとしておいてくれ.」

 すごく悲しそうな声だったから,パパのね,そう言う声がさ,それでそっとしておいてあげたんだ.(id.)


 そりゃそうでしょう.「悲しそうな声」.

 そんな悲しい場面と無関係なのはメメの台所.ニコラはカフェオレ,タルチーヌ,そして「半熟卵」を平げ,「卵」が出てきたところで,「別の卵」狩りへいざ出陣.

 その間にパパとママンがようやく起きてきます.ニコラが「メメの家の台所で食べる朝食は,なんていい香りがするんだろう」(p.356)なんて感動に浸っているのに対し,降りてきたパパは「部屋着をはおって,髪はボサボサ」でした.

 でもそんなパパに,メメは容赦ありません.


「急いでちょうだい.」ってメメが言ってたよ.「婿どのには木を切って欲しいのよ.それから修理も少々してくださいな.」

「そんな仕事なら,お宅では人を雇っているでしょうが.」とパパが言った.

「アドリアンのこと?そうなんですけどね.でもね,婿どの,あの人に復活祭のさなかに働けなんて,まさか言えないでしょう?アドリアンは家族のところへ,休暇で戻っているのよ.」

「なんて,可哀想なアドリアン!」パパは大きくため息をついて言った.(p.356)


 何でもかんでもパパに押し付けるメメ.休暇中は休むのが当たり前って,ちゃんとわかっています.ただし,それがパパには適用されないだけ.パパは思わず,自分の境遇に引きつけ叫びます.「可哀想なアドリアン!」.休暇中に家族の元でこき使われてと嫌味を漏らしたわけですが,そんなのメメはもちろんスルー.


 いよいよ庭で卵探し.


メメを喜ばせるためにさ,僕は人を喜ばせるのが好きだからね.それで僕は卵を探しているふりをしたんだ.それから,「あ〜!あったあった!」と叫んだよ.そしたらメメが僕を抱きしめたんだ,何度も何度もギュッとね.「なんて賢い子かしら!まさしく私の孫ですよ!おっきなひよこちゃん.」そう,メメが言ってたよ.(id.)


 卵を探す場面はこれで終わりなので(結構呆気ない),イラスト2/8を再掲しておきましょう.

 化かし合いなんて感じではないですが,ニコラはメメを喜ばせようと,真剣に探しているフリをします.でもこれがフリなのか,それともやっぱり無邪気な子どもの振る舞いなのか,判別がつかないところがニコラらしいところです.いずれにせよ,メメは相当な孫煩悩なのは確かです.辛く当たるのはパパにだけ.

 ニコラは収穫した卵を持って家に入り,ママンに見せてから食べ始めます.「ママンに見せる」というのが,子どもなのか,ママンも喜ばせようとのフリなのか,やっぱりわからないところです.その間パパは,鶏小屋のそばで,ノコギリで木を切っていました.これがイラスト6/8です.

部屋着のまま,スリッパを履いていてさ,パパは変な格好をしていたよ.でも,すっごく仕事が面白い!って風だったから,声をかけなかったんだ.(p.358)


 もちろん「すっごく仕事が面白い!」わけがない.顔は真剣そのものですが,経緯を知っている読者には真剣というより,ヤケクソの表情に見えることでしょう.ニコラは事情を知らないしね.そもそもKYだしね.


12)ニコラがお腹を壊し,パパが怪我をすること


 ニコラは庭で見つけた卵を早速食べようとしますが,昼食が食べられるかどうか心配したママンが止めます.しかしメメは「食べさせておあげなさいな.そのくらい平気よ.」(p.358)だそうです.この甘やかしが命取り.ニコラは見つけてきた「卵を全部平らげて」しまいました.そうしたら・・・イラスト4/8参照,説明抜き.


 この様子を見たメメは罪悪感からか,ちょっと慌てて,運動をするよう促しますが,具合は悪くなるばかり.流石に,今度ばかりはママンもニコラを抱えて,ソファーに寝かせます.これもイラスト5/8で説明抜き.


 説明抜きですが,それにしても,一体幾つ食べたんだ?


メメはすっごく心配そうな顔をして,ママンに聞いてたよ.「よく,こんな風になるの?お医者さんを呼んだほうがいいかしら?」ってね.(p.360)


 「よく」はならんでしょう.あんたの家に来たときだけだよ.って,誰かツッコんであげなさい.

 そこへパパが入ってきて,「ヨードチンキとバンドエイド」を要求.「お義母さんのノコギリで,指を3本ほど切ってしまいましてね」(id.)だそうです.「お義母の」と,ちゃんと特定しているところに怨念を感じます.するとメメは,


あらまあ!婿殿」と,メメは笑いながら答えた.「婿どのはなんて不器用なのかしらねぇ.」(id.)


 報われないな.

 パパによると,そんなに寒い地方でもないのに,なんでこんなに薪を作る必要があるのかとのこと.「数ヶ月分」はあるそうです.そんなに働かされていたのか!再度,するとメメは,


「4月には,1糸たりとも脱ぐなかれ(油断大敵)」と,メメ.「それに,こうしておけばアドリアンの仕事が少なくなるでしょ.アドリアンももう歳だからね.可哀想に.」

パパはメメを睨んだかと思うと,直ぐに着替えてきますって言ってたよ.(p.361)


 「4月には,1糸たりとも脱ぐなかれ」(« En avril, ne te découvre pas d'un fil. »).これはフランスの諺で,4月には急に寒気が戻ってきたりするので,油断せず,冬服もしまったりしないでおくほうが良いという意味です.油断大敵とか,備えあれば憂いなしといったところでしょう.それに,メメとしては年老いたアドリアンさんへの気遣いでもありました.優しいなぁ・・・とは絶対にならない!パパは使われ放題ですから.パパも,もう反論の気力すらありません.何を言っても無駄とばかりに,服を着替えに行きました.


 次はお昼.ニコラはその状態でもまだ食べたがりますが,流石にママンが止めました.どうせ「お腹も減ってないし」(p.361).ニコラによると,「こうなったのも,チョコレートの卵がいけなかったんだ,と思うよ.」だそうです.実に鋭い!・・・なんてことは全くなく,ほんとに気づいていないのか,わざと言っているのか?!


 それでもパパの災難はなお続きます.(続く)

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