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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(211)-3

更新日:2022年5月31日

« Mes vacances de Pâques »(la suite).


前回までのエピソード

1)復活祭の説明

2)メメの家で過ごす計画に関する,パパとママンの対立

3)車で立ち寄るレストランの話

4)パパが大事にしている,レストランのガイド・ブックの話

5)いざ出発!をお隣のブレデュールさんに知らせに行く場面

6)車中でのパパとママンの対立


今回取り上げるエピソード

7)渋滞を避けようとしたパパの失敗

8)ようやくレストランに到着

9)メメの家に到着


次回以降のエピソード

10)復活祭の卵探しについて

11)メメの家で,パパがこき使われること

12)ニコラがお腹を壊し,パパが怪我をすること

13)メメとパパの静かな対立

14)パパが昼寝さえさせてもらえないこと

15)パパが予定を繰り上げて,1日早く帰宅することにする

16)メメの僻み

17)帰ろうとしたら,車が故障していたこと

18)車の修理ができず,電車で帰ることにした

19)パパは来週末,メメの家に車を車を取りにいかなくてはならない


 (211)は今回で3回目なんですが,さすがに長い・・・と感じてきました.でも,(211)-1で説明したように,とにかく小ネタの連続なんです.全体はニコラたちがメメの家で復活祭のヴァカンスを過ごすというだけなのですが,それでは全く面白さが伝わらないので仕方ない.全体のストーリー紹介とか,世にいうネタバレなんて,本当に無意味です.だって,一つ一つの細部が面白いのですから.ゆっくり付き合うことにしましょう.


 でもその前に,掲示の関係で,イラスト3/8をどうぞ.以下の本文とは関係ありません.


 デカすぎるだろ,そのチョコ.お腹壊すって.


7)渋滞を避けようとしたパパの失敗


 さて渋滞に巻き込まれてお昼に予定していたレストランへの到着が危うくなったニコラたちは,パパの機転で小道に入ってゆきます.これにはニコラも感心しています.「僕のパパの思いつきは良かったんだけど」(l'idée de mon papa devait être bonne).ん?devait être bonne???文字通り訳すと,「良いはずだった」.だって,「車がいっぱい,僕たちの車についてきたからね.」(p.353).でもここで「良いはずだった」と,推量を表すdevoirが,それも半過去形で書かれているのが気になります.だって,半過去形だと,良いはずだったんだけど,(今は)よくない,というニュアンスが出てしまうからです.つまり,アイデア自体は良かったんだけどね〜・・・というわけです.さてさて結末は?


それに,道が狭くってさ,誰も僕らを追い越せなかったのも良かったんだ.でも,(p.353)


 「でも」?どうなるんでしょうか.


でも,残念なことに,その道の先には侵入禁止の柵が立ててあったんだ.柵の向こうは草原でね,牛が僕らを眺めていたんだ.ハムハム反芻し,メーメー鳴きながらね.(id.)


 パパ,ショーック!当たり前ですが,元来た道を戻らなければなりません.でも後ろには「車がいっぱい」ついてきてるんです.クラクションを鳴らされたことでしょう,怒鳴られたことでしょう.おまけに,「道が狭く・・・誰も僕らを追い越せなかった」と伏線を張っています.つまり,そんな「いっぱい」の車が全て,渋滞した大きな道に,バックで戻らなきゃならないんです.「すっごくすっごく時間がかかったよ」とは,ニコラの観察.まったくの他人事です.そんな様子を見ていた,「おっきな馬に跨ったおじさん」が笑いながら大声で,「3年前に作業車が『この先行き止まり』の看板を倒しちまってから,ずっとこの繰り返しじゃよ」だそうです.早く直せよ!さぞ,パパも忿懣やるかたなかったでしょうねぇ.


8)ようやくレストランに到着


 お昼を予定していたレストランに到着したのが2時45分.パパは負け惜しみからか,「何でもないさ.むしろ良かったじゃないか.この時間ならレストランに客なんていないし,空いてるさ」(id.)とのこと.そりゃそうでしょうが,そううまくいくのでしょうか.

 まずレストランがちゃんと存在した,そして無事に辿り着けた.これだけでも,上出来です.それなのに,パパがそんなこと言うと,必ず不幸を招くことになるはず.


パパが言った通りだったよ.レストランはすきすきだった.でも一つだけ,オーナーが僕らに,「もうお出しできるものが何もなくて」と言ったのは計算外だった.(p.353)


 ですよね〜.やっぱりパパのあては外れるように仕組まれているんです,『プチ・ニ』では.

 そんな状況でママンが「だから言ったでしょう.私がお弁当を用意していれば・・・」と言いかけたところで,パパとママンがケンカを始めます.それを見たオーナーさんが,「何とかしましょう」と言ってくれて.もう,本当に親切です.そうそう,フランスでは本当に困った状況にあると,必ず誰か,助け舟を出してくれるんです.

 そこで何も見逃さないニコラのこと.ちゃんと,オーナーが出してくれた料理を記録しています.「ゆで卵とサンドウィッチとバナナ」でした・・・.ママンが用意しようとしていたのと同じメニューですが,何か?


9)メメの家に到着

 

 昼食後に再度出発しますが,どうやら車が故障しているらしく,車は加熱してきて,「モーターからとてつもなく変な音がしていた」(id.)そうです.それでも,何とか,6時にはメメの家に無事?到着しました.

 心配していたメメは家から飛び出てきて,ニコラを抱きしめ,ママンを抱きしめ,パパに手を差し出しました.心配していても,理性を失ったりはしません.パパにはそれで十分といったところでしょうか.

 もっと早く到着するかと心配していたわというメメに,ママンが説明しますが,ここでメメが一言.


メメはパパに聞いたんだ,「どうして近道をしなかったんだい?」ってね.パパは車から荷物を下ろさなきゃって答えたよ.(p.354)


 パパの疲労と不快感に火を注ぐことならおまかせ.知らずとはいえ,相変わらずメメは適切な皮肉をいう術に長けています.怒鳴り返すわけにもいかないパパは,思わず話題を変えたといったところでしょう.

 到着するとすぐ,ニコラはメメの家の鶏小屋を発見して,手も洗わないうちから,駆け出してゆきます.それをママンが注意すると,メメは「放っておきなさいな.せっかく遊びにきたんだからね」(id.)と,さっそくいつもの甘やかしが始まりました.この孫の猫可愛がりが,後に悲劇を生み出すことに・・・.

 というわけでまたもや次回に続くのですが,次回はようやく季節に因んだ,復活祭ネタに入ります.イラスト2/8の場面です.


 復活祭につきもののチョコレートの卵.大人が庭に隠し,子どもが探す恒例の行事です.でもニコラとメメ,二人の目つきが気になります.卵を探すニコラの眼は,ちょっとずる賢そうに,背後のメメの方に向けられています.メメは口に手をやり,笑いを抑えながら,そんなニコラを眺めている.う〜ん,何だか二人とも,何もかも承知しながら,化かしあいをしているような.さてどういうことなのでしょうか.


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