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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(211)-2

 « Mes vacances de Pâques »(la suite).

 前回,このお話は直線的に進む大筋の他に,複数の小ネタでできていることについて説明しました.小ネタのそれぞれにオチがついているので,細部を楽しみたいと考え,何回かに分けて紹介することにしました.前回は1)〜3)まで書きましたので,今回はその続きです.


前回(211)-1

1)復活祭の説明

2)メメの家で過ごす計画に関する,パパとママンの対立

3)車で立ち寄るレストランの話


今回(211)-2

4)パパが大事にしている,レストランのガイド・ブックの話

5)いざ出発!をお隣のブレデュールさんに知らせに行く場面

6)車中でのパパとママンの対立


7)渋滞を避けようとしたパパの失敗

8)ようやくレストランに到着

9)メメの家に到着

10)復活祭の卵探しについて

11)メメの家で,パパがこき使われること

12)ニコラがお腹を壊し,パパが怪我をすること

13)メメとパパの静かな対立

14)パパが昼寝さえさせてもらえないこと

15)パパが予定を繰り上げて,1日早く帰宅することにする

16)メメの僻み

17)帰ろうとしたら,車が故障していたこと

18)車の修理ができず,電車で帰ることにした

19)パパは来週末,メメの家に車を車を取りにいかなくてはならない


4)パパが大事にしている,レストランのガイド・ブックの話

 

 メメの家に車で行くことにしたパパは,気は進まなくても,それでもやっぱりヴァカンスということで,いつも変わらぬ愛妻弁当(サンドウィッチとゆで卵とバナナ)は持たずに,どこか途中でレストランに寄ることを提案しました.それも,あんまり散財せずにすむところという条件で.

 そこでパパの愛用書である,「小さな赤いガイドブック」の登場です.このガイドブック,何と,パパとママンが結婚して新婚旅行に行くのに購入した「すっごく昔の」本だそうです.ニコラも思わず,「この小さな赤いガイドブック,いつでも良いレストランが見つかるとは限らないんだよね」と,ツッコんでいます.「いつでも〜とは限らない」と書いていますから,パパは旅行に出るときによく参照していることがわかります.しかし,いかんせん「すっごく昔の」本なのです.


それでね,よく,僕らがレストランの前に車をつけると,もうレストランがなくなっていたりして.それで,この前,車で行ったときなんか,レストランがタイヤ工場になっていたんだよ.それで僕ら,工場の前でタイヤがパンクしたみたいに,へたへたっとね.そしたら,工場で働いている人が一目僕らを見ようとみんなで出てきて大笑い.でもパパは一緒に笑うどころじゃなかったよ.だって替えのタイヤも僕らみたいにへたっちゃったからね.(p.351)


 ここで笑いどころは,「僕ら,工場の前でタイヤがパンクしたみたいに,へたへたっとね」(on a crevé devant l'usine)と,最後の「替えのタイヤが僕らみたいにへたっちゃった」(le pneu de rechange était crevé, lui aussi)で同じcrever「パンクする,破裂する,ヘトヘトに疲れる」が使われているところです.つまり「疲れた」と「パンクした」を掛けたジョークですな.面白くないこともないですが,こういう小さなギャグを連発するから,どうも先へ進まなくて,全体の文が重くなるのかも.


5)いざ出発!をお隣のブレデュールさんに知らせに行く場面


 それはともかく,いざ出発!のはずですが,なぜか,パパはお隣のブレデュールさんのところへ知らせにゆきます.パジャマ姿で出てきたブレデュールさんは,「あんまり嬉しそうには見え」ないのですが,ともかくパパの説明を聞いて,「行ってらっしゃい,良い旅を」と,送り出してくれます.ニコラに言わせると,「それでもやっぱり,ブレデュールさんは親切だ」となるのですが,果たしてそうなのか?


僕たちは朝,すっごく早い時間に出発した.でも出発前に,パパはお隣のブレデュールさんのところへ行って,呼び鈴を鳴らしたんだ.それで「俺たち,出かけてくるから.ちょくら浜までひとっ走りしてくるかもな」って知らせたんだ.ブレデュールさんは縞々のパジャマを着ていたよ.あんまり嬉しそうには見えなかったな.何でだろ?それでもやっぱり,ブレデュールさんは親切だ.だって,僕らにお気をつけてって言ってくれたんだ.「お・き・を・つ・け・て!」ってね.(pp.351-352)


 「朝,すっごく早い時間」ですから,ブレデュールさんは間違いなく寝ていました.それで「縞々のパジャマを着ていた」のです.そんな時間に叩き起こされたのですから,「あんまり嬉しそうに」見えなくて当然.それも,自分とは一ミリも関係のない,隣人の旅行計画を聞かされたわけで,機嫌がいいはずもありません.というか,不機嫌そのもの.お前らが海へゆこうがどこへ行こうが知ったことか!何時だと思ってやがる!の気分でしょう.でも,さすがKYニコラ.文字通り,書かれた文字の字面しか理解しません.それでブレデュールさんは「親切だ」,だって「お気をつけて」なんて,道中を気遣ってくれたんだから,というわけです.そりゃ,気遣いじゃなくて,嫌味なんだって.


6)車中でのパパとママンの対立


 こうしてブレデュールさんに嫌がらせをした後,3人は出発します.ここからがまた,ニコラの観察とツッコミが冴えてます.前回1)で,メメのところに行きたくないパパが「だって途中の道では時速90キロ以上出したら捕まるし,それじゃああんまり面白くないし」と言っていたのをしっかり覚えていて,「途中,時速90キロなんて出してる人は誰もいなかったよ.だって,すっごく渋滞していたからね」とツッコんでいます.捕まる心配がなくってよかったねと言わんばかりですが,実際にはパパが行きたくなくて数え上げていたのが,まるで無用な口実だったことを暴いちゃってるわけです.

 それはともかく,「ヴァカンスにでた人たちは全然嬉しそうじゃなかった」(p.352)と,今度はさりげなく,パパだけでなくヴァカンスに欣喜雀躍,大騒ぎするフランス人に嫌味を言っています.


「あぁ,もうっ!もう渋滞だ!」と,パパ.

「これじゃあ,浜までひとっ走りできそうにないね.」と,僕.

「浜って何のこと?」と,ママン.

「しっ!ニコラ,黙りなさい!」と,パパが大声を上げた.(id.)


 やっぱり「浜まで」一走りなんて,大嘘でした.ブレデュールさんの前で,見栄を張りたかっただけのようです.ニコラのツッコミでそれがバレそうになったものですから,パパはニコラを黙らせようと怒鳴ります.こうしてニコラは泣き出し,ママンからは注意され,パパのイライラは募るばかり.ママンが「渋滞は私のせいじゃないでしょ!」というと,パパは思わず嫌味で返してしまいます.


メメのところへ行くなんて考えたのは一体誰だ?俺か?とパパが聞いていたから,僕が「ううん,パパじゃなくって,ママンだよ」って返したんだ.そしたら今度はママンが「しっ!ニコラ,黙りなさい!」ってママンが怒鳴った.(id.)


 大人は都合の悪いことがあると,すぐ怒鳴って,子どもを黙らせようとする.パパだけじゃなくて,ママンも大人なんです.それで二人とも,判で押したように全く同じ言葉で,ニコラを叱りつけます.まったく・・・大人は勝手だ.それとも,ニコラ,空気読めよ!ってことなんでしょうか.

 次いで,車中,パパとママンはレストランの心配をしますが,パパは「急がなくても,ちょうどお昼に」レストランにつけるよう「計算したんだ」と言いますが,パパがこう言うときにはまず失敗の予告と受け取って良いでしょう.顛末は後のお楽しみに.

 やっぱり今回もイラストにはたどり着けませんでした.抜粋を除けば,最初のイラストは,あと2ページ先.やっぱりチラ見しておくと,1/8はこんな感じです.


 マッチの火を手に,不機嫌そうな顔をしたパパが,やはり不満を表すかのようにもう一方の手をポケットに突っ込み,階段を降りています.マッチの火で照らされているのですから,当然停電か何かでしょう.こんなときには,よくヒューズがとんで,暗いなか,地下にブレーカーを上げに降りてゆく場面が何回か出てきていますから,きっとそれです.(116)で紹介したマンガ版p.15でのパパの災難,(168)の忙しいノエルなどのお話でした.それでイラストの左側の上方にブレーカーが描かれているのですね.また怪我なんかしないと良いのですが.

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