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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(201)

« La neige », HIPN., vol.2, pp.274-281.

 「雪」とくれば,雪だるまに雪合戦.とにかく,寒いし濡れるのに,なぜか子どもは雪に萌えます.でも,テンション上がるのは理解できます.白いし,触れるし.今回は授業中に雪が降ってきたので,学校帰りに雪合戦して,それから家に着いたら雪だるまを作ろうとして,ママンとパパに止められて,次の日の朝には雪がなくなっていたので悔しい,でも,パパからは代わりに電気自動車をもらい,ママンにはチョコレートケーキを作ってもらってラッキー!というお話です.不思議なことに,よくある失敗談や皮肉を含んだオチがない・・・.それはちょっと寂しいものです.ふんわか,ほっこりが『プチ・ニ』の持ち味じゃない!と叫びたいくらい.でも,まぁ,これも実際に一つのお話なんですから,どうしようもない.行きますか.

 授業中.担任の先生が黒板に算数の問題を書いている間,ニコラたちはメモを回したり,合図しあったり,とにかく気づかれないように遊んでいます.その時,外で雪が降ってきました.イラスト1/2です.

 何をしていても,皆が一斉に窓の外を見てしまいます.雪にはそのくらいの魅力がある.それはともかく,右上に吊り下がっている電灯の古風なこと.今はほとんどの学校が蛍光灯でしょうが,私はどうも,蛍光灯の色が好きになれません.多少暗くても,こういう電灯の方がいいなぁ.それから窓のノブ.2つ窓がありますが,両方とも,下から三分の一くらいのところに,アクサン・テギュのように,右上から左下に傾いたノブがついています.そのずっと上方と,下方の枠外に何か突起物がついているでしょう?ノブをひねると,その突起物のところに棒が入り閉まる.反対方向にひねると,棒が外れて,重なってしまっていた窓が開く仕組みです.ちょっとわかりにくいですが.日本ではほとんど見ません.かつてはあったのでしょうか.私は日本でよく見るサッシよりも,このレトロな木枠の窓が好きです.ペンキで色もつけてあって.それからニコラたちが座っている勉強机.ちゃんとインクを入れるインク壺も一人一人の席についています.座ると少し手前に傾いていて,恐らくは机が蓋にもなっていて,持ち上げて荷物を入れられる.便利でしょうねぇ.

 ニコラたちが雪を見てテンションが上がっていると,突如として担任の先生が振り向いて起こり始めますが,窓の外を見て思わず,「あら!雪が降っているわ!」と漏らし,お咎めなし.クロテール以外,みんなが窓に駆け寄って一緒に外を眺めました.

 さて学校帰り.学校を出たところで雪合戦が始まりました.イラスト2/2です.


 まぁ,そうなりますわな.でも,交通整理をしていたおまわりさんに言われて,戦い終了.帰路に着きます.ちなみに,ニコラたちに,「おいっ!いつ終わるんだ,そのお遊びは!俺は急いでるんだ!」(p.277)と怒鳴った車の運転手さんは,脇に寄せられて,色々聞かれていたみたいです.急いでるって言っていたのにかわいそうに.でも,余裕がなければいけません.ちなみに,このおまわりさんは,リュフュスのお父さん(彼もおまわりさん)のお友だちでした.地域社会ですな.みんな仲良くしましょう.

 ニコラが家について,さらに雪だるまを作ろうとすると,ママンから止められます.


ママンが手を拭き拭き,台所から出てきた.ママンは僕を見て,何度も叫び声をあげたよ.

「ニコラ!なんて格好なの!びしょ濡れじゃないの.まったく・・・あなたといると,私の方が気管支炎になっちゃうわ.直ぐに着替えてらっしゃい.」(p.280)


 ママンも可哀想に.気管支炎になる程,いつもギャーギャーお小言いわなくても良さそうなものですが.

 仕方なく,ニコラは部屋に入って着替えて,宿題を済ませてから,走って降りてきます.ちなみに宿題の問題を解いた結果,電車は時速327,432.26キロメートルで走ることができたそうです.未来の電車ですか.「でも,所詮,問題だからね.何でもありなんだよ.」と,ニコラはちゃんとわかっています.とはいえ,その時速とは,「何でもあり」にもほどがあるかと.

 それで外に出ようとしたところ,やっぱりママンに止められて,ついでに帰ってきたパパにも止められて,明日の朝,パパと一緒に出かける前に庭で雪合戦をすることを約束して,ようやく収まります.


「絶対?約束してくれる?」と,僕.

「約束する,約束する.」と,パパ.

「約束するわ,約束するわ,約束するわ」と,ママン.

僕らみんなで笑って,夕食にしたんだ.(p.281)


 ところ,が!翌日は晴れていて,雪が全くなくなっていました.私はパパとママンは,当然そんなことは計算に入れていたのだと思っていましたが,ニコラが降りてきた時に,「話をやめて,僕の方へ目をやり,すっごく困ったような顔をしていた」(id.)そうですから,本当に雪合戦をするつもりだったんですね.その場しのぎの約束じゃなかった.なかなかえらいです.

 

 お昼ご飯で,ママンはデザートにチョコレートケーキを作ってくれたんだ.それからパパが全自動で動く電気自動車を持って帰ってきたんだよ.(id.)


 ここでニコラを策士と見るか(シメシメ♪),本当に落ち込んでいたので,ママンとパパが慰めてくれて優しーのか,どちらでも良いのですが,ともかく,いつもの,ほんのちょっと意地悪で皮肉のこもったオチがないのは,ちと寂しい・・・.

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