« M. Bordenave n'aime pas le soleil », t.I, pp.142-148.
『プチ・ニコラ』で生徒の監視役といえば,通称「ル・ブイヨン」ことドュボンさん.のはずなのですが,本話ではボルドナーヴさんという別の見張り役が登場します.その「ボルドナーヴさんは太陽がお嫌い」?!一体全体,どこからどうしてこんな題名がついたのでしょうか.
まずは冒頭を読んでみましょう.
「僕ね,ボルドナーヴさんがなんで晴れた日は嫌だなんていうのか,僕にはわからないんだ.まったくもうっ,雨はヤじゃない,ねぇ?・・・雨が降ると学校では休み時間がなくなるんだ.だって,校庭に出してもらえない.だからね,僕にはボルドナーヴさんの言うことがよくわからないんだけど.だって,ボルドナーヴさんだって晴れたら校庭が使えるし,休み時間に僕らの見張りをするんだから.」(p.142)
題名の「太陽」は「晴れ」ていることのたとえで,晴れた日に授業の合間の休み時間に校庭で遊ぶことを楽しみにしているニコラからすれば,太陽=晴れの日=休み時間を毛嫌いするボルドナーヴさんなんてわけ分かんないと言うのです.ボルドナーヴさんだって晴れているからこそ,校庭に出て僕らの見張り(=仕事)ができるのにね,というのがニコラの言い分でしょう.
もちろん,もうすでにお話を読んだ読者は,休み時間にリュフュスとウードが殴り合いをし,そのせいでアルセストがサンドウィッチを落とて食べられなくなったと不満をぶちかまし,アニャンが泣き叫び,ビー玉をめぐってメクサンとジョアシャンが言い争い,ニコラがボルドナーヴさんの頭にボールをぶつけ,アニャンが告げ口し,ジョフロワがアニャンをこずき,ウードが割り込んできて口ケンカ,上級生とリュフュスが取っ組み合い・・・そんな様子を見れば,その全てに対応しなきゃならないボルドナーヴさんが,今日もまた晴れかぁ・・・とか,太陽が出なければいいのになぁとため息をつく気持ちはよく分かるはず.
短い休憩時間中のそんなこんなのすべてを絵に表現することなんて到底できません.しかし,右と左の3階建ての建物から,休み時間を楽しみにしている生徒がウジャウジャと出てくる様子.それも,らせん階段を3階から1階へぐるぐると回りながら,列をなしてワンサカ降りてくる様子から,走って出てくる生徒みんなが,この狭い校庭ですしずめ状態になって,騒ぎ,はしゃぎ,しまいに収拾がつかなくなるカオスな状況が目に浮かぶようです.太陽はさんさんと輝き,ニコラたちは大喜び.そんな中独り,憎むようにあるいは諦めたように太陽を見上げるボルドナーヴさんの姿に哀愁が漂います.
「ル・ブイヨンが声をかけました.
−やぁ,ボルドナーヴ,何かとんでもないことが起きなかったかい?
ボルドナーヴさんが答えました.
−ま,いつも通りだよ.どうしようもないがね,雨が降りますようにって祈ってるんだ.毎朝起きるだろ,それで快晴だよ.それでもう,この世の終わりの気分さ.
ほんとうに,僕にはボルドナーヴさんのことが理解できないや.太陽が嫌いだなんて口にするなんて.」(p.148)
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