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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(17)

更新日:2020年9月22日

«Je fréquente Agnan », t.I, pp.134-141.


fréquenterという動詞は,目的語に場所がくれば「〜によく行く,頻繁に通う」,人がくれば「〜とつき合う,仲良くする,交際する」の意味となります.それで場所でも人でも,何回も行ったり,会ったりしてその頻度が高くなるから「仲良く」するという意味になるのでしょうね.元々のラテン語では農業の用語で,「ぎっしりついた,豊富な」という意味だったそうです.それで,ニコラがあまり好きではないと公言しているクラスメートのアニャンと「仲良くつき合う」という題名には,おやっ?と驚いてしまいます.

 それにしても,このお話の絵の挿入の位置,印刷と版組み優先ってことだと思いますが,う〜ん・・・なぜ最初にこの絵?!?


 ママンの言いつけで,アニャンの家で二人で遊ぶことになったニコラは,いつものそしらぬ無邪気さでいろいろ壊してしまいます.この1枚目の絵はその最後の段階.お風呂でアニャンの時計を壊し,部屋で地球儀を壊し,理科の実験キットで部屋,アニャンのメガネ,服・・・を真っ黒にしてしまうのです.最後に置かれたこの実験キットでの破壊の後で,アニャンのママンが入ってきて,アニャンは引っ叩かれ,ニコラは追い返されます.だからこの絵は最後がいいなぁ.

 2枚目3枚目は見た目通り.

 地球儀で遊ぶ前と遊んだ後.ちょっと芸が細かいなと感心するのは,遊んだ後の絵でアニャンがメガネに手をおいているところ.メガネを掛け直した仕草であるのがよくわかります.つまり,アニャンは遊ぶときに壊れないようにと一旦メガネを外しました.でも,メガネがないとよく見えない.それで地球儀を受け取り損ねて鏡を壊してしまう.それだから,その大きな音を聞いて,「どれどれ」とみるには掛け直さねばなりませんでした.そんなこんなを,メガネに手をやる動作で表しているんですから,本当に見事ですよね.

 その後は1枚目にもどり,ニコラが何かを調合すると,部屋はモクモク,メガネはくもり,アニャンのママンが駆け込んでくるというわけです.

 でも,お話の終わりは,やはりいつもの『プチ・ニコラ』らしく,率直で無邪気なイヤミで締め括られます.

 

 「けっきょく,いつもだけど,ママンがいうことは正しかったんだ.だって僕,アニャンと本当に面白おかしく遊んだんだから.僕はね,また戻ってアニャンと遊んだって良かったんだけど,今度はどうやらアニャンのママンが,アニャンが僕と仲良くするのが嫌らしいんだ.

 どうでもいいけど,ママンたちは結局のところどうしたいのか,ちゃんとわかって欲しいんだよね.もう誰と仲良くしていいのかわからなくなっちゃったよ.」(p.141)




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