« Surprise ! », HIPN., vol.1, pp.520-525.
surpriseは動詞surprendre「驚かす,不意をつく」の名詞形で,(120)で書いたように「驚き」の意味から,「思いがけないプレゼント」ともなります.それで今回の「驚き」は何だったかというと,マチルドおばさん一家が突然訪ねてきたことです.雨の降る,日曜日の午後.突然の来客に,ニコラ一家はびっくり仰天.まさにさ〜ぷらいず大成功!といったところでしょう.サプライズする方はともかく,された方が喜んでいるかどうかは別として・・・.招かれざる客なんて言葉もありますから.
ところで本文中に説明はないのですが,今回登場するマチルドおばさん(tante Mathilde),カジミールおじさん(oncle Casimir),そして従兄弟のエロワ(mon cousin Eloi)は,
「親族の食事会」(115)でも出てきましたが,パパとママン,どちらの親戚かは明示されていません.でも,今回のお話の雰囲気からすると,「話の止まらない」マチルドおばさんがママンのお姉さんか妹のようです.一応,エロワはニコラより少し年上と書いてありますから,お姉さんの可能性が高いと思います.
雨降りで,ママンがおやつの「りんごのタルト」を準備し,パパとニコラがトランプで遊んでいると,ジャジャーン!まさにさ〜ぷらいず.マチルドおばさん一家が訪れます.ママンはお愛想笑いを浮かべ,でもお客様をお迎えできるような服じゃないとか何とかモゴモゴ言っているのですが,それに対しておばさんは,「あらあらまあまあ,正式訪問じゃないのよ.サプライズなんだから!どうぞお構いなく.カジミールが口癖のように言うのよ,家族なら遠慮は無用ってね.・・・あらまぁニコラじゃないの.大きくなったわねぇ.こっちへいらっしゃい.おばさん抱きしめちゃう.」(p.520)相変わらずの饒舌ぶりです.そしてここで『プチ・ニコ』の法則を想い出してください,調子のいい人は罰せられる,それもほぼ確実に自分の言葉によって・・・.おばさん,要注意です.イラスト1/2はおばさん一家登場の場面です.
おばさんは「さ〜ぷらいず〜!」とばかりに両手を挙げています.おじさんとエロワもニンマリ笑いを浮かべています.それにしてもよく似ています.それに対して,ニコラ一家は3人とも一応「久しぶり〜」とばかりに手を振っていますが,どうも3人とも口元が歪んでいます.全然嬉しそうじゃないし.
それにしてもおばさんの押しの強さは見事なものです.いきなり来たかと思えば,ママンに「それじゃあ,まぁ,一緒にお三時でも」と言われると,遠慮もなしに捲し立てます.「あるものでいいのよ.何でもいいんだから.家のチビにはショコラを一杯,カジミールにはコーヒーを一杯,あ,紅茶用のカップでね.それに私にはほんの少しミルクティーがあればいいんだから.本当に何でもいいのよ.それに男どもにはお喋りさせておいて,私たちはお台所にいきましょうか.あなた顔色いいわねぇ.太るのが体にいいのね.でも気をつけなきゃ.」(pp.520-521)失礼だし.もう止まりません.
予想通り,おばさんは喋りっぱなしだわ,パパとカジミールおじさんは話すことがなくて,適当に相槌を打つだけだわ,ニコラがあんまり好きじゃないエロワは傍若無人にわがまま放題.ランプは落としてひん曲げてしまうし.それにしても,エロワの悪さに,マチルドおばさんはたいした注意もしないし,謝りもしません.もう,ほんとにひどい.
エロワが飛行機の真似をしていてずっこけて,お腹を打って泣き出した時は,もう腹に据えかねていたパパは,「飛行機は泣かないな.」(p.525)なんて,サラッと嫌味を言いますが,これは許されます.パパ,今回は言ってもいいと思うですよ.ところがパパの一言がよほど気に入らなかったらしく,「マチルドおばさんは大きく目をひん剥いてキッとパパを睨み,エロワを膝に乗せてヨシヨシしてから抱きしめて」,それでお暇しましょうと言うのです.子どもを撫でる前に謝らせろっての💢!
帰り際おばさんは「とってもよござんした.あなたたちもね,いつかサプライズしてちょうだいね」(p.525)だって.誰がそんなことするかー!と,私は心の中で叫びました.イラストの2/2を見ても,3人とも同じ気持ちだったことでしょう.
パパは,あ〜あ,やっと帰ってくれたよとばかり目を覆い,ままは扉の影で怖い目で見送り,ニコラは舌まで出しています.それにしても,去ってゆく3人の清々しい様子ったら.暇な日曜の午後がつぶせてよかった的な不敵な笑いを浮かべています.
でも,やられたらやり返す.私なら,心の中であるいは家族内でぶつぶつ文句垂れるだけだったでしょうが,ここでパパが即座に反撃に出たのは見事と言う他ありません.
ママンは大きくため息をつき,夕食の準備をするわねと言った.するとパパが言ったんだ.「冗談じゃない!外出用に服を着るんだ.ほらっ,ニコラにも服を着せて.俺はこれから髭を剃るからな.」「あなた,レストランに連れて行ってくださるの?」と,ママンが聞いた.「サプライズだ!」そう言ったパパは,マチルドおばさんとカジミールおじさんの家の夕食に僕らを連れて行ってくれたんだ.」(p.525)
やったれ,やったれ!
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