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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(151)

« Au chocolat et à la fraise », HIPN., vol.1, pp.499-505.

 「チョコにイチゴに」って,もちろん,お菓子の話です.チョコレート味と苺味のアイスクリームと友情を天秤にかけられず,ニコラが自滅してしまうお話.いえ,読めばわかりますが,どちらも手に入れたくて努力したのですが,それも虚しく,アイスクリームは手に入らなさそうという暗い余韻を残しています.

 家に友だちを呼んで遊びたい・・・.子どもなら誰でもが思うことではないでしょうか.ところが子どもは何か壊したり,家具を汚したりするから,親はよその子にはなるべく来てほしくない・・・.これは親なら,というより,大人なら誰しもが思うところでは?でも,よその子を受け入れるのは嫌でも,我が子がよその家で遊ぶのは大歓迎.そんな都合の良い大人はたくさんいそうです.つまりめんどくいから来てほしくない,うっとおしいからよそで遊んでくれ,という感じでしょうか.

 そこでニコラが友だちを呼びたいと言っても,パパもママンもすぐにはOKしてくれません.それでニコラがごねていると,条件付きで招待しても良いことになりました.「お家の中でちょっとでも何か壊したら,罰を与えるわよ.でも,何にもなければ,アイスクリームを食べに連れて行ってやろう.どうだ?」(パパ)「チョコレート味とイチゴ味の?」(ニコラ)「そうだ」(パパ)「じゃあ,いいよ.」(ニコラ)(p.499)

 自分の要求(友だちの招待)を認めさせたばかりか,うまくいけばアイスクリームまでもらえる.流石にニコラ,駆け引き上手です.でもこれが受難の始まり.イラスト1/3で,いよいよ友だちたちがやってきます.


 いつものメンバーが家に入ろうとすると,ニコラは駆け寄って制止します.それも大声を出すなと言っているようです.そんなの条件になかったのですが,そこはそれ,気を利かせたというところでしょう.それとも,大声を張り上げていると加熱して,すぐに何か壊してしまうとか.やりそうですが.「ちょっとでも何か壊したら」が効いているのですね.

 よく見ると,ウードやアルセストたちの足は未だ家の床を踏んでいません.もしかしたら,文字通り一歩も入れないようにしたのかも.

 ニコラは庭で遊ぶことを提案.しかし,芝に入らせないようにすると,玄関に通じる狭い小道しかない.それで一列に並んで「汽車ごっこ」をするのですが,行ったり来たりするだけで,横に逸れることもできず,これがどうにも面白くない.しかも雨が降ってきました.

 ニコラの細心の注意など素知らぬ顔のママンが家に入るように促し,部屋で遊ぶことになります.


 これだけ大雨が降っているのに,中に入れようとせず阻止するニコラはなかなか立派です.でももっと立派なのは,全員が不満顔なのに,大雨の中一人タルチーヌを頬張っているアルセスト.大人物です.

 家に入っても,「パパの言ったことを思い出すのよ.」(p.503)と釘を刺されたニコラは,読書を提案しますが,それじゃ何のために遊びにきたのかわからないとばかりに,メクサンたちがブーブー言い始めます.何とか「チョコレート味とイチゴ味のアイスクリーム」を死守しようと,ニコラはかつてないほどの妥協案を示します.


「なあ,おい,みんな.頼むよ.大人しくしてさえしてくれたら,お小遣いがある時には毎回,学校帰りに板チョコ買ってさ,ここにいる全員に分けてやるからさ.」こう僕が提案すると,みんないいやつだからさ,よしと言ってくれたんだ.(p.504)



 みんな,爆発寸前な感じです.腕を組んで,顔を顰め,それでもニコラの大義に月あってくれるのですから,やっぱりいい奴らです.

 それでこのまま終わらないから『プチ・ニコラ』です.雨が止んだところで,みんなが帰ると言い出し,ニコラはみんなが家を出るまでしっかり監視してお引き取り願いました.それで大成功!大急ぎでママンにみんなが帰ったと伝えに走ってゆきます.


でも玄関のドアをきちんと閉めてなかったから風が吹き抜けてね,台所の窓が急に乱暴に閉ったんだ.バタン!ガシャン.

 それで台所の窓ガラスがね,割れちゃったんだよ〜・・・.(p.505)


 1日の努力が水の泡・・・でも,友情は保てましたから,虻蜂取らずとは言えません.きっと,アイスクリームも食べに連れて行ってもらえます.人知れぬ努力は誰かが見ていて報われるものですから.

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