« Je suis malade », t.1, pp.118-125.
題名の「僕,病気になったんだ」(ニコラ)が,終わりには「私,病気になったんです」(ママン)と変化するお話です.3つの小話それぞれがいわば<ニコラらしい>逸話になっていて面白いし,だんだんにママンの様子が怪しくなってゆくのもスリリングな,とても良くできたお話だと思います.
原書文庫版のページを開くと右のページに,ベットに入って楽しそうな(?)ニコラの絵が目に入ります.左ページの「僕,病気になったんだ」が想像させる悲壮感とは真逆の設定です.
それにしても,きったない部屋ですねぇ・・・.本は開いて読み散らし,おもちゃは床に置きっぱなし,引き出しからは服が出ているし,器が椅子の上に置かれています.はっきりとはわからないですが,これなら食べた後のチョコレートの紙屑なんかも出てきそう.
「昨日は超調子よかったんだ.だってね,カラメルにアメにケーキにフライドポテトにアイスクリームをたっぷり食べたんだから.それなのに,夜になったらどういうわけか,ほら,こんなふうに病気になっちゃったんだ.」(p.118)
ニコラは気分が悪くなった原因が,本当に分からないようですが,読者には一読瞭然で,言うまでもないですよね.
とは言いつつ,1枚目の絵ではニコラは満面の笑みを浮かべて,どこか楽しげ.とはいえ,外で友だちと遊ぶのが何より好きなニコラにしてみれば,家の中で独り本を読んでいるなんてのはやはり苦痛でしょう.
ニコラは本を開いて読み始めますが,そこへアルセストがお見舞いにきます.チョコレートを脇に抱えて.もちろん,アルセストは無闇に食べ物を人にあげたりしません.お見舞いに持ってきた,自分用のチョコレートです.それで,ママンの言いつけでチョコレートを食べられないニコラの目の前で,アルセストはパクパク食べ始めます.1個口に放り込み,2個目,3個目・・・と次第にニコラは耐えられなくなって,「僕にくれないか?」と頼むのですが,それは無駄というもの.またぞろ,アルセストは口に放り込み始めます.すると箱の中のチョコレートがだんだん減り,アルセストの座っているあたりには紙屑が増えてゆき,ニコラのこぶしがだんだんと硬くなっていきます.
そしてついに我慢の限界.ドッカーン・・・二人はケンカをし,ママンはアルセストを追い返してしまいます.ニコラは残念そう.だって,「僕はアルセストが大好きなんだ,友だちなんだ」から.ケンカでニコラも部屋もチョコレートまみれになりました.さ,お風呂お風呂.
次にニコラはあんまりお腹が減ったものですから,食事制限にもかかわらず,冷蔵庫から引っ張り出して食べてしまいます.
「鳥のもも肉,冷たくても美味しいよね.それからクリームを塗ったケーキと牛乳瓶を僕は両脇に抱えた.」(p.123)
そこへママンの叫び声.計画失敗・・・食べ物でベトベトになったから,さ,お風呂お風呂.
次はパパの部屋から使っていない万年筆と書類の裏紙を使って独りお絵かきの時間です.使っていない万年筆? 使われていないのには理由がありますよね.もちろんインク漏れ.書類の裏紙? ニコラには書類の重要性の判断ができませんよね.もちろん重要書類・・・というわけで,インクでべたべたになったニコラはまたもやお風呂へ.
そんな3つのエピソードが続いた後,夜にお医者さんの訪問があります.
直ったニコラは嬉しそう.直った様子を伺うお医者さんもやはり嬉しそう.そんな二人を心配そうに見つめるママン.
「でもね,お家で病気になるなんて本当についてないんだ.特に今日はね.お医者さんが来てママンの顔色が悪いって.それですぐに横になって食事制限しなくては,だって.」(p.125)
冒頭のニコラの病気の原因が分かった読者には,ママンの病気の原因もすぐに分かりますよね.もちろん,過労と心労です.ママンはたいへん.
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