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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(148)

« Les merveilles de la nature », HIPN, vol.1, pp.472-479.

 題名にあるmerveilleという語は「驚異,驚くような素晴らしいもの」の意味の名詞なのですが,本話を読むと,隣人のブレデュールさんは,自然の中にある思わず驚いてしまうもの,例えば,どぎつい色のキノコとか,変わった形をした動物などだけを指しているわけではなさそうで,道具もなしに火を付ける術などもmerveillesに含まれているようです.なるほど,それでブレデュールさんはこんな,サバイバルナイフを腰に刺したボーイスカウトのような格好をしているのですね.


 羽のついた帽子,チェックのシャツ,半ズボンに,厚手の靴下と頑丈なブーツ.まさにボーイスカウトか,アウトドア・ショップのショーウィンドーで見かけるスタイルです.颯爽としています.が,この姿を見て,ニコラのパパは大笑い.しゃっくりまで止まりません.「ブレデュールさんが着替えて戻ってくると,パパは大笑いし始めた.それに笑いが止まらなくてしゃっくりまでしてたよ.」(p.473)それにニコラの描写も,とても褒めているようには読めません.


ブレデュールさんはおかしな格好をしていたよ.乗馬用の半ズボンを身につけ,ぶかぶかの絹の靴下,底に釘とフックが打ち付けてあるでっかい靴を履いていた.ベルトには大きなナイフを左花,いろとりどりのシャツも着て,頭には布でできたおかしな帽子をかぶっていた.(pp.474-475)


 えらい言われようです.それにしても,なんでもLLサイズなんですね.それともそう見えるのかしら.

 ブレデュールさんの紹介から入ってしまいましたが,本話は,いつものようにパパとブレデュールさんの間で売り言葉買い言葉で,ニコラとアルセストを森に連れてゆくことになったブレデュールさんが大変な目に遭うお話です.こういう場合,『プチニ』では大概,パパが失敗するのが通常の流れなのですが,今回はパパはブレデュールさんを笑うだけ.しっぺ返しを食うこともないのが少し珍しい展開です.それもmerveilleの一つでしょうか.

 ニコラとアルセストが庭で遊んでいます.「僕らは庭の芝を刈って遊んでいたんだ.」なぜかというと,「パパはすっごく優しくてさ,芝刈り機を貸してくれたんだよ.それで,上手に芝刈りができたら,飴までくれるんだって.」それって搾取では・・・?それはともかく,アルセストですから,食べ物で釣るのが一番でしょう.ところが,その,いたいけな子どもの「搾取」を隣人のブレデュールさんに見咎められてしまいます.それで言わなきゃいいのに,ブレデュールさんはパパをからかった際の失言で,ニコラとアルセストを連れて「自然の驚異を発見」しに行くことになりました.それで着替えてきたのがすでに見た↑の格好です.パパは笑いが止まりません.ね,ここで自分が楽するために子どもをだまくらかして芝刈りさせていたのはパパですから,本来ならパパが罰を受けるべきで,それを指摘したブレデュールさんがひどい目に遭うのは,何か釈然としません.仕方ないですが.

 それで3人はいざ,森の中へ.イラスト2/3です.


 アルセストは相変わらず何か食べてます.あんな大きなサンドウィッチ,どうやって持ち歩いていたんでしょう?「アルセストはポケットからでっかいサンドウィッチを引っ張り出して,歩きながら食べ始めた.」(p.475)ニコラは手持ち無沙汰で退屈そう.

 

僕らはズンズンと森の中に入っていった.ブレデュールさんはイバラに引っかかって,乗馬ズボンをちょっと破いちゃったりもした.(id.)


 もうすでに可哀想なブレデュールさんです.次に迷子にならないようにと,木を削って印をつけようとして指を切ってしまうブレデュールさん.2つ目の災難です.パパに笑われたのを入れればすでに3つ目の災難でしょうか.

 ナイフでは失敗しましたが,道すがら,色々役に立つことを教えてくれる親切なブレデュールさんです.毒キノコもあるから気をつけなきゃいけないよ,とか.でも,そんなこと聞くわけもないアルセスト.もうすでにキノコを取り始めました.それで毒キノコかどうか判定方法を見出したとのこと.「アルセストは食べてみたんだ.ブレデュールさんはやめなさいと止めた.あんまりいい方法とは思えないな,だって.」(p.476)私もそう思います.

 ブレデュールさんは後ろを振り向いて,ニコラたちに注意した瞬間,泥の水溜りに足を取られてしまいます.4つ目の災難です.これを2度繰り返す.ということで,5つ目の災難は文字通り泥沼です.

 泥でドロドロ,ずぶ濡れになったブレデュールさんは,火を起こそうとしますが,持ってきたマッチも濡れています.そこでニコラからの提案.


火を起こして,マッチを乾かさなくっちゃ.」(p.478)


 困難な状況でギャグを飛ばしてくれます.さすがKYニコラ.ブレデュールさんは一言.「あの親にしてこの子ありだな.」それで仕方なく,ブレデュールさんは枝を集めて火をつけようとします.その感,少し離れたところでアルセストはキノコを食べていました.「やっぱ生で食べても,煮込みには敵わないな.」だそうです.大丈夫か?!

 

 1画面上に3人が見えますが,文章を読む限りでは,ブレデュールさんのいるところから,アルセストは見えなかったようです.いずれにせよ,両者とも火を付けるのと,食べるので大忙しですから,互いに視野には入らなかったでしょうが.

 ニコラとアルセストは,「自然の驚異がそんなに好きなブレデュールさんの邪魔をしない」よう,黙って帰ってしまいます.それに夕食の時間だし.

 食後に警察(とはいえgendarmeなんですが)から身元確認の電話がかかってきます.「雨の中,森で火をつけようとしているところを発見された」そうです.「猪を近づけないように火をつけているんだと,主張していたんだってさ.」(p.479)


 僕は走ってコップの水を取りに行かなきゃならなかったよ.だってパパがまたしゃっくりを始めたんだもの.(id.)


 そんなに笑っちゃいけないでしょー!だって,あなたが楽したくて,子どもを連れて行かせたんですから!!!


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