『「プチ・ニコラ」大全』(79)
- Yasushi Noro
- 12 時間前
- 読了時間: 3分
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p. 42-43.
第二章,続いています.毎日書いているわけではないので,時々確認しておかないと,自分でも本書のどの部分を紹介しているのか,見失ってしまいます.今のところ,未だ「運命の交差」はありません.『プチ・ニコラ』の二人の作者は別々の人生を歩んでいます.生まれも育ちもまるで異なる二人ですが,最初から順風満帆とはいかず,出版社巡りで苦労したというのは共通しているようです.貴族に生まれれば30年得をする(あれっ?20年だったかな?)とパスカルが書いていましたが,私たちの大方は貴族には生まれませんから,コネもカネもなければ,時間と労力がかかっても致し方ないところ.
確か前回は,サンペが兵役について上京したけど,しらみつぶしに出版社を訪れ,何とか作品を売ろうとしていた様子が描かれていました.数撃ちゃ当たる的な?軍隊でそんな調子なら,度々の営倉入りなんてのも容易に想像がつきます.本節はその続きのようです.なのですが,見開き2頁に軍服を着たサンペとゴシニの写真が掲載されています.
とりあえず,イラストレーター(dessinateur)で食えないサンペは,兵役につく決心をしました.当時彼は19歳.文書は偽造したそうです.招集がかかる前なら配属先は選べたとのこと(そうだったのでしょうかね?).もちろんパリを選びました.初日は遅刻,錬成中には銃の置き忘れ.そんな不真面目な感じでは,兵役の一部を牢屋で過ごしたのも頷けようというもの.それでも外出許可がでるたびに,これ見てください,どうですか,使ってやってください,などなどと口にしながら営業をかけ,ついには契約を勝ち取りました.
ゴシニの兵役については,ご本人の発言が引用されています.
「兵役についてすぐ,お前何ができる?,と聞かれました.それで私は3ヶ国語が話せて,タイプが打てて,ほんの少しの絵の心得もあって,多少なら商売にも携わっていて,ジャーナリストとしても若干働いていました,と言いました.そうしたら,マルセイユ方面のアルプスの歩兵隊に配属されたのです.」
正直に経歴を並べ立てたものの,それが軍隊に貢献できるのか,そもそも配属場所に関係したのかでしょうか?きっと,してませんね.この辺もゴシニのユーモアなのでしょう.そう考えると,実際の現場でのやり取りが事実かどうかより,とにかくできることを長々と列挙した挙句にマルセイユの「歩兵隊」に,という落差を楽しむべき文章でしょう.さすがゴシニ.何を語るのでも,聞き手・読み手がいるからには,サービス精神を忘れない,というわけです.

p. 43 軍服姿のゴシニ.右下に« Jean Prot/Paris »,とエンボス風な文字が見えます.もしかしたら,入隊時の証明写真か記念撮影でしょうか.以下のサンペも同じように軍服姿ですが,これは街中で撮影したものです.この違いから,二人の環境について,何か読み取ろうとしたら,それはまことに愚かな深読みとなるでしょうか?

p. 42 軍服姿のサンペ.



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