« On part en vacances », HIPN, vol.1, pp.439-445.
「ぼくら,ヴァカンスに出発する」.「ぼくら」とはもちろん,ニコラとパパとママンの3人で,「ぼくら,3人ともすっごく嬉しいんだ」そうです.でも,嬉しいばかりですまないのがニコラ一家の常ですから,本当にヴァカンスに出発できるの?と勘繰ってしまいます.結論から言うと,無事出発できそうなのですが,それまでに一悶着あったというお話です.
それにしても,ヴァカンスに行くというのは,フランスでは大変な作業だということがわかりました.スーツケースに荷物を詰めて,途中で食べる簡単な昼食を持って,後は出発するだけなんて考えていましたが,そうもいかないようです.ニコラの家ではまず,留守中に埃がかからないように,家具に覆いをかけます.「どこもかしこも」.次に,今ある食べ物を出発前に,全て終わらせなければなりません.それでパパの嫌いなカスレの缶詰が6缶もあったので,ここのところ毎日カスレだそうです.ニコラはカスレが好きだったのですが,それも「昨日の晩まで」のこと.「あと2缶残っているので,今日もお昼がカスレで夜もカスレ.それでぼく,泣きたくなったよ.」確かに,十分泣ける状況です.
今日はようやく荷造りの日で,明日の朝6時に起きて電車に乗るそうです.ママン:「荷物をいっぱい抱え込むのはよしましょう.」パパ:「そうそう,そのとおり!うまく紐で結べないような包みをゴタゴタ持ち歩くなんてまっぴらだ.最大3個までにしようじゃないか.」珍しく息の合った二人は「茶色のスーツケース」と,「青のバカでかいスーツケース,それにエルヴィールおばさんの小さなスーツケース」の3つに絞りました.茶色のスーツケースは「閉まりが悪いけど,紐でくくれば大丈夫」なやつです.イラスト2/3を見ると,この3個で初志貫徹・・・できるかだいぶ不安です.
きっとパパが両腕と小脇に抱えているのがこの3点でしょう.ニコラがヴァカンスに持っていきたいおもちゃをずらりと並べています.もうサッカーのボールだけで,一番大きな茶色のスーツケースは一杯でしょう.パパの目が丸くなっています.ちなみにニコラは「3往復」しなければならなかったようです.
準備開始ということで,すかさずパパは地下の倉庫にスーツケースを取りに行きました.これが1/3です.
地下の倉庫には「必要なスーツケースの上にトランク」がおいてあり,「煤だらけ」で,「電灯が切れて」いたらしいのですが,パパによると,それが「いつも」のことだそうですから,パパはいつもぶつぶつ不平を言いながら戻ってくるのでしょう.それにしても,気になるのが,わざわざ「必要なスーツケースの上にトランク」が置いてあること.それも「いつでも」となると尚更です.どういうことなのでしょう?
上に上がってきたパパがニコラの荷物候補を見て目を丸くしていたのは,↑ですでに見ました.ニコラは叱られ泣き出す.ママンが介入し,ママンとパパがケンカ.その後,ママンが「毛布と赤い羽根布団」を持っていこうとして,やっぱりパパと口論.パパが釣竿を持っていこうとして,ママンがダメ出し.論争は激しくなる一方.これがイラスト3/3でしょう.ニコラは泣き喚き,パパは釣竿片手にママンと口論.でも手前には次の段階でママンが提案するはずのトランクがもうすでに置いてあります.そもそも,パパが左手に持つスーツケースと,ママンが抱えているスーツケースで2個,ママンの脇に置いてあるスーツケースで3個とすると,パパの横の2個のスーツケースは何?加えて蓋の空いたトランクが登場しています.ニコラが3人くらい入りそうな大きさですが,これ,持って運べるんですかね?
そこでママンが提案.
「ここに出したみんなのセーターとか毛布を全部持って行くなら,茶色のスーツケースより,取っ手が一つしかついていない小型のトランクの方がいいんじゃない?」
「それもそうだ.」と,パパが答えた.(p.444)
ようやく合意に達したパパとママンは茶色のスーツケースを戻してトランクを持ってゆくことに.さらに,「青のでっかいスーツケース」も不要となり,代わりに「衣類用の小さなバスケット」にします.その他,昼食の「ゆでたまごとバナナ」を入れるための果物カゴ.また相変わらずのメニューです.その他の物を入れるのに「緑の大きなスーツケース」を持ってゆくことにしたところで,ママンは忘れていたとばかりにペシっと額を叩いて,浜辺で腰掛ける椅子を,ニコラは忘れていたとばかりに自転車を提案.パパはペシっとママンとニコラを引っ叩きたくなるのを抑えて,「どうせ持っていかなきゃならないなら,ピクニックするためのカゴと道具一式を持っていこうと提案.「みんながそうだそうだと意見が一致して,パパも嬉しそうだった.」
そうなんです,気づきました?結局最初に持ってゆくと決めた3個のスーツケースは全て持ってゆかないのです.それにカゴやら何やら,ゴタゴタと「うまく紐で結べないような包み」を運ぶことになっています.まさにそれを避けるための英断だったはずなのに・・・初期設定を完全に忘れてしまっています.昼食もやっぱり変わらず「ゆでたまごとバナナ」だし.ここには書かれていませんが,いつぞやは「ゆでたまごとバナナ」が入った包みを忘れていってしまったそうですから,もしかしたら今回もそうかも.
とりあえず,ニコラの締めくくりの言葉を見ておきますか.
それでみんなの意見が一致したから,後は居間でママンのお手伝いをして荷造りをするだけだった.その間パパは,閉まりは悪いけど紐でくくれば大丈夫な茶色のスーツケースと,青のバカでかいスーツケース,それにエルヴィールおばさんの小さなスーツケースを,地下の倉庫に戻しにいったんだ.(p.445)
それで今回も旅行から帰ってくると,積み重ねたスーツケースの上にトランクを戻すというわけです.本当に「必要」なのは「スーツケース」なのでしょうか,それとも「トランク」?
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