« L'anniversaire de papa », HIPN, vol.1, pp.414-419.
「パパの誕生日」.anniversaireは日本語でよく即座に「誕生日」と訳されますが,本当はannéeが綴り字に入っているところからわかるように,「周年記念」の意味です.それをよく踏まえてなくて,フランスでl'anniversaire de la mort de...と聞いたときに軽いショックを受けました.随分と昔の話ですが・・・(遠い目).
さて気を取り直して,ママンとお隣のブレデュールさんとニコラが力を合わせて,パパの誕生日会を「サ〜プライズ」でやろうというお話.もう読み始める前から,失・敗の2文字しか想い浮かびません.だって,戦略あざといママンと,KYニコラと,パパをからかうのを生きがいとしているブレデュールさんですよ?!それにいつも思い通りには決してならなくて,失敗ばかり繰り返すパパですよ?!もう,失敗しか見えない.
パパは自分の誕生日の朝になっても,誰もおめでとうも言ってくれないので,膨れっつらをしたまま会社に行ってしまいます.パパがいない間にブレデュールさんがお祝い用のシャンパーニュを抱えてやってきます.それで題名の横に,シャンパーニュを小脇に抱えたブレデュールさんの絵が2/3から抜粋されているんだぁと納得しかけたところ,さにあらず.だって,ブレデュールさんの顔は明らかに怒っています.誕生日を祝う人の顔じゃありません.後で2/3を見るときに,確認しましょう.
イラスト1/3はブレデュールさんがサプライズ・パーティーの飾り付けをしているところです.この後,お決まりのように足を踏み外し,膝に怪我をしてしまいます.
それにしても天井が高いなぁ.そんなに豪勢な作りのお家はもうないのでは?というくらい高い.ここから落ちたら,膝どころじゃなさそうなんですが.
あ,ちなみに,ママンはパパに「超かっこいーネクタイ」をプレゼントする予定です.ニコラによれば,「ママンはいつもすっごいものを思いつくんだ」そうですから,どれくらい素敵なのかと思いきや.「真っ黄色で,ちっちゃなバラの花が散りばめてある」ネクタイだそうで,んん・・・微妙?
ママンはパパによくネクタイを買ってあげるんだけど,パパはまず滅多につけないんだよ.きっとネクタイがキレイすぎて,汚しちゃうのが怖いんだね.(p.414)
そ,そうなのかなぁ.私にはニコラは,ママンの趣味は悪くて,パパは恥ずかしくて会社に着けてゆけないって読めるんですが.ニコラの素直な観察の裏には何が隠されているのやら.
もう一つちなみにニコラからのプレゼントはキャラメルでした.これは後で役に立ちます.ママンのネクタイと違って.
「ブレデュールさん,〔気をつけないと〕落ちちゃうよ.」と,僕が言った.するとブレデュールさんが僕に返してきた.「お前はほとほとパパによく似ているな.グズグズ言ってないでハサミを取ってくれ.」そう言ったとたん,ブレデュールさんのからだがグラッと傾き,梯子から落ちたんだ.僕は間一髪横によけたよ.(p.416)
膝を抱えて痛がるブレデュールさん.そこへパパが帰ってきました.ところが,外ではパパが車を停められない.ブレデュールさんがニコラたちの家の真前に車を停めていたせいです.パパは怒りながら入ってきます.
パパがドアを開けて入ってきた.パパはとても不機嫌そうだった.いや,実際のところすっごく不機嫌だったんだ.「まったくけしからん!あのスープを詰め込んだブレデュールのデブやろう.あいつ,人の家の前にポンコツ車を停めてやがる.ああいう厚かましいやつにはもううんざりだ!」ママンは食堂の方に目をやった.すごくおどおどしていたよ.「あのね,あなた...そんなこと言わず,ブレデュールさんは・・・」.「なんだと!ブレデュールにさんづけか!」そう,パパが怒鳴った.「ブレデュール様がどうしたっていうんだ!」(p.418)
それを聞いたブレデュールさんが食堂から姿を現して・・・.もちろん,パパの悪口に腹を立てて・・・.シャンパーニュを持って帰ってしまいました.そりゃそうですわな.
というわけで,題名の横に切り取られていたシャンパーニュを抱えたブレデュールさんは,お祝いではなく,呪うかのごとく怒り狂って帰っていく姿でした.そういえば祝と呪と部首違いですもんね.(超・脱線.レ・ロマネスク(Les Romanesques)さんたちがそんな抱腹絶倒の傑作ソングを歌っていました.→これです).
サ〜プライズ・パーティーは台無し.ママンも肘掛け椅子に座り込んで泣き出してしまいます.それでいつもの繰りごと.「私はなんて不幸なのかしら.お母さんが正しかった.子どもがいなかったら,もうとっくに実家に帰っていたわ!」(p.419)
もちろん楽しい夕食もなく,プレゼントもなく,パパは侘しい夜を過ごします.でも,KYニコラだけは「誕生日おめでとー,さ〜ぷらいず!」とプレゼントを差し出していたので,二人でニコラのキャラメルを開けて夕食会.「人生とは複雑なものだな,ニコラ」と,パパがポツリ.
パパの顔は険しく,でもニコラはプレゼント渡せたし,すぐにプレゼントが役に立ったし,非常〜に満足げです.
でも,次の日にはぜんぶうまくいったよ.パパの誕生日会は最後には成功したんだ.パパがママンにとってもいいプレゼントを買ってあげたからね.(p.419)
だ,誰のお祝い?それにしても,ママンはやっぱり最後に勝つ.可哀想なのはパパと・・・出て行ったままのブレデュールさん?やっぱりパパとはソリが合わないようです.
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