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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(13)

« Le petit poucet », t.I, pp.103-109.

『親指小僧』といえば,17世期のフランスの作家シャルル・ペローが書いたとされる『童話集』の中のお話ですが(その他,グリム兄弟のお話も有名です),今回のお話ではペローもグリルも登場しません.

 校長先生の御退官の記念に学校をあげての催しが企画されました.上級生のクラスでは組体操,ニコラたちのすぐ上の学級ではダンス.ニコラたちのクラスでは,どうやら脚本はニコラたちの担任の先生のオリジナルで,ペローの(と思しき)『親指小僧』と『長靴をはいた猫』を合わせた劇を演ずることになりました.お話の舞台は,劇の予行練習第1日目.そして読者の予想通り(!),これが予行練習の最終日となるのです.

 「この劇のお話はすっごく複雑で,先生が話してくれたんだけど,僕にはよくわからなかったんだ.」というニコラは,二つの古典的な作品を巧みに組み合わせたあらすじを話してくれますが,これはお愛嬌.何故って,いつものニコラたちのことですから,ストーリー以前に劇自体がはちゃめちゃになってしまうに決まってますから.そんないつもの展開をワクワク期待しながら読み進めましょう.

 このお話の絵は1枚だけ.教室の風景です.



 このごちゃごちゃぶりったら!先生の話をしっかり聞いているのは主役に任ぜられたアニャンと,二人を取り囲む数人だけです.アニャンをからかうアルセスト,それを眺めるニコラ.先生の後ろで鼻に一発食らわせているのがウードで,カウボーイ姿はもちろん,パパがお金持ちのジョフロワ.先生,険しい顔をしています.

 まずはカウボーイが登場しないなんて劇じゃないといきなり全否定したジョフロワが先生から罰を受けて退場.フランスでは教室の壁に向かって立たせる罰を「杭の上に置く」(mettre qn. au piquet)といいます.日本では「立ってなさい!」と起立を求められるだけですが(昔はバケツを持たされた?),フランスでは「杭」のコーナーがあるようです.

 アニャンが親指小僧をやると聞いて,思わずからかったウードがジョフロワの横に立たされ退場.

 アニャンとアルセストが言い合いを始め,先生に叱られます.

 長靴をはいた猫役は最初メクサンに白羽の矢が立ちますが,尻尾を拒否してジョアシャンにからかわれ,殴り合いのケンカになり,二人とも罰をくらって退場.

 リュフュスが人食い鬼,クロテールがカラバ侯に割り当てられたところで,先生は懲罰コーナーからみんなを呼び戻します.

 全員揃ったところで,アニャンの最初のセリフ.「僕の兄弟たち,僕のかわいそうな兄弟たちはどこ?」が発せられ,それを台本を読む係のアルセストが何故が<後から>読み,口から食べかけのビスケットのかけらを飛ばし,アニャンの眼鏡がくもって,今がチャンスとアルセストがアニャンにビンタを食らわせ,それを見たウードが「鼻だ,鼻を打て!」と親切な助言をしたところでアニャンが泣き出し,メクサン,ジョアシャン,ジョフロワが一斉に群衆のセリフを読み始め,ニコラとリュフュスが定規と筆箱で決闘を始め・・・

 怒り心頭に達した先生はやけになって演劇を止めることにしてしまいます.それで,ニコラの最後の一言.


 「担任の先生が校長先生に罰を与えるなんて初めて聞いたよ.」


 優しくきれいな担任の先生の顔が歪んでます・・・.





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