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執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(121)

« Tuuuuut ! », HIPN, vol.1, pp.272-277.

 題名のtuuuuutをフランス語の一般的な発音規則でそのまま発音すると,「チュュュュュ(ト)」.何のこっちゃい?オノマトペ(擬態音,擬声音)であるのはわかるのですが,それならどんな場面で使うのかと,辞書をこねくり回してみましたが,出てきません.でも現代(いま)は便利.検索かけたらインターネット上にはちゃんと出てきました*.要するに警告,注意を与える表現だそうです.それから,工場や船などのサイレンの音やアラームが鳴る音にも使われます.それで本話の用例では,パパがニコラの部屋に広げられている鉄道模型の電気機関車を走らせるときに言っています.


パパが素っ頓狂な声で叫んだ.「発車にご注意ください!ご乗車くださーーーい.Tuuuuut!」(p.275)


 それからもう1箇所.模型の電源が入っていなかったのに気がついたパパが言う言葉.


「ニコラにアルセスト.お前たち,コンセントを繋いでないじゃないか.それじゃあ動かないだろうが.俺が来たからいいようなものの.」そう言ってパパは笑い出し,コンセントに繋ぎに行った.

「これでよし,と.これで動くさ.Tuuuuuut!」


 やっぱり出発を表す警告音です.すると日本ではホイッスルの「ピリリリリー」という音でしょうか.それとも,「しゅっぱーつ,しんこーう!」と意味を持たせても良いでしょうか.どちらが良いですか?

* https://www2.hu-berlin.de/linguapolis/ono.htm:「フランスのBDでよく使われているオノマトペ語彙集」.ネット情報にはよくよく注意が必要で,そのまま真に受けることはできませんが,十分に参考にはなります.


 謎の題名の解読でやや手間取りましたが,邦訳では題名は「パパ,ショック!」と,おそらくはオチの電気のショートを考慮したものとなっています(電気ショックのイメージでしょう).それでオノマトペの方は「チュルルルル!」なのですが,これはオノマトペを日本語のオノマトペで置き換えた感じでしょうか.

 ある晩,学校から帰り夕食を待つ間に,大きな箱を抱えてアルセストが遊びに来ます.ノエル(フランス語でクリスマス)にプレゼントでもらった鉄道模型とサンドウィッチ3個が入っていました.それで夕食まで遊ぼうというのですが,真の目的は実は隠されています.これに引っ掛かるのは,やっぱりパパ.パパは何か調子に乗ったりはしゃいだりすると,必ず失敗するのです.それはお話の最後なので置いておくとして,ニコラがアルセストに嫉妬したり,ニコラとアルセストがケンカをしたり,なかなか二人で電車を走らせようというところまで行きつきませんが,ともかくも1枚目のイラストのような状況になりました.


 まず,ニコラの部屋がだだっ広いのに驚きます.左奥のベッドはあんなに小さいので,部屋がどれほど大きいかよくわかります.それに未だ完成していませんが,アルセストの持参した鉄道模型の本格的なこと!かなり羨ましいです.ニコラとアルセストは真ん中で言い争いをしています.いつでも食べ物を頬張る姿で描写されるアルセストですが,今回の目つきはえらく悪い.パパが部屋へやってきて,模型を眺めて,かなり嬉しそう.基本的に,パパは子ども時代の遊び(お城作り,工作の自動車,模型電車など)が大好きで,子どもの意向に関係なく,すぐに介入してきます.うざいかも.アルセストはわざわざ「お前んちのパパやママンに邪魔されたくないんだ.」(p.274)と言っているのに,知ってか知らずか(知らないんですけど),パパが入ってきて,やっぱり「邪魔」します.そして模型を見て,感嘆し,


「俺がお前らくらいのときにも,こんな電車が欲しかったなぁ.でも,何せ勉強が忙しすぎてな.遊ぶ暇もなかったんだよ.」(p.275)


 と,まぁ,本当か嘘か(嘘なんでしょうが),パパ,自慢話を始めます.そんな風に偉そうにするから,しっぺ返しをくうんです.

 それでアルセストは嫌がっているのに,勝手に遊び始めます.パパったら・・・.ところが電動式の機関車が動かない.な〜ンダ,コンセントに繋いでないじゃないかというわけで,2枚目のイラスト.


 今度はアルセストばかりか,ニコラまで目つきが悪い.パパが勝手に遊び始めたからでしょうか.それにしても↑のイラストと,線路の位置がだいぶ異なるようですが,それはどうでも良いことでしょう.パパは今まさに,コンセントに接続しようとする瞬間です.そこでパパは前述の通り,「これで動くさ.しゅっぱーつ,ピリリリリリー!」と,すっかり駅モード.すると.


それでパパが電源ボタンをオンにすると,かっこいー火花がバチバチッと光って,家中の電気が消えちゃったんだ.(p.276)


 それを見ていたアルセスト曰く,「やっぱりだ.家とまったくおんなじ.家の電気がよくないのかと思っていたんだけど,パパがね,誰か友だちのところで試してこいって.そうすれば,電気じゃなくて電車のせいだってわかるからって.パパの言う通りだったね.」(p.276)パパ,ショーーーク😱 そう言い残して,アルセストは夕食に帰ってしまいました.

 茫然自失のパパ.夕食も食べられませんでした.ニコラとママンは二人で蝋燭を灯した素敵なディナーだったのに.

 最後はKYニコラのまとめです.


アルセストの持ってきた電車が動かないからって,そんなに落ち込むなんて思いもしなかったよ.(p.277)


 やっぱり,それが原因なんですかね?それとも・・・子どもの言うことも聞かず突っ走ってしまった自己嫌悪なんでしょうか. 

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