« Le repas de famille », HIPN, vol.1, pp.226-233.
familleはフランス語で一番最初に習う単語の一つ.それで「家族の食事」としてしまうと,ニコラの家ではいつもパパ,ママン,ニコラの3人で食事をするのだから当たり前となりますが,この場合にfamilleは「一族,親族」の意味で,「親族が集まる食事会」となります.親族が毎年集まりレストランでメメ(=「僕のママンのママン」)のお誕生日を開くのが慣わしのようです.パパの兄弟の「ウジェーヌおじさん」もちゃんと出席していますから,パパとママンの親族が一斉に集まる賑やかな会となります.1枚目のイラストを見れば,そんな騒々しさも伝わってこようというもの.
メメの誕生日ですから,メメはお誕生席にいて一番左で全体が見えるところにいます.その横にいるのが「コッテリ太っていて赤ら顔をした」ウジェーヌおじさん.ワイン片手にバカ笑いしています.メメはパパのことがどうも好きではなさそうなので,その兄弟のウジェーヌおじさんもよく思っていないんでしょうね.気難しそうに見えるのは,おじさんを睨んでいるからかも知れません.おじさんの横には大きな口を開けている女性・・・「話が止まらない」人,ズバリ「マチルドおばさん」でしょう.マチルドおばさんの話に辟易しているのか,浮かない顔はパパじゃないですかね?その横は多分,「ドロテおばさん」かな.「一番年寄りで,みんなを叱りつける」気難し屋.ドロテおばさんの横で冗談みたいに全く同じ身振りをしているのが,ロッシュとランベールの双子の兄弟.兄弟の横の女性,そしてメメの対面の男性は「シルヴァンおじさん」と「よく病気になる」という「アメリおばさん」でしょうか.アメリおばさんは病気がちで何度も手術をしたので,「いつも手術の話をする」そうです.あの,聞いてて困る,迷惑なやつですな.ニコラの観察によると,「今日はおばさん,手術の話をして正解だよ.だって手術が大成功したんだからね.すっごく顔色がいいよ.」これって嫌味ですよね?登場人物としては,後はママンの従姉妹の「超絶美人」の「マルチーヌ」さん.ロッシュとランベールの姉妹のクラリス(アメリが彼らのママン),ニコラの従兄弟のエロワでしょうか.ニコラと合わせてこの3人がメメの右隣に座っています.あとママンね.イラストとは数が合わないような気が・・・.そうそう,後から「カジミールおじさん」も登場するんでした.それで合うかしら.
ちなみに,今のはイラストからの説明ですが,文の方では,まずウジェーヌおじさんがみんなの席を割り当てようとして,パパがそれを中断し,ドロテおばさんが文句を言い始め・・・となかなか食事が始まりません.給仕長とメメの一声でようやく席が定まりますが,子どもたちを一緒にするとかしないとか,クラリスは大人と一緒がいいとか,ドロテおばさんとマチルドおばさんが言い争いをして,みんながドロテおばさんを慰めるので席を立って席替えをしたけど,パパは上手く移動できずにやっぱりドロテおばさんの横のままだとか.数だけではなく,席順もイラストとはだいぶ異なるようです.ウジェーヌおじさんはちゃっかり「超絶美人」のマルチーヌさんを横に置くことになっていますし.ま,不一致はいつものことですからお気になさらず.
ところでマルチーヌ「超絶美人」さんについて,パパはよせばいいのにママンに「マルチーヌはすっごく綺麗だね」なんて言ったものだから,ママンはマルチーヌさん本人に,「この人のいう通りよ.でも髪のセットがいまいちね.美容師を替えなきゃ.」(p.227)と言っています.これは嫉妬でしょ?!認めたくないけど綺麗だし,だけど自分の夫がちやほやしているのが気に入らなくて,些細なこと(髪型)にケチをつけたようなんです.
*ここのところ,フランス語では代名詞の使い方がややわかりにくく,パパがマルチーヌさんご本人に「綺麗だ」と言ったようにもとれるのですが,どうなんでしょう.
**ちなみに邦訳では「ママのいとこでとってもきれいなマルチーヌ,パパがそうママにいうと,ママはマルチーヌに,ほんとうにきれい,といったけど,マルチーヌは髪のセットが気にいらないので美容師をかえるんだって.」(邦訳「レストランで」,第2巻p.143)(« Martine, qui est la cousine de maman et qui est drôlement jolie, et papa le lui a dit et maman a dit à Martine que c'est vrai, mais qu'elle devrait changer de coiffeur parce que sa mise en plis était ratée. »(p.227)となっています.下線を引いたqu'の部分をどう理解するか,難しいとろこかもしれません.それにもしかしたら,qu'elleのelleはママンという可能性もあるのでしょうか?その場合には,ママンは話をはぐらかしたことになりそうです.
一族の背後には給仕さんが2人.二人とも,かなり顔を顰めています.お誕生日会とはいえ,貸切ではないので,他のお客さんにだいぶ迷惑をかけているんでしょう.それで給仕さんの表情も自ずから怪訝な感じで.通常ならそんな顔してたら,お客さんに叱られちゃいます.一番手前の真ん中で,汗を拭き拭き空いたお皿を下げるのは「給仕長」(maître d'hôtel)でしょう.いやはや困ったお客さんたちだ的な.
始めるのに時間がかかったばかりではなく,食事中にも何かある毎に,給仕長が「お客様,お客様」と飛んできます.汗もかくはずです.
実際に文章に描写はないのですが,2枚目のイラストは,ニコラたちがレストランの中で大騒ぎをしている様子,そして入口を背にして,給仕しているはずの給仕長さんが頭を抱えている様子です.それにしても,お客さんを放り出して,店の外で休憩・・・というのも変なので,給仕長さん,追い出したいのに追い出せないから,自分が出てきちゃった?一応,文章で給仕長さんは店内にいることになっているんですが.
給仕長さんは僕らのテーブルの横に立っていたんだけど,顔色が良くなくて,しきりにハンカチで顔を拭いていたよ.(p.233)
レストランの名前は「自分の家にいるみたいに」(« comme chez soi »).皮肉が効いています.ニコラたち一族はみんな自分の家にいるみたいにはしゃいでますから.
最後はニコラとエロワがケンカを始めます.
それで僕ら喧嘩になったんだ.パパとママンとマチルドおばさんが来て,僕らを引き離した.それから,パパとママンとマチルドおばさんで言い争いになった.クラリスが泣き始めて,みんなが席を立ち,ワーワー大きな声で怒鳴っていた.それで他のお客さんたちとか給仕長さんまで立ち上がって,ワーワー大声で怒鳴っていた.(p.233)
店の中は,もうカオス以外の何物でもありません.
僕らが家に着いたとき,パパとママンはちっとも嬉しそうじゃなかった.わかるよ!パパ,ママン!次の親族みんなでの食事会まで,また一年待たなきゃならないと思うと寂しいもんね!(p.233)
だから違うって,ニコラ!でもさすがのKYぶり.
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