« Bonbon », HIPN, vol.1, pp.126-133.
「ボンボン」と言う題名で,冒頭でいきなりママンからお使いを頼まれて,いつもの食料品店に行って,行くと必ず何かくれるコンパーニさんのところで,ニコラ的には瓶の底の方に残った欠けて売り物にならないビスケットが好きだという話の流れから,「ボンボン」は当然「飴玉」の意味だと思っていたら,なんとコンパーニさんの飼い猫のビスコットちゃんの4匹生まれた子猫の1匹の名前だったとは!それで,親切なのか,押し付けたのか,コンパーニさんがボンボンちゃんをくれたものだから,ニコラは大喜びで飼うつもりで帰ってきたけど,ママンの反対にあって,飼ってくれる友だちを探して歩いたんだけど見つからず,最後にウードが引き取ってくれたので一安心だけど寂しいなと,浮かない顔をしていたニコラのところに,ボンボンちゃんがやっぱり戻ってきて一件落着というお話でした.
今回のイラストでは2つのことにたいへん感心しました.その1),お話の展開に関係ないイラストを含む計7枚もの!イラストが掲載されています.それもすべて,ボンボンちゃん(猫)入り!テンション上がるでしょう?サンペが猫好きなんでしょうか.その2),8枚目のイラストは4枚目からの抜粋なのですが,文章の終わった後に置かれていて,ものすご〜く,ドンピシャな位置に感銘を受けました.通常だと,どこかのイラストから切りはりされていても,余白を埋めたり,簡単に場面を想像させたりといった感じにすぎないのですが,今回は違います.こんな上手い使い方は,そうそうありません.(82)が想い浮かぶくらい.
さて,ボンボンちゃんをもらい受けて大喜びで帰ってきたニコラですが,すぐにママンは拒絶.というわけで,ニコラとボンボンちゃんが遊ぶ場面は,文章中にはないんです.それなのに!イラスト1,2,4,7はこんな場面.
やけに目の大きな猫ですが,ま〜愛らしい.そうなんですよ,鼻を近づけると,チュッてするんですよ.目の前で指動かすと目で追うんですよ.どういうわけか背中にも乗りたがるんですよ.でも,お話には直接関係ないので,この辺にしておきましょう.かわいーですけどね.
3枚目はもう,見ればわかる的な.
さすが親子.ニコラとママンの眉間の皺の寄り方がいっしょ.ママンがいるところが家の中で,ニコラは家を出て,ボンボンちゃんを引き取ってくれるかもしれない友だちのところを渡り歩きます.半分開いた扉がちょっと変ですが,内と外はよくわかります.その険悪で,がっかりした雰囲気も伝わってきます.
それで僕はもうどうしようもないなぁと思って,ボンボンと家を出たんだ.ボンボンは寝ていたよ.誰に飼ってもらおうかなぁ.ジョフロワとジョアキムの家は遠いし,メクサンのとこには犬がいるし.ボンボンはメクサンの犬が好きじゃないだろうなぁ.(p.129)
イラストでボンボンは寝てないどころか,かなり大きな目を開けてるし.ま,いつものニアミスです.それでニコラはアルセストのところに行きます.
のーびのびしちゃって,ボンボンちゃんかわい〜なーって,また猫に戻っちゃいそうですが,アルセストが出てきて用件を聞いているところです.「口いっぱいにに何かほおばって,首にはタオルを巻いていた」(p.130)この,首に巻いたタオルが謎です.『プチ・ニコラ』では何か小さな観察があっても必ずどこか他所とつながるように書かれているのですが,今回の首に巻いたタオルの意味はわかりませんでした.分かった方,お知らせください.(ちなみに邦訳ではこの首の部分は省略されています).イラストの方でも,タオルは登場しません.でもニコラがアルセストにボンボンちゃんを見せた時に,ボンボンちゃんは「あくびをした」と書いてありますが,イラストではそれも無視です.
次はリュフュスのところです.
リュフュスは大興奮で乗り気だったのですが,家の中からお母さんの「リュフュス!」という怒鳴り声が聞こえて,敢えなく撃沈.
続いてウードの家に行きます.アルセストとリュフュスの家では「親に言われて」ダメだったというと,ウードはその言葉に反応して,
「ダセーぜ.家はな,俺はやりたいようにやるぜ.誰の許可もいるもんか.俺が飼うといえば,飼うんだ.」(p.132)
おっ,脈ありどころか,これで一安心.ニコラもそう思ってボンボンちゃんを預けて帰ります.ウードは強がりで,いわゆるえーかっこしーなんですね.でもまんまとニコラの戦略に乗ってしまったのかも.
家ではママンがコンコンとお説教.パパが帰ってきても,絶対に猫を飼ってもいい?とか聞いてはダメだし,話題にもしちゃダメときつく言われてしまいます.それでどことなく,元気のないニコラをパパは心配します.そのとき!呼び鈴の音が.
ニコラは「玄関の扉を開けに行くのが好きなんだ」とわざわざ行っているので,今回飛び出していかなかったのは,それほど落ち込んでいたということなのでしょう.それでパパが代わりに開けに行きます.いよいよオーラスです.
パパが席を立って,しばらくして戻ってきたんだ.パパはニコニコしながら,後ろに両手を隠していた.それで僕に聞いたんだ.
「クロテールからニコラへのプレゼントだ.何〜にかな?」
その「何か」を連れてきたのは,ウードじゃなくて「クロテール」だったところも笑いどころですが(つまり,いくら強がっても,ウードはやっぱり両親には勝てないんです.それでそのままニコラに返すのは恥ずかしいから,クロテールに押し付けた.でも,クロテールの家でもやっぱり飼えないので,ニコラの家に持ってきた),この「何〜にかな?」で終わっている文(お話)の後に,編集の人は4枚目から切り抜いた次のような吹き出しを加えたんです.上手い!
もちろん・・・・「ニャー」だにゃー.
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