« Louisette », t.I, pp.80-87.
Louisette「ルイゼット」は女の子の名前.「ルイ14世」なんかのLouisが男性の名前で「ルイ」,その女性形で一般的なのがLouise「ルイズ」あるいは「ルイーズ」.私の友だちでスペイン出身の女性の名前が「ルイーザ」さん.ついでに言うと,アメリカの地名Louisiana「ルイジアナ州」はやはりLouisから作られた語です.だからLouisetteもLouisから発想しているのだと思うのですが,何か少し違和感・・・.ちなみに-etteはJosette, Georgetteなど女性の名前につく語尾なんですが,今では少し古臭く感じられるかも.
さてそんな女の子の名前がタイトルで,最初の絵がお母さんらしき人に連れられいるかわいいおさげの女の子で,次の絵でニコラの妄想する結婚式が描かれていれば,そりゃきっと,ニコラとルイゼットちゃんが出会って,恋に落ちて,結婚して・・・なんて,今度は読者が妄想しても無理からぬところ.
でも,この想像の中の結婚式.何か変.ニコラが大きくなってタキシードを着て,ルイゼットが花束を抱えて花嫁衣装に身を包んで...何が変?そう,大人のニコラが手に持っているのはどうやらサッカーボール.それに周りにはバレーボールやらローラースケートやらが散らばっているし,木にはブランコがかかっているし.と言うわけで,どうやらこの妄想の中にはニコラが好きなものが詰め込んであるようなのです.
今回は「お人形遊び」しか出来ないような「女の子(たち)」にはまるで興味のないニコラが,ルイゼットちゃんを好きなものリストに入れるお話です.
ママンに言われてしぶしぶルイゼットちゃんを迎えたニコラ.一所懸命,一緒に遊ぼうとしますが,ルイゼットちゃんに叩かれたり,足を蹴られたり.
大事にしている「ゴムがついていて赤くて空飛ぶ,カッチョいい」飛行機を窓から飛ばされたり.それで庭に拾いにゆこうと寒空の下,外で遊ぶと言って庭にきた二人は,いよいよ共通の関心を見出します.それがサッカー!
女の子なのに,と侮ることなかれ.バン!!!ルイゼットは見事に蹴飛ばし,ニコラは受け損ね,納屋のガラスを割ってしまいます.大きな物音を聞いて飛び出してきたニコラのママンとルイゼットのママンが見たのは,そしらぬ顔でベゴニアの匂いを嗅いでいるルイゼットと割れたガラスとサッカーボール.
お花を見に庭に来て,匂いにうっとりしているおしとやかな女の子の仕業なんて,一体誰が思うでしょうか.もちろん,すべてニコラがやったことにされ,「その夜,僕はデザートヌキだったんだ」.それなのにニコラときたら,「デザートなしだって,そんなのどうでもいいさ.ルイゼットはすごいからね(chouette)」と,ニコラの語彙の中では最高の褒め言葉であるchouetteが使われています.そして「大きくなったら,僕ら結婚するんだ」.どうして,と思いきや,最後の一文がその謎解きをしてくれます.
「ルイゼットのシュートはすごいんだから.」(Elle a un shoot terrible)
この「すごい」(terrible)もニコラが感心したときによく出てくる褒め言葉です.そう,女の子にはまるで興味のないニコラですが,大好きなサッカーが得意なら,女の子でもOKなのでしょう.それで結婚式にはボールを手に・・・と冒頭の妄想に至るわけです.
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