« Les carnets », t.I, pp.73-79.
「通信簿」.題名にあるcarnetという語は例えば「アドレス帳,住所録」(carnet d'adresses)のように,何かを書いて控えておく「手帳」の意味ですが,ここでは毎月学校から持ち帰る「連絡帳」や「通信簿」を示します.今回のお話では特に成績については書かれていませんが(おそらく小学校の低学年だから?),それにしても学校での授業中の様子や,友だちたちとのことを親に知られるのはやっぱり嫌なようです.もちろん,「クラスで一番で先生のお気に入り」のアニャンを除いては.
前回ニコラがもらった帳面には「騒々しく,ぼんやりしたところのある生徒.要努力.」と記されていました.ウードは「落ち着きのない生徒.友だちとケンカする.要努力.」,リュフュスは「授業中にホイッスルを吹いて遊ぼうとする.没収回数,数えきれず.要努力.」と書かれていたそうですから,先生は一人一人をよく観察しています.
それでこれがどうやら毎月渡されるらしいのです.それでみんな,その日が来るとどんより.帰宅するのに足が重い.その日は帳面を渡す「先生間でもなんだか悲しそう」.それでも先生を恨んだりしないのがニコラの良いところです.だって「今月は,ちょっとふざけちゃったし,ジョフロワはインク壺を床にこぼしたり,ジョアシャンにぶっかけたりしちゃいけなかったんだ.ジョアシャンはひっくり返ってふくれっつらしたんだけど,それはウードがジョアシャンの鼻に一発食らわしたからなんだ.でもウードの髪を引っ張ったのはほんとうはリュフュスだったんだけどね」という具合に反省していますから.そりゃ,先生,これだけ騒いでいれば叱らないほうがよっぽど難しい.可哀想な先生・・・.
連絡帳を持ち帰ると,みんな家では一悶着.「クラスでビリ」のクロテールはデザート抜きでテレビも見られない.フランスでは食事の後に必ずデザートがあって,子供はそれを楽しみにしているのです.ですから,デザート抜き!というのは,何より残酷な罰となります.それでクロテールの家では,いつもいつも同じように叱られるので,お父さんお母さんもすっかり慣れたもので,その日になるとお母さんはあらかじめデザートを用意せず,お父さんは他所にテレビを見にゆくんだそうです.なるほど.
今回の絵は何とたった1枚!でも,連絡帳を持って帰るニコラたちの重い足取りを思えば,仕方ないですね.みんな小脇に連絡帳を抱え,これから家で起きる(であろう)場面を想い,暗く沈んでいます.怒鳴られる子,お尻を叩かれる子,お父さんとお母さんに挟まれて説教される子,並んで説教される子,家を追い出される子・・・木陰では友だちたちに見られないよう,何が書いてあるか恐る恐るのぞいている子もいます.あ〜このたくさんの子供たちの憂鬱な心境を考えたら,1枚で10枚分のドラマが想像できてしまいます.
最後はニコラ.ニコラももちろん例外ではありません.連絡帳を渡したら,先月も,先々月もパパに同じことを言われて,ニコラはすっかりパパのセリフをそのまま覚えてしまっています.嗚〜呼,また今月もか,と思いきや,何とパパとママンが領収書の束を見ながら喧嘩をしています.それでニコラが連絡帳を渡すと,パパはよく見もせずにパッとサインをしたので,叱られないですみました.喧嘩に夢中にパパとママンはニコラを部屋に追いやるのですが,それでニコラは泣いてしまいます.「パパとママンが僕のこと好きなら,もっとかまってくれるはず.好きじゃないんだー!」だそうです.帳面を見せて叱られても,叱られなくても,やっぱりニコラは泣くんですね.無視と無関心が一番残酷なのかもしれません.
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