top of page
検索
執筆者の写真Yasushi Noro

『プチ・ニコラ』(06)

« Rex », t. I, pp.48-55.

ニコラが学校帰りに迷い犬と遭遇します.チョコレートの入った菓子パンをあげたり(犬にチョコは確か,禁じ手では?!),先週の木曜日にみた刑事ものの映画にちなんで「レックス」と名付けたりして,家で飼う気満々.でも連れ帰ったら,パパとママンに反対されて・・・と,まぁ,日本でもよくあるパターンの展開です.最初は反対していたパパとママンもお手をされたり,舐められたりして絆され,では家の外で飼おうと小屋を作り始めたところで飼い主登場.保護して食べ物与えて小屋まで作っていたのに,お礼を言われるどころか,パパが誘拐犯扱いされてしまう・・・そんないつものかわいそうなパパ.いつもパパはオチとして使われてしまうのですよね,『プチ・ニコラ』では.

 最初の見開きの絵はパパが小屋を作っているところ.かなり本格的な大工仕事に見えるので,パパの真剣度が伝わります.背後ではママンの大切な花壇のベゴニアを食べているレックスとそれを見ているニコラがいます.


 家の中ではパパ愛用の肘掛け椅子を齧り,庭ではママンのベゴニアを毟るレックス.「パパと僕は納屋に板切れを取りにいき,パパは道具箱を持って出てきた.レックスはその間に,ベゴニアを食べ始めたんだ.でも居間の肘掛け椅子を齧るよりましさ.だって肘掛け椅子よりベゴニアの方が数が多いからね.」ニコラなりに,<希少さ>の価値を踏まえているようです.ベゴニアを大切に育てているママンは卒倒しかけてしまいます.でも,レックスが近づき,ママンが頭を撫でて,今度はレックスがぺろっと手を舐めると,もう,ママンも愛着が湧いてきたようです.

 2枚目の絵はもう少し前.ニコラがレックスを連れ帰り,パパの肘掛け椅子の上に座らせていたのをママンに見咎められる場面です.ママンの指が外を指し,ニコラは顔をママンに向けながら外へと歩き出し,レックスは二人の様子を伺う.齧られて破れた肘掛け椅子が痛々しい.ママンの姿勢と肘掛け椅子の形,ママンの指とニコラの鼻と足,寄りかかるようにして抱かれ尻尾をふるレックス.三者が水平,垂直の線に整然と分けられていてとてもわかりやすくすっきりとした絵です.


3枚目は,最初は犬を飼うことに反対したパパがレックスに絆されて気を変える場面.動物にニコッとされたら,誰だって頬が緩んでしまいますよね.


最後は飼い主が表れて,パパを誘拐犯扱いしてからレックスを連れ帰るシーン.文章ではママンは最後まで家で飼いましょうとは言っていません.どうやらそう言いかけた瞬間に呼び鈴がなって飼い主が現れるので,ママンの気持ちは読者には最後までわからないはずなのすが,この最後の絵ではママンの頬に涙が落ちています.もちろんニコラも泣いています.誘拐犯扱いされたパパは呆然としています.ベゴニアがそこら中に散らばり,小屋は作りかけで,レックスに破られた肘掛け椅子が窓からチラッと見えています.そして別れを惜しむかのようにレックスの口にはベゴニアが.このお話に出てきた要素全てをまとめ,ひと目で理解させる,とても優れた絵だと思います.














閲覧数:2回0件のコメント

Comments


bottom of page