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『「プチ・ニコラ」大全』(68)

  • 執筆者の写真: Yasushi Noro
    Yasushi Noro
  • 9月24日
  • 読了時間: 4分

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.220-239.

『大全』第8章

永遠のヒーロー .........................220

第8章第4節「映画 紙からスクリーンへ」(Cinéma, de la page à l'écrin) p. 236-239.


 さて,本日で第4節もおしまい.ついでに第8章も終わり.ということで,「紙からスクリーンへ」,最後の,ということは最新の「スクリーン」作品の紹介です.


p. 238-239

 すでに本ブログで触れましたが*(『プチ・ニコラ』(222)-1),2022年に『プチ・ニ』史上初めての劇場版・長編アニメが公開されました.本節の締めくくりもその作品に関する説明です.


 但し,本節でも「『プチ・ニコラ』の長編アニメ第1作」が劇場で公開されたとあるのですが,今までの『プチ・ニコラ』に関する私の定義からすると,本作を「『プチ・ニコラ』の長編アニメ」と形容して良いものかどうか迷うところです.本ブログでは一貫して,サンペとゴシニが二人で制作して,ニコラが登場しニコラが語るお話を『プチ・ニコラ』としてきました.ですから,その定義からやや外れると思われるもの,例えば,お話ではなくルポになっているものであるとか,ニコラは登場するけれど実際に存在する雑誌の紹介になっているものとかは,「番外編」と扱っています.今回の劇場版アニメは,サンペとゴシニが制作したわけではないお話に基づいている,ニコラが登場するけれども,語り手でも主人公でもなく,サンペとゴシニの制作秘話を引き出す架空の人物の役割をする,以上の二点から『プチ・ニコラ』の「お話」ではまったくないわけです.但し,映画のクレジットには,以下のように記されています.


「アマンディヌ・フルドン,バンジャマン・マスブル監督作品,ルネ・ゴシニとジャン−ジャック・サンペの作品による」(un film de Amandine Fredon et Benjamin Massoubre d'après l'œuvre de René Goscinny et Jean-Jacques Sempé)(p. 238)


 「〜の作品による」が微妙ですね.二人の創作物にしたがい,ニコラを登場させつつ,二人の生涯と作品について新たなお話を執筆し,それに基づいて翻案(映画化)をしたというのが,長々しいですが「〜の作品による」の意味するところです.


「『プチ・ニコラ』の創作について語り,作者の二人に言葉を与え,創作物と創作者を混ぜ合わせ,二人に対話させる.それにより,二人の作者の子ども時代がどうして,どのように,かの有名な登場人物(ニコラ)の子ども時代に影響を与えたのか理解できるだろう.これこそが,類例のないこの作品の目論見である.本作は,ルネ・ゴシニとジャン−ジャック・サンペを登場させた場面に,二人の作り出した登場人物の出来事を繰り込んでいる.観客には,作者の子ども時代が,ニコラの子ども時代に呼応しているのがわかろう.ショアのトラウマは若きルネ・ゴシニに深い傷を残した.ゴシニには,収容所で生涯を終えた家族もいた.サンペは子ども時代に酷い扱いを受けた.その経験が,彼の経歴と世界を見る目を方向づけている.」(p. 239)


 サンペのイラストがアニメ化されたのは初めて,ゴシニとサンペが作品の中に登場するのも初めて,と初めて尽くしの意欲作であるのは確かです.ゴシニの声はアラン・シャバが,サンペの声はロラン・ラフィットが担当しています.アラン・シャバはフランスのお笑いコメディ界ではもうなくてはならない人,ロラン・ラフィットはもう少し硬派な感じですが,やはり著名な俳優です.ラフィットはコメディ・フランセズの舞台俳優でもあります.音楽は『アーティスト』も担当したリュドヴィク・ブルス(Ludovic Bource),フランス人にはお笑いコメディとして大ヒットした『OSS 117』シリーズの作曲家として知られているかもしれません.脚本はミシェル・フェスレール,バンジャマン・マスブルと,アンヌ・ゴシニが共同で執筆しています.


「アンヌ・ゴシニは初めて父の跡を継いで執筆し,父親の書いた文章のユーモアと詩情を復元している.」(Ibid.)


 つまり,どちらかというと,アンヌさんの作品ということです.本作は2022年5月にはカンヌ映画祭に出品され,6月のアヌシの映画祭では賞も受賞しています.

 ちなみに本作は,実写版第2作目(劇場未公開,『プチ・ニコラ 最強の夏休み』の題名でWOWOWでは放映されているそうです),第3作目を飛ばして,『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』の題名で,日本でも公開されました.



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