『「プチ・ニコラ」大全』(67)
- Yasushi Noro
- 9月20日
- 読了時間: 3分
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.220-239.
『大全』第8章
永遠のヒーロー .........................220
第8章第4節「映画 紙からスクリーンへ」(Cinéma, de la page à l'écrin) p. 236-239.
本節は2つに分かれています.2009年に公開された初めての劇場・実写版『プチ・ニコラ』から2022年に制作されたテレビ版3Dアニメまでの紹介,そして2022年に制作された劇場・アニメの紹介,以上の2つです.まずは劇場・実写版からみてゆきましょう.
p. 236-237
アンヌ・ゴシニとサンペは以前から,映画への本案の話がきても断っていたそうです.アンヌさんは映画化に反対していたわけではなく,「観客が書物のページをめくって読んでいるような印象」(p. 236)を得られるような映画にしたかったとのことです.サンペも「脚本作家がゴシニの文学的な才能を翻訳し切れる」(Ibid.)ならば,と考えていました.
この二人を納得させられるかどうかが映画化の鍵,だったようです.う〜ん,厳しいですねぇ.やりたい人がやる,やれる人がやる,でもって失敗作なら仕方ない,という具合にはいかないのですね.それでも納得させる人が現れました.実写版第1作を監督したロラン・チラールと,共同で脚本を担当したグレゴワル・ヴィニュロンです.二人は『ジョアキムの憂うつ』の中の1話を出発点として,オリジナルのストーリーを作りました.あるお話1話をそのまま映画化するのではなく,弟ができたら自分は捨てられてしまう・・・という不安のお話を核として,幾つものお話を盛り込んだストーリーにしたのでした.映画用に書かれた独自な脚本でも,『プチ・ニコラ』のファンならいくつかのお話からとってきた,いわば抜粋を認めることができるのです.この目論見は大成功しました.
映画というのはヒットすると,続編が制作されたり,シリーズ化されたりします.『スター・ウォーズ』,『エイリアン』,『バック・トゥ・ザ・フューチャー』,などなど.というわけで,2014年,『プチ・ニコラ』劇場・実写版第2作『プチ・ニコラの夏休み』が,2021年には『プチ・ニコラの財宝』が制作されました.本ブログのbibliographieにまとめておきましたのでご一瞥を.
第2作目は題名の示す通り,やはり『プチ・ニ』のお話を基にしているのですが,第3作目は完全オリジナルのストーリー.パパの昇進に合わせて家族で引っ越すことになったニコラが,友だちとお別れしなくてすむように,財宝を探すというもの.生まれてくる弟のせいで追い出されると感じたニコラが,友だちと色々企んで,弟が生まれてきたら何とかしてしまおうとする第1作目をどこか彷彿させるような展開でしょうか.う〜ん・・・.
いずれにせよ,かつての,1950年代末の理想化された,もはや存在しないフランスを舞台設定としているそうです.さらにロラン・チラール監督は,「ゴシニという<音楽>と,サンペという<香水>を再現しなければならなかった」(p. 236)とのことです.そのチラール監督,ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』から影響を受けたそうです.
カド・メラド,ヴァレリ・ルメルシエなどなど,出演した俳優陣も豪華.いずれにせよ,百聞は一見にしかず.第1作目以外は日本では未公開ですが,どうぞ,時間とお金の余裕があれば,DVDを購入してみてみてください.さもなければ,岡山大学の私の研究室にきてください.一緒に鑑賞しましょう.
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あとはアニメ版の紹介があります.2009年には2シーズン,合計104話が,2022年には1シーズン52話が制作され,フランスのテレビ放送局M6で放映されました.(本書では「26話」とされていますが,執筆後にさらに制作されたのでしょうね.)↓を参照してください.

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