『「プチ・ニコラ」大全』(66)
- Yasushi Noro
- 2 時間前
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Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.220-239.
『大全』第8章
永遠のヒーロー .........................220
第8章第3節「『君に紹介したい人がいるんだ・・・』」(« Je veux te présenter quelqu'un... ») p. 230-235.
第3節「『君に紹介したい人がいるんだ・・・』」.サンペがゴシニの娘のアンヌさんに言った言葉です.誰を紹介したいんだろう・・・.
アンヌさんが始めたIMAV社は,『プチ・ニコラ』の創作50周年を記念して,『未刊行集 第3巻』を企画しました.前2巻は,1959年から1964年までに一度は新聞に掲載されていながら,単行本に未収録の作品をまとめたものでした.ところが第3巻はもっと特別です.
出版の経緯については,本ブログ(「『プチ・ニコラ』(212)の手前」)で紹介していますし,本節と内容がほぼ丸かぶりなので(だって,本節はアンヌさんの書いた『第3巻』の序文の引用と説明からなるので),ごく簡単にまとめるだけにしておきます.
「『プチ・ニコラ』(212)の手前」はこちら↓
収録された全10話のうち,第1話は1959年3月29日に『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』紙に掲載された,『プチ・ニコラ』の記念すべき最初の話です.ですから,発表当時のサンペのイラストもあり,そのまま収録されています.ところが,残り9話は同じ1959年から1964年の間に書かれているのに,『シュッド・・・』にも,その他の雑誌にも掲載されたことのない,正真正銘未発表のお話なのです.几帳面なゴシニのこと,タイプ原稿がきちんと保存されていて,それが発掘されたというわけです.何らかの理由で,いわばボツになったお話ということでしょうが(もちろん,不出来だったからかどうかなどの理由はまったくわかりません),むしろお蔵入りになった作品というべきでしょうか,「サンペは当時,まったく読んだことがなかったし,その存在さえ知らなかった.」(p. 230).
この世紀の大発見を受けて,サンペは2008年春に,70枚のアクリル画を制作しました.こうして,かつてのゴシニの文と今のサンペのイラストで,『プチ・ニコラ』が復活したのです.これはすごいことです.大事件です.
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「あの少年は1970年代のまま,髪はボサボサ,相変わらず半ズボンに上着を着て,ネクタイをしている.われわれの子ども時代を象徴するあの少年の新しい冒険を描くに際して,サンペは赤を選んだ.ニコラのセーターが赤,ニコラが大喜びする風船も赤.
公園のベンチとデッキ付きバス*には緑が置かれて,明るくなっている.色彩のおかげで,あの子ども時代,われわれの子ども時代と混ざり合ったニコラの子ども時代の幸福感が蘇ってくる.」(p. 230)
*『「プチ・ニコラ」大全』(3)

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本節の残り部分では,アンヌさんがサンペにイラストをつけてくれるようお願いに行った時の会話が紹介されています.これについては↑の「『プチ・ニコラ』(212)の手前」で触れていますので省略します.
「サンペの描いてくれたデッサンからは,優しさが迸り出ていた.その優しさに私の目は輝いた(ええ,ジャン-ジャック,何か飲み物をいただくわ).イライラしているのか疲れているのか,やんちゃで負けず嫌いのニコラが,お話を面白がっている.知りもしなかったくせに.」(p. 230)

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