『「プチ・ニコラ」大全』(60)
- Yasushi Noro
- 2 時間前
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Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.179-219.
『大全』第7章
『プチ・ニコラ』,フランス文学の古典になる .........................179
第7章第4節「栄光へまっしぐら」(En route pour la gloire) p. 201-205
p. 201
テレビに出演したり,雑誌の表紙を飾ったり.1960年代前半,二人の作者の勢いは止まるところを知らないといったところでしょうか.『プチ・ニコラ』の単行本が刊行され始めた頃に二人の知名度はウナギ登り.デュオだけでなく,それぞれの活動でも評価か売上か,はたまたその両方がぐんぐん上がってゆきます.
「1961年に『アステリクス』の最初のアルバムが発売される.以降は年に一冊のペースで刊行され,ベストセラーになる.『リュッキー・リュック』の成功がそれにつけ加わる.おかげでゴシニは世界で最も読者の多い作家となった.
サンペの方は,独自の道を歩み始め,ユーモア・デッサンに集中したいと考え,夢に見たアルバム形式で刊行する.『プチ・ニコラ』はサンペがフランスで刊行した最初の本であったが,そのおかげでサンペはアルバムを刊行してくれる編集者と知り合う.ドノエルは1962年,『単純なものなど何もない』(Rien n'est simple)を出版する.このアルバムを皮切りに以降長いシリーズが刊行されることになる.とはいえ,サンペのキャリア中『プチ・ニコラ』が最大のヒットであることには変わらない.」(p. 201)
前回(59)で書いたことと対して変わらないですが,それだけ,この時期二人の制作意欲が盛んで,幸運にもその結果も高い評価(と売上)を得ていたということでしょう.

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p. 202-203
ロゴが似ているので独立した「節」のようにも見えますが,とりあえずp. 202-203の「アルフォンス−アレ賞」は,この第4節に入れておきます.
アルフォンス−アレ(Alphonse Allais, 1854-1905)はフランスの最初のユーモア作家と言われている人物です.彼の名にちなんだ賞が1952年に創設され,今に至っています.今世紀に入ってから2つの団体に分かれてしまったようですが,ともかくも,毎年,ユーモア作家や作品を対象にしているようです.
サンペとゴシニは1964年に『プチ・ニコラと仲間たち』(第4巻)でこの賞を受賞しています.その年のマルディグラ(謝肉祭の最終日,移動祝日です)の日に,パリの有名な老舗レストラン(現存)であるプロコプで授賞式が行われました.さすがユーモアを旨とする賞.シャレが効いています.そして授賞式の二人の写真がこれ↓.

やっぱりシャレが効いています.こうでなきゃ.
さらに,p. 203には,新聞ですかね,1964年2月12日付けのLa Nouvelle République du Centre-Ouestに掲載された受賞を伝える記事が転載されています.見出しは「『プチ・ニコラ』の生みの親である劣等生のサンペとゴシニが,アルフォンス−アレ賞でグルノブルの高校の元校長先生を破る!」.やっぱり面白いなぁ.このくらいユーモアがあっていいですよね.僕の理解している意味で,フランス的ユーモアがどのレベルでも伺える出来事です.
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p. 204
栄光,栄冠ときて,この節最後は結婚.小見出しは「成功と愛」.何のことはない,ちょうどこの頃,ゴシニが結婚して,娘のアンヌが生まれたというお話です.
そうなのですが,とりあえずルネとジルベルトの出会いの場面を見ておきましょう.二人はクルージング(船旅)で知り合ったそうです.
「ルネは私に『プチ・ニコラと仲間たち』をくれたの.どんなことをしているか大体わかるからって.私は読んですぐ,『あらこの人,天才だわ』って思ったの.ニースから戻った私は友だちに,天才と会ったのよ,『プチ・ニコラ』とか書いているのよ.他にもいろいろ書いているんだけど,もう覚えてないわ,って言ったの.そうしたら友だちが,あっそう,その人の名前は?って聞くから,ルネ・ゴシニって教えたの.その時友だちが大きな声を出したんで,私ようやく理解したんです.いまさらになって天才を見出した!なんて,私には発見の才がなかったのね.」(p. 204)
純粋に『プチ・ニコラ』が面白かったと評価したら,あらあら,世間のみんなはすでに評価していた・・・. 名声に惹かれたわけでもないということ.僕はいい話だと思います.そして二人は1967年4月26日に結婚,1968年5月にはアンヌが生まれました.
このページには結婚式の写真と可愛らしいアンヌの写真も掲載されていますが,やはり何と言っても,このイラストが良いような.

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