『「プチ・ニコラ」大全』(58)
- Yasushi Noro
- 22 時間前
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Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.179-219.
『大全』第7章
『プチ・ニコラ』,フランス文学の古典になる .........................179
第7章第3節「スクリーン上のプチ・ニコラ」(p. 192-195)
p. 193-195
『プチ・ニコラ』の映像化はだいぶ難航したようですが,それでもようやく,1964年にテレビ・シリーズの1話として実現します.題名は「世界の子ども」(Tous les enfants du monde). 白黒で23分,子どもの普遍性をテーマに様々な国の映像作家がテレビ用に制作した4話のスケッチの一編です.監督はアンドレ・ミシェル.『プチ・ニコラ』は差し詰め,フランスの子ども編といった位置付けのようです.ちなみにその他の短編はそれぞれ,エレン・クリモフ(ソビエト),新藤兼人(あるいは窪川建造)(日本),モリス・エンジェル(アメリカ)が制作しています.新藤兼人のフィルモグラフィーからはどうも漏れているようで,あまり情報がありません.フランスの国立視聴覚研究所(INA)あたりで探せば見つかるのかなぁ.本サイトの「書誌編」でも紹介しましたが,日本未放映の作品で,フランスで販売されたロラン・チラール監督による『プチ・ニコラ』(劇場版第1作)のフランス版DVDに収録されているので,とりあえずは見ることができます.
プロデューサーはフレッド・オラン(Fred Orain, 1909-1999).ジャック・タチ監督の『のんき大将脱線の巻』(Jour de fête, 1949),『ぼくの伯父さんの休暇』(Les Vacances de Monsieur Hulot, 1953),『ぼくの伯父さん』(Mon oncle, 1958)の他,マルセル・カルネ監督の『天井桟敷の人々』(Les enfants du paradis, 1945)などのプロデュースで知られた人です.
『大全』の著者によると,アルロ(Arlaud)とヴィテ(Vittet)という二人が脚本を担当したようで,ゴシニとサンペは直接には映画制作に携わらなかったようです.
主演は・・・もちろんニコラということになりますが,その他の配役も著名な俳優が演じている模様.お母さん役(何と,カトリヌという名がついている!)のベルナデット・ラフォンは,後に劇場版第2作Les Vacances du Petit Nicolasでメメ役を演じています.そしてやはり驚くことに,パパにもガストンという名がつけられていました.ニコラを演じたのはロラン・ドゥモンジョで,彼は数年後にトム・ソーヤー役も演じたそうです.
ちなみに映像化されたのは本ブログでも第1話として取り上げた,つまり文庫版第1話となりますが,「これから大切にする想い出」(« Un souvenir qu'on va chérir »).でも,お話では集合写真の苦労が語られますが,映像のほうは別物.但し,『大全』の著者は,「『プチ・ニコラ』のきまりごとがすべて忠実に映像化されている」,と書いていますから,お話の内容よりも,「きまりごと」(tous les codes du Petit Nicolas)に重心を置いた評価なのでしょう.ではその「きまりごと」とは・・・
−学校の校庭(パリの十六区にあるジェルソン中学校で撮影された)
−まさに60年代風デザインの小粋なアパルトマン
−パパの肘掛け椅子
−ママンのエプロン
−キレイな担任の先生のタイトスカート
−子どもの短い半ズボン
これらのおかげで,「過ぎ去ってしまった「栄光の30年」の甘美な魅力とドワノが写したパリの写真の雰囲気」が映像に添えられている,とのことです.
ただ,個人的には,これら場所や小道具のきまりごとよりも,ニコラによる1人称の語りや,キャラを生かした設定などに,『プチ・ニコラ』らしさを出してくれたらもっとよかったのになぁ,と思うのですが.

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