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『「プチ・ニコラ」大全』(55)

  • 執筆者の写真: Yasushi Noro
    Yasushi Noro
  • 16 時間前
  • 読了時間: 5分

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.179-219.

『大全』第7章

『プチ・ニコラ』,フランス文学の古典になる .........................179

第7章第2節「テレビに出たよ!」(p. 188-191)


第2節では,サンペとゴシニがテレビ出演した時のインタビューを読むことができます.2人は1961年にテレビに初めて出演しました.記者やテレビの制作者として有名なピエール・デグロプ(Pierre Desgraupes, 1918-1993)は,フランスの公共放送の会社(テレビ局)RTF(Radiodiffusion-Télévision française)で「万人に読書を!」(Lectures pour tous)という文学番組で司会をしており,『プチ・ニコラの休み時間』(書籍版第3巻)の出版時に2人を招待したのです.

 質問−回答は多岐に渡るので,『プチ・ニ』のお話に関わる部分のみ,抜粋しながら紹介するとしましょう.


P.D.(インタビュアー):『プチ・ニコラの休み時間』は画集ではなく,本物の本ですね.デッサンの担当がサンペで,文章がゴシニによる書物です.サンペさん,あなたがニコラに顔,姿形,背丈,年齢をあてがったのですよね?ニコラは小さな少年ですが,彼は登場人物と言ってよいのでしょうか.

J.-J. S.(サンペ):絵に書かれた瞬間から登場人物なのでは...


P.D.(インタビュアー):そりゃそうなのですが,例えばベカシヌ*のような意味での登場人物でしょうか?

*Bécassine :ジャクリヌ・リヴィエール(文)とエミル−ジョゼフ−ポルフィール・パンション(絵)によるフランスのマンガ(BD)の登場人物.1905年から週刊誌『La Semaine de Suzette』に連載された.日本人がサザエさんにある種のイメージを抱いているように,フランス人は主人公のベカシヌを,田舎の女中,少しおバカ,単純素朴と形容するようです.世代を超えて愛されているキャラで,近年は映画にもなっています.


J.-J. S.(サンペ):ニコラは原型なのですが,実際にはとりわけ,子どもの集団なのです.ニコラの友だちたちもそうですが,ニコラは実際には私が一般的に,あるいは子どもとはこんなふうだろうと想像して描くどの子どもにも似ているのです.


P.D.(インタビュアー):あなたがたのどちらが最初に始めたのですか?ゴシニ,あなたですか?

R. G.(ゴシニ):サンペがユーモア・デッサンを描いていたんですが,その中にサンペがニコラと名付けた男の子がいたんです.その後,われわれ2人が一緒に形を変えて取り上げたんですが,それは一旦やめて,最終的に現在の形にしたのです.だいたい三年くらいまえですかね.


P.D.(インタビュアー):子どもたちのなかで生きる一人の子どもで,大人たちの世界で生きる子どもではないんですよね.

J.-J. S.(サンペ):いつも授業にいる瞬間から,その子は子どもとして生きるんです.その子にいるのは同じ年の仲間だけなのですが,それでも両親と暮らす子どもですからね.


P.D.(インタビュアー):もちろんそうですよね.あなたにしてみれば,大人の世界を皮肉って描くのが目的ではないんですかね?

J.-J. S.(サンペ):いや,ない.まったくないです.


P.D.(インタビュアー):ニコラは子ども言葉を使わないですよね?

J.-J. S.(サンペ):使わないですね.


P.D.(インタビュアー):ニコラがお話を語っているのですか?

R. G.(ゴシニ):ニコラがお話を語るんです.子どもならこう語るだろうなって調子で,ニコラが語るんです.子ども言葉を使わずにね.


P.D.(インタビュアー):「ニコラは,子どもの集団」と言われていますが,実際,子どもがたくさん登場します.互いに少し似ていて(そもそもデッサンが少し小さいので,私にはよく見えないのですが),みんながみんな,顔つきが似ています.

J.-J. S.(サンペ):そうですね.子どもは集団でいると,1人ずつの区別が結構難しいんです.鼻が大きければ別ですが(デカ鼻の子どもは滅多にいませんが).または時に赤毛ならね(でも,白黒のデッサンですからねぇ).子どもたちが似通っているというのは,僕らが子どもの集団の生活だけを制作しようとしたからなんです.一生涯,年中吊りズボンを履いている登場人物を作ろうとしていないのです.


P.D.(インタビュアー):つまり子どもたちは登場人物とは違う.それでも,登場する子どもたち(あるいはニコラ)は,それでも明確なキャラ(特徴)を持っていますよね.例えば,子どもたちはよくサッカーをしています.いつでも,何か蹴るものを見つけて.

J.-J. S.(サンペ):そうですね,だって子どもならだれでもサッカーをするでしょう?何か蹴るし,それに時を気にせずね.


P.D.(インタビュアー):子どもの本質的なキャラというわけですか.つまり,ニコラの?

J.-J. S.(サンペ):そうですね.


P.D.(インタビュアー):あなたに言わせれば,サッカーボールが確かな判定基準となると?

J.-J. S.(サンペ):そうですね,ボールを蹴ることができるようになれば,すでにその瞬間から興味が湧いてくるのです.


あぁ,抜粋して・・・と思っていたのに,お話だけでなく,創造に関わる部分も面白いなぁと思って訳しているうちに,結局,p. 189のやり取り全文を訳してしまいました.後二つ,ゴシニとサンペの発言が太字で挿入されているので,それも紹介しておきます.



「プチ・ニコラは普通の子どもなのです.食いしん坊で,ケンカ好きで,サッカーをして,面白いことが大好き.つまり,とってもかわいらしい子どもで,恐るべき子供などでは全然ないのです.」(ゴシニ)(p. 188,出典不明)


「ボールを蹴ることができるようになれば,すでにその瞬間から興味が湧いてくるのです.」(サンペ)(p. 189,インタビューより)

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