Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, pp.130-p.131.
「クラスメートの出現」(la naissance des copains)
前回(14)では,文章版『プチ・ニコラ』の第1話の掲載について書きました.今回紹介するページでは,第2話について,それから,ニコラのクラスメートの登場についての説明がありました.第1話から第2話までは大体2ヶ月半くらいの間が開きました.ここからが,文字通りの連載となり,週に一度,誌上にニコラが登場するわけです.
まずは『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』誌の1959年6月7日号に掲載された第2話を見てみましょう(p.131)
第1話は紙面の一面全体に掲載されていましたが,今回からはほぼ半分くらいでしょうか.前回は題名が「サンペの復活祭」で,イラストが色付きで,それも複数入り,レイアウトからしても,サンペ中心の企画かな?と思わせるものでしたが,今回からは白黒で文とイラストがちょうど半分ずつ.それに題名が「サンペとゴシニ作 ニコラ」となっていますので,いよいよ二人の競作であることが明らかです.掲載されたのは,後に『未刊行集 第1巻』に収録される際に「映画の上映会」(« la Séance de cinéma », HIPN, vol.1, pp.408-413)と名付けられたお話です(139).
著者によると,『プチ・ニコラ』の題名がついたのは,『ピロット』誌(Pilote)に掲載され始めた時からだそうです.紙幅は半分となった結果,イラストよりも,ゴシニの文章のほうがお話の中心となったと言います.「文章を照らす」(サンペ)スペースが,縮小されたわけです.でも,サンペはそんなこと,一向に気にしていません.
「僕はね,ほんのちょっとしかイラストを描かなかったんだよ.だって,イラストのほうが印刷するのにぐんと費用がかかるし,それに『シュッド・ウェスト』ではスペースにも余裕がなかったんだ.それで中くらいのと小さいのとを一つずつ,書いていたんだ*.」(p.130)
*Sempé, Enfances, entretien avec Marc Lecarpentier, éd.Denoël/Martine Gossieaux, 2011に引用された発言.
著者は,この第2話の主人公はジョフロワだと言います.それにアルセストもはや,本話から登場します.
「あの,変な名前の人物が登場する『プチ・ニコラ』の世界は,一から十まですべてゴシニが作り上げたんだ.」(サンペ,p.130)
連載が進むにつれ,アニャンやウード(第3話, « Le Musée de peintures »(29)),クロテール(« Je fais des courses », (195))などが次々登場してゆきます.なんとニコラが登場したのは1959年9月に掲載された第25話目だったそうです(« Un souvenir qu'on va chérir », (1)).とはいえ,ニコラがすべてのお話の語り手ですから,見えてはいなくても,ずっと存在していたのですが.学校の建物が描かれたのも,その回が初めてだったそうです.次第に,学校,授業の教室,休み時間の校庭などが,表舞台に現れてきます.そして,校長先生,担任の先生,そして『プチ・ニコラ』では絶対欠かせない生徒監の「ブイヨンさん」ことデュボンさんも.
確かにこのようにして,少しずつ,だんだんと,次第次第に,私たちが今現在,『プチ・ニコラ』とはこういうもの,と考えているイメージが形成されてゆくのですね.それはおそらく,限られた地域の,限られた読者の週1回の楽しみであった「ニコラ」の話が,全国誌に掲載され始め,やがて5冊の書籍にまとめられ,その書籍を元に作られ,長らく保たれた一つの記憶の形だったといえるでしょう.ちょっと小賢しい見方かもしれませんが,2004年に『未刊行集』が発売され始め,2022年にはそれまでの書籍に収録されたお話のすべてが2分冊で読めるようになったとき,それまでのイメージが徐々に変更されてきたはずですし,またそうならないはずもないのです.今後,物好きな人が,2分冊に収録されたお話をすべて執筆年代順に近いと考えられる,掲載年代順に並べ変えるようなことがあれば,その時にはまた新たな『プチ・ニコラ』像が現れるかもしれません.
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